酒屋が教えるワインの教科書 ぶどうの品種(セパージュ)
あなたが好きなワインはすべてぶどうから造られています。ぶどうを知ることでワインの特徴がわかります。ぶどうには多種多様な品種があります。野生のぶどうはぶどう科のつる植物になります。その品種は改良されて数多くありますがヨーロッパ種でヴィティス・ヴィニフェラだけが質の良いワインになり、これが栽培されるすべてのぶどう品種の原種になります。カベルネ・ソーヴィニョン、シャルドネ、メルローなど世界中のぶどう畑に輸出されました。現代では日々、改良され進化しています。それぞれのぶどう品種は次の3つの要素が深くかかわっています。
土壌
それぞれのぶどうの品種にはその特質を最高に開花させる土壌のタイプがあります。例えばガメイ・ノワールはボージョレーの花崗岩質土壌では上質で肉付けの良いワインになりますが粘土質・石灰質土壌では柔らかく軽いワインになります。土壌によってぶどうの質や味が変わってくるということです。
肥沃成分の含有度はぶどうの生気に影響します。肥沃すぎると生気が強くなり、ぶどうの実の成熟が足りなくなり、ぶどうの味にばらつきが生じ、バランスの悪いワインになります。反対に痩せて浅い土はぶどうの収穫量が少なくなりますがより凝縮したリッチなぶどうを育てます。
気候
ぶどうの品種はその特徴を最大に発揮できる気候の土地に植えられます。例えばゲブルツトラミネールと言う品種はアルザスの大陸性気候に適して、グルナッシュは暑く乾燥した地中海性気候に、カベルネ・ソーヴィニョンは温暖なボルドー地方の大西洋気候に適しています。
人間
それぞれのぶどうの栽培、収穫量の決定に関わるのは人間にほかならない。造ろうとするタイプのワインに合わせて醸造技術を駆使するのも人間と言うことです。
ワインのぶどう品種
ぶどう品種は数千もありますが醸造用の品種は限られてきます。品種は黒ぶどう品種と白ぶどう品種の二つの系統に分かれます。ワインのラベルには商品名としてぶどうの品種名としてつけられていたり、表示されています。ぶどうの品種を知ることで購入するワインの特徴がわかります。それぞれのぶどうの代表的な品種について説明します。
黒ぶどう品種で代表的なぶどう品種はカベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、シラー、メルロー、ピノ・ノワール、ガメイ・ノワール、グルナッシュなどがあります。白ぶどう品種はシャルドネ、ソーヴィニョン、ゲブルツトラミネール、セミヨン、リースリング、ミュスカデなどがあります。
黒ぶどう品種
カベルネ・ソーヴィニョン
世界的にもワインの醸造で有名で幅広く栽培されている品種です。フランスではボルドー地方を中心に栽培され、晩熟タイプの黒ぶどうです。力強く、なめらかなタンニンを持ち、熟成によって素晴らしく変化します。質の良さと適応性に優れています。ボルドー地方以外でもロワール渓谷、南西部、地中海沿岸と幅広く栽培され、銘酒が造られています。
カベルネ・フラン
ボルドー地方原産の品種です。カベルネ・フランも世界的に栽培されています。フランスではボルドー地方をはじめ、ロワール渓谷、フランス南西部と広く栽培されています。カベルネ・フランのワインはカベルネソーヴィニヨンのワインよりも色は明るく、タンニンもやや少ないのが特徴です。
シラー
シラー種も世界的に栽培されている品種です。フランスではローヌ渓谷北部で栽培されて、コート・ロティ、サン・ジョセフ、エルミタージュなどのワインになっています。また地中海地方ではラングドック・ルーションやプロヴァンスで使われています。世界ではオーストラリアのシラーズが有名です。非常に色も濃く、すみれ、コショウ、皮のようなスパイシーな香りが特徴です。タンニンも豊富で長熟成タイプのワインになります。
メルロー
メルロ-種も世界的に栽培されている品種の一つです。粘土・石灰質の土壌を好み、ボルドー地方以外にフランス南西部、ラングドック・ルーションでも多く栽培されています。色が濃く、まろやかで濃厚なタイプのワインになります。また、カベルネ種よりも熟成が速いのも特徴です。
ピノ・ノワール
ピノ・ノワールはブルゴーニュの銘醸赤ワイン用の品種として有名です。フランスではブルゴーニュ地方をはじめ、アルザス、ロワール中部、ジェラでも栽培されています。シャンパーニュでは白ワインになります。また、世界中で栽培されており、アメリカのカルフォルニアでも高級ワインとして造られています。若いワインはフルーツや華やかな香りあります。熟成されるにつれて熟成した果実や猟獣肉を思わせる香りへと変化します。
そのほかにもスペイン原産のグルナッシュ、ボジョレーに使われているガメイ・ノワール、暑い地域でやせた小石の多い土壌で栽培すると非常に濃いタンニン豊富なワインになるカリニャンなどがあります。イタリアでも色も明るく、華やかな香りを造り出す、サンジョヴェーゼなどその土地に合うぶどう品種が数多く栽培されています。
白ぶどう品種
白ブドウ品種も数多くの品種があり、世界で栽培されています。そして、造られたワインは高級なワインから低価格で美味しいワインになっています。
シャルドネ
白ぶどう品種の代表する品種で世界中で栽培されています。栽培面積ではスペインのアイレンやユニ・ブラン種に次いで多く栽培されています。フランスではブルゴーニュに銘醸白ワインとして有名です。また、シャンパーニュ地方で使われている3つの品種の一つです。シャルドネ種から造られるワインは初めは青い麦やエレガントな花のような香りがして、熟成するにつれて、ドライフルーツやアーモンド、ヘーゼルナッツ、熟した果実へと変化していきます。味もシャブリのように辛口からムルソーのようにまろやかで濃厚なタイプまで幅広く楽しむことが出来ます。
ソーヴィニョン
フランスでは主にボルドー地方、南西部、ロワール渓谷で栽培されています。世界でも南アフリカ、カルフォルニアやチリと言ったな北米・南米でも栽培されています。青りんごのような香りからミネラル分のある土壌の香りがします。力強い、しっかりとした辛口のワインになります。
リースリング
フランスのアルザス地方、ドイツのライン川流域で主に栽培されて、世界でも最良の白ぶどう品種と言われています。リースリングから造られるワインはとても繊細で果実や花の香りが特徴です。また、収穫を遅らせて造る貴腐ワインやアイスワインとしても有名です。
ミュスカデ
ムロン・ド・ブルゴーニュと呼ばれる品種でミュスカデワインはこの品種のみで造られます。辛口で酸味の調和されたワインになります。澱を残したシュール・リー製法で瓶詰めしたワインは繊細で果実あふれる味わいがあります。
セミヨン
貴腐菌(ボトリティス・シネレア)が繁殖しやすい品種なので銘醸甘口ワイン(ソーテルヌ)の主要品種とされています。ボルドー地方をはじめ、フランス南西部、特にジルジュラック地方でも栽培されています。
ユニ・ブラン種
世界的に栽培されて、生産量も多い品種です。フランスではサンテミリオンとも言われ、イタリアではトレッビアーノと呼ばれています。フランスではシャラント地方と南西部地方で主に栽培されて、力強いワインになり、コニャックやアルマニャックの原料にも使われています。フランスではヴァン・ド・ターブルやヴァン・ド・ペイのワインに多く使われています。
日本で使われているぶどう品種
甲州種は日本系雑種の白ぶどう品種になります。生産量でもトップの品種になります。2018年の収穫量は2,692トン、ワイン仕向率:収穫量の94.6%になっています。繊細で調和のとれた日本の甲州ワインは世界的に高い評価を受けています。
ナイヤガラはアメリカ系雑種白になります。ニューヨーク州が原産になり、国内では北海道、山形、長野が主な産地になっています。日本の2018年の収穫量は2,189トン、ワイン仕向率:93.0%です。ほのかな果実の香りと穏やかな酸味のワインとなります。
マスカット・ベリーAは赤ワインとして川上善兵衛がアメリカ系のベーリー種とヨーロッパ系のマスカット・ハンブルク種を交配してつくりました。いまでは日本の赤ワインの代表品種になっています。鮮やかな赤で甘みと酸味の調和の取れたワインとなります。
マガジンにしました。 酒屋が教えるワインの教科書https://note.com/masutaka_note/m/m49ac080d0803
参考資料
葡萄は語る SOPEXA フランス食品振興会
世界のワインカタログ サントリー株式会社
NHK趣味の園芸 NHK出版