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【美術展2025#10】真正の画工 創造と革新の道 Digital×北斎【急章】その2@NTTインターコミュニケーションセンター(ICC)

会期:2024年11月9日(土)〜2025年3月30日(日)

九十歳よりは画風を改め百才の後にいたりては此道を改革せんことをのみねがふ長寿くんしわが言のたかわさるをしりたまふべし
(九十歳より画風を改め、百歳を過ぎたらこの道を改革することを願っている。長寿の君子よ、私の言葉が間違っていないことを知ってほしい)
『画本彩色通』初編の跋文、弘化5年(1848)

「天てん我われ をして五年の命を保たしめは、真正の画工となるを得へし」
(天があと5年の命を与えてくれたなら、真の画工になれたのに)
北斎最期の言葉 飯島虚心『葛飾北斎伝』蓬枢閣、明治26年(1893)

ここで北斎は「絵師」ではなく「画工」という言葉を用いています。江戸時代において、幕藩のお抱えの「絵師」と民間の「画工」は明確に区別されていました。北斎が自らの生涯をかけ目標とする姿を「絵師」ではなくあえて「画工」と述べたことには、生涯を通じて腕一本で己の道を切り開き、自由に描き、創ることを目指した強い意志が込められているのではないでしょうか。

本展覧会では、北斎の画業の生涯を振り返り、晩年にたどり着いた、超越した創造と革新の道を、小布施に遺した4枚の祭屋台天井絵、そして北斎が生涯で唯一創作に関わった立体作品と言われる祭屋台装飾を中心にご紹介いたします。真正の画工として北斎が生み出そうとしていた世界を、原画を細部まで忠実に再現した高精細複製画や3D デジタルアプリケーションなどを通じてぜひご体感ください。

ICC


ICC20周年記念事業の一環として、2019年から始まった体験型展示イベント「Digital×北斎」の第5弾。
最先端デジタル技術を駆使したレプリカや映像などが展示されている。

今まで色々な場所で北斎の本物を見てきているし、正直この企画のためだけにわざわざ初台までは訪れなかっただろうが、その日は東京オペラシティアートギャラリーの「今津景」展、ICCのevala」展とハシゴしてきたので、ここまできたらついでにハシゴしていくことにする。


会場内の作品は撮影可だがキャプションや資料は撮影不可という謎ルール。

富嶽の技法《富嶽三十六景》
北斎ブルー《富嶽三十六景》
新ジャンル風景錦絵時代の到来《諸国瀧廻り》

このような俯瞰地図は私の大好物。

北斎と教育出版《唐土名所之絵》※原画の約10.8倍

掛け軸も再現。

《富士越龍》


所蔵先から唯一公認されたマスターレプリカを活用して20億画素の超高精細デジタル記録と3次元質感画像処理技術により和紙の繊維の一本一本から微細な刷りの凹凸まで現物を再現している、とのこと。
確かに色味や質感は本物と見紛うほどのクオリティ。
美術作品を見慣れている人ならレプリカということは判別できると思うが、見慣れていない人なら多分全くわからないと思う。
そもそも元々が紙への版画だし色味も少ないのでこのようなアーカイブ技術と北斎は相性が良さそうだ。


《岩松院本堂天井絵「鳳凰図」》※原画の約1/12


今回の第5弾の目玉である祭屋台の天井絵。

《東町祭屋台天井絵》
《上町祭屋台天井絵》


4Kデジタル配信絵画や裸眼VR、リアルな絵画が動くムービングアートピクチャーなど様々な最新デジタルアプリケーションも展示されている。
ICCならではだなあ。

裸眼VR映像。
大波が押し寄せる。

《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》

画面の外の世界に作品のイメージを広げてみる、という映像。
福田美蘭のドラえもんを思い出した。


シアターでは時間の都合で一本だけ「ジャポニズムと北斎」を見た。

19世紀後半にヨーロッパを中心に広がった「ジャポニズム」。その影響を与えた人物が北斎だと言われています。 なぜ、世界の芸術家は北斎に注目したのか。世界で評価を受けるようになったその理由を探ります。

ICC


日本視点では「美術史のメインストリームに躍り出て世界の美術に多大な影響を与えた素晴らしい日本美術!」くらいの大げさな表現もあったりする。
だが西洋視点で見ると、実際はアフリカの仮面とか置物と同じような「辺境の地の珍しい表現のひとつ」くらいの位置付けで、あくまでも西洋美術の本流に対して数多ある細い支流としての評価だったのだと思う。
とはいえ確実に影響を与えた作品は存在するし、それらの作品や北斎の重要性が揺らぐというわけではないが。

75歳になっても「画狂老人卍」みたいな厨二病炸裂のマジ卍な画号を名乗っちまうようなアグレッシブな感性を持った爺さん。
私も75歳くらいまで生きた暁には「Super mata ultimate X Ver.2 a.k.a. CRAZY JOURNEY, feat. Pablo Picasso」くらいはかましてやろうと思う。

そういう者に私はなりたい。



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