酒屋が教えるワインの教科書 ぶどう栽培
ワインの原料のぶどうの栽培について、栽培を知ったところでどうなるものでもないと思いますがぶどう栽培を知ることでワインも深く理解できます。ここではぶどう栽培がどのようなものか説明いたします。
ぶどう栽培は気温、日射量、降水量などの気象条件と土地や土壌の条件がぶどう品種に合うことが大切です。
栽培に適した気温は平均気温が10℃から20℃、一日の気温の寒暖の差があり、 生育積算温度2000℃から2200℃の地域が適していると言われています。生育積算温度とはぶどう育成期間4月から10月の有効積算温度(平均気温から10℃を引いた温度)を足して試算したものです。
日射量は多い方がよく、生育期間の春から秋に1300時間から1500時間以上の日照時間が必要とされています。そのため、栽培に適した土地は東側から西側に掛けて開けた南向きの斜面が良いとされています。
降水量は春から秋にかけて800㎜から900㎜ぐらいが適しています。また、ぶどうの収穫時期に雨が少ない方が良いとされています。
土地は標高200mから500mで南向きの斜面で水はけと水持ちが適度に良く、風通しも良いことです。そのため、ぶどう栽培は風通しが良くなるように植え付けされます。土壌としては粘土質の状態がどうなのかです。陽イオン(カルシウム、マグネシウム、カリウムなど)を保持することができる量に左右されます。一般的にワイン用のぶどうは痩せており、水はけが良いとされていますが土壌の粘土質や石灰質や花崗岩、玄武岩、シスト、スレートなどの条件で栽培されるぶどう品種も違ってきます。
ぶどう栽培の1年間
ぶどうは多年生植物になります。多年生植物とは2年以上にわたり生育する植物ことを言います。そのため、管理作業が大事になってきます。
ぶどうの種まきの適期は11月から12月と3月から4月です。鉢植えで苗木に育てたり、接ぎ木によって苗を作り、畑に植え付けますがここではぶどう畑で行われていることについて話します。
3月
3月になるとぶどうの生理的休暇は終わります。樹液の流動が発芽2~3週間前から始まります。樹液の流動は根が張る合図とされています。したがって、樹液の流動期に入るまでに整枝、剪定を終わらせます。ぶどう畑の株は同じ区画40年以上育っているので毎年の収穫でやせた土壌を肥沃にするために肥料をまき、土に栄養分を貯えさせます。
4月
若芽が膨らみ始めます。気温が上昇して、湿度の影響で保護された皮が開き、発芽します。畑では畝崩しを行い、除草して土壌に空気を送り、雨水を染み込みやすくします。
5月
5月に入る頃になると結果母枝(種枝)から結果枝(新梢)がよく伸びてきます。貯蔵養分が豊富で枝の伸長最盛期が開花の10日前ごろに見られれば、結実成績が良いものになります。カビと稀ではあるがウイルス、バクテリアによる病気を防ぐために農薬散布も行われます。
6月
気温が20℃になってくると開花期を迎えます。数十日ぐらいで花が開花し、それにより、収穫日も決まってきます。開花を迎えることでぶどうの若枝を針金などに結ぶ作業をします。
7月・8月
伸び続ける枝の剪定や除葉を行い、結実した部分に栄養分を与え、色付きを良くします。
8月・9月
ワインの醸造の準備を行います。製造用の器具の点検や洗浄、容器などの準備にかかります。9月になる頃はぶどうの色も濃くなります。ぶどうの摘果を行ったり、病気や害虫の防除します。
9月・10月
ぶどうの収穫が本格的になります。それに合わせてぶどうの選別を行い、ワインの醸造が始まります。
11月
ぶどうの葉の色が変わり、落葉してきます。冬の霜を防ぐため樹の根元に土を寄せる作業をします。ぶどうは本格的な冬を迎えて植物休眠期に入ります。
1月・2月
ぶどうの生産量を管理し、植物のバランスを取ることで長生きさせるために剪定をこの時期に行います。また、畑の支柱や垣根の手入れや修理も行います。
美味しいワインを作るためにはぶどうの畑の管理が大事になります。機械化が進む今日でも人による技術や熟練の作業がいかに大事かと言うことです。
マガジンにしました。 酒屋が教えるワインの教科書https://note.com/masutaka_note/m/m49ac080d0803
参考資料
葡萄は語る SOPEXA フランス食品振興会
世界のワインカタログ サントリー株式会社
NHK趣味の園芸 NHK出版
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