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【アジア横断&中東縦断の旅 2004】 第23話 ヨルダン

2005年1月18日 旅立ちから、現在 381 日目

イスラエルから再びヨルダンに戻った。

イスラエル入国の際は厳しい入国審査に丸一日を費やしたが、出国は拍子抜けするほど簡単に済んだ。
そしてヨルダン側の国境ではパスポートを提示しただけなのにノーチェックで即再入国できた。

今までも日本パスポート所持者(=日本人)であるということで、多くの国でビザが不要になったり、出入国税が免除になったり、通常では入域できない場所への許可が下りたりした。
日本パスポートは世界的にも信頼度がずば抜けて高く、世界中のほぼ全ての国に入国することができるため世界最強のパスポートとも言われており、この旅の中でも多くの場面で水戸黄門の印籠のごとく絶大な効力を発揮してきた。
それはひとえに日本政府の外交努力の成果とも言えるのかもしれないが(時にバラマキ外交、弱腰外交とも批判されるが)、庶民レベルにおいても、謙虚さや誠実さ、人当たりの良さなどといった、今まで日本人が培ってきた資質そのものが、現地の人々から高い評価を受けて歓迎されているようにも思えた。
私も一人の日本人として観光大使になったつもりで、その名に恥じぬよう謙虚に友好的に旅を続けようと思った。

アンマンに戻り、イスラエルに行く前に荷物を預けていた宿に到着してようやく肩の荷が下りた気がした。
それほどイスラエルは緊張感に包まれた場所だった。

再びアンマンの宿
アンマンの古着屋街


アンマンで数日のんびりした後、再度イスラエルとの国境へ向かうバスに乗った。
ただし今回はイスラエルへ向かうためではなく、国境沿いにある死海を楽しむためにこのバスに乗ったので、前回のような緊張感は無かった。

死海は海抜がマイナス418mと世界で最も低い場所に位置するため、気圧の関係で一年中気温が高い。
死海が近づくにつれ気温はぐんぐんと上昇し、到着する頃には季節は冬なのにTシャツ一枚でも暑いほどだった。
この湖は塩分濃度が極めて高いので浮力が大きく、人間が浮き輪無しでも沈まないというのは有名な話だが、実際に湖に浮かんでみると、それは確かに今まで味わったことの無い不思議な感覚だった。
湖の畔には天然の温泉も湧いていたので、アラブ人に混じって私もゆったりと足を伸ばした。
この日は久々にリラックスした気持ちで純粋に旅を楽しんだいい一日になった。

お約束の新聞を読みながら浮かぶやつ。対岸はイスラエル
湖の畔に湧く温泉でアラブ人と混浴


その後いくつかの町を経由し、映画「インディ・ジョーンズ」にも登場することで有名なペトラ遺跡を訪れた。

岩の谷間を抜けペトラ遺跡に向かう
インディジョーンズのロケ地にもなった遺跡エル・ハズネ


さらに南下を続けヨルダン最南端の港町アカバに到着した。
この港から海を渡った次の国エジプトは、いよいよこの旅の最終目的地だ。

旧約聖書の「出エジプト記」の中で預言者モーセがエジプトを脱出するために割ったとされる海を、船に乗って逆にエジプトへ向かうというルートは、旅の最後の国への入国に相応しいドラマチックな道のりのように思えて一人胸が高鳴った。


いよいよヨルダン出国の日の朝。
私はいつもより早起きをして港に向かった。

港には巨大な国旗がはためいていた


出港までまだ時間があったが、持っていた本も読み終えてしまったので、ぼんやりと目の前に広がる海を眺めていた。

どこまでも青い海だった。

紅海へと続く海


この海の先には周辺諸国の国境線であるとともに世界屈指のスキューバダイビングスポットでもある紅海がある。

50mを越える透明度、極彩色の珊瑚礁、古い沈没船、独自の進化を遂げた固有種など、紅海は世界中のダイバーを虜にする魅力に溢れていた。
タイの島以来数カ月ぶりの、エジプトでのスキューバダイビングが楽しみだった。

まだ学生だった頃、初めてタンクを背負って潜った海の中にはそれまで見たこともなかった美しい宇宙が広がっていた。
そして誰もが幼い頃に夢見る「空を飛ぶ」という感覚が、無重力の海の中では実現できた。
「Welcome to the underwater world !」というインストラクターからの言葉と、地球にはこんな世界があったのかというあの時の感動は今でも鮮明に覚えている。


余談だが、その後も細々とスキルを重ねていくうちに、この旅から数年後、趣味が高じてついにDIVEMASTERというプロライセンスまで取得してしまうほどに、私はすっかり海に魅了されてしまった。

各ライセンス


汽笛が鳴り、ようやく船がゆっくりと港を離れた。
新しい海を目の前にし、これでまたひとつ世界が広がる。

そう思うと心の底からわくわくした。

出港 エジプトへ


続く ↓

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