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●美術館の名作椅子#21●国立歴史民俗博物館
国立歴史民俗博物館
設計:芦原建築設計事務所
開館:1981年
※正確には美術館ではないのだが、以前二回に渡って美術展の記事(2024#72,#73)として取り上げたのでこちらでも取り上げる。
・Eames Tandem Sling Seating
![](https://assets.st-note.com/img/1728520639-AbnCqNRcmWG1ZTefQSjVrX62.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1728520584-gEdLQZ219RAiToGzthK8CsB4.jpg?width=1200)
デザイナー:チャールズ&レイ・イームズ
発表:1962年
メーカー:Herman Miller
価格:¥1,136,000(4連・合皮仕様)(2025年現在)
シカゴ・オヘア空港とワシントンD.C.ダレス空港に初めて登場し、その後世界中の空港に設置された歴史的名作椅子。
その独特のフォルムとアルミニウムの質感がまさにイームズのミッドセンチュリー黄金期を彷彿とさせる。
デザイン、制作および設置を1年間で仕上げるという契約だったため、イームズアルミナムグループチェアのために開発したスリングシステムをベースにデザインしたそうだ。
現代の空港では近代的な建築に合わせてもっと軽やかなデザインの椅子が設置されることも多くなってきたが、たまに昔ながらのこの椅子を見るとまだ世界が広く遠かった時代の空港が頭に浮かび、なんだか勝手にわくわくしてしまう。
ただ、仰々しすぎてこのロビーには合っていないような気もする。
・Side Chair
![](https://assets.st-note.com/img/1728519974-Ic7p2VlhgkD8wYUxRPBE9AZX.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1728519765-AzQMDhGf3vu7LV8HNB4EUtag.jpg?width=1200)
デザイナー:ハリー・ベルトイア
発表:1952年
メーカー:Knoll
価格:¥194,700(2025年現在)
東京国立近代美術館の「眺めのよい部屋」にも多数置かれる名作椅子。
ほぼ同時期のイームズにもワイヤーチェアがあるが、それとはまた違う雰囲気。
床のタイルの色合いと共に醸し出すミッドセンチュリー感がこの場の雰囲気に合っている。
個人的には室内よりもこのような屋根付き室外という環境にこそ相応しい椅子のような気がする。
・エレファントスツール
![](https://assets.st-note.com/img/1728521501-gfqTAwNrJDa01z5HL6QUYuMG.jpg?width=1200)
デザイナー:柳 宗理
発表:1954年
メーカー:vitra
価格:¥17,600(2025年現在)
柳宗理がデザインしたスツールはバタフライスツールが特に有名だが、エレファントスツールも忘れてはならない。
発表年はこちらの方が早い。
当時はコトブキという会社が制作しており、素材がイームズのシェルチェア同様FRPを用いていたが現在は素材をポリプロピレンに変えてvitraが引き継いでいる。
オリジナルの当時物はプレミアが付いている。
・その他
・RESCUE BENCH
![](https://assets.st-note.com/img/1737389587-Nqusf96Jz2BgwLcWn1A7ZKv0.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1737389598-uwkiehPyjdSQMUrZNvInAcG2.jpg?width=1200)
・Spline Chair
![](https://assets.st-note.com/img/1737389714-YrnOvUgJqlNHEwp19BxLuMK2.jpg?width=1200)
・会議椅子
![](https://assets.st-note.com/img/1737389764-fMWSqjmFzioB5edEZT0aD2bJ.jpg?width=1200)
・KOKUYO ベンチ
![](https://assets.st-note.com/img/1737389653-F80ms7dPCuAE4RYZIeXB2QhJ.jpg?width=1200)
・イトーキ 応接用チェア
![](https://assets.st-note.com/img/1737389625-KP6rxcTs9mlW8QYD7vOaCpio.jpg?width=1200)
・KOKUYO ベンチ
![](https://assets.st-note.com/img/1737421214-T1eIf8ZwdKV6J3MqR7vpNWDl.jpg?width=1200)
・謎ベンチ
![](https://assets.st-note.com/img/1737422146-iGQKCBNj05p9DUy1cSM3W8w7.jpg?width=1200)
・まとめ
国立歴史民俗博物館はミュージアムとしては本当に素晴らしい内容で、建物も規模が大きく重厚で美しい。
だが椅子の選定や運用には疑問符が付いた。
ロビーに多数展開されるEames Tandem Sling Seatingは、単体では歴史的名作椅子だと思うがこの場には合っていないように感じたし、なぜか唐突に横に応接用の椅子が置かれていたりするためチグハグな印象が強い。
ハリー・ベルトイアのSide Chairは適した場所に置かれていたように思うが、それは元々椅子が持つ圧倒的なフォルムの美しさに依るところが大きく、床や座面に目を凝らすと汚れが目立ったり埃をかぶっていたりとメンテナンスが行き届いていない。
さらに、Side Chairが作り出している美しくすっきりとした空間の背後にはガラス窓を挟んで古びた業務用のベンチが連なって置かれているため、せっかくの景観をぶち壊しにしているようにも見えた。
子供向け体験教室に置かれた柳宗理のエレファントスツールは用途的にも場の雰囲気的にも合っていたように思うが、その他の展示室内に置かれる椅子は安価な業務用の椅子が漠然と並んでいた。
もちろん一概に業務用椅子を否定する訳ではない。
中にはグッドデザイン賞を受賞しているモデルもあったし、それらの椅子は適した用途と適した場で用いることで本来の輝きを発するはずだ。
現在展示室では大規模なリニューアルが進んでいる。
既存の充実した展示をアップデートしてリニューアルされた新たな展示はそれこそ感動するくらい素晴らしい内容になっている。
これを機に思い切って椅子や什器もリニューアルし、適切な選定・運用を行えば展示内容や建物のポテンシャルをさらに高め輝かせてくれるはずだ。
名作椅子にはそのような力があると信じている。
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