彼氏に妊娠を報告したときの話
2024年12月15日(日)。昨日の私といえば、寿司屋から帰宅後、ずっと気持ち悪かった。嘔吐までの症状はでないものの、ずっと口の中がすっきりしない。胃もたれに近いような感覚。食欲も湧かず、夜はうどんを半玉だけ食べて夕食を済ませた。
この日は、朝から彼氏と蚤の市に出かける予定だった。ただ、昨日の具合の悪さから「明日行けるかわからない」と伝えており、行くかどうかは起床後に判断することに。朝起きてみると、昨日の気持ち悪さは消えていた。
蚤の市は閉まるのが早い(大体午後2時とか3時まで)。そのため、ゆっくり楽しみたいなら早く行かなければならない。このままもう一度眠りにつきたい気持ちと、蚤の市を楽しみたい気持ちが交差しつつも、人を誘っている手前、渋々起き上がって10時頃家を出た。
蚤の市会場は広く、アンティーク小物から家具、古着屋、フードトラックなどの店舗がずらりと並んでいる。様々な魅力的な商品に目移りしながら、思う存分満喫した後は、近所のレストランでランチをすることに。ここからは、近くに住んでいる彼と私の共通の友人も呼び、3人で遅めの昼食をとった。
その後、彼と友人は少し仕事をするということで、私は先に帰宅することにした。今朝は体調に問題がなかったが、今はできるだけ立っていたくなかった。それに普段在宅ワークのため、長時間歩いたり、公共交通機関を使ったり、人が多く集う場所に行ったりすることが少ない私は、外出するだけでどっと疲れを感じてしまう。ベッドに横になるとそのまま就寝してしまい、起きた頃には外は暗くなっていて、22時頃彼が帰宅した。
私はこの日、彼に妊娠を告げることを決めていた。妊娠がわかった時点ですぐに彼に伝えてもよかったのだが、なんとなく土曜日より日曜日の夜の方がいいだろうと思った。土曜日に伝えて、彼に混乱する日曜日を過ごしてほしくなかった。
彼が帰宅後、いつ伝えようかソワソワしていた。基本私たちはよく喋り、会話が絶えないタイプだ。なので、ご飯を食べているとき、お皿洗いをしているとき、ソファに座っているときの会話中、ずっと(………いまか?)とタイミングを伺っていた。
しかし、なかなか言い出せない。その理由は、彼がどんな反応をするのか想像がつかなかったからだ。
私の彼は起業していて、日頃からよく「今が一番頑張りどき」と話していた。その言葉通り、彼は平日は朝早くから夜遅くまで、休日も予定がない限り、基本は仕事をしている。そんな彼とは対照的に、私はそこまで仕事に対して熱い情熱を持っていない。対照的だからか、人生においてやりたいことが明確化されている彼のことは心の底から応援している。同棲前も「私がいることでもし思い通りに仕事ができなくなるのなら、同棲しなくていい」と断ったほどだ。
そんな彼に、いま、妊娠したと伝えたらどんな反応をするのだろうか。自然妊娠は一人ではできないけれど、どこか"このタイミングで妊娠してしまった"自分に罪悪感を感じていた。そして彼次第では、他の誰にも伝えずに、産まない決断をすることもあるかもしれないと本気で思っていた。
お風呂に入り、歯を磨き、彼は着々と寝る準備を進めている。結果私は、ベッドに入ってから伝えることにした。2人とも寝る準備を済ませ、適当にスマホを見る。このとき(今しかない!)と思い、「伝えたいことがある」と口を開いた。
私たちは現時点で3年以上の交際期間があり、2人の間に問題が発生すれば、幾度も話し合いをしてきた。彼もなにかを察知したのだろう、スマホを置いて目線をこちらに向けている。
「どうした?」と優しく聞き返してくれた彼を前に、なかなか次の言葉を発せない。この一言で、私たちの人生がどれほど変わってしまうのだろうと想像したら、昨日から伝えることを決めていたのに、何回深呼吸しても言葉が出てこなかった。
そんな私を見て、彼も只事ではないと思ったのか、「どうしたの〜?」「何かあった?」と私の手を握りながらなんだか慰めモード。私は感情が溢れ出してしまい、言葉より先に涙が出てきた。そして泣きながら「妊娠……した…と思う」と呟いた。
まさに呟いたという表現が正しいような声のボリューム。泣いていたので、その時の彼の表情はよく見てなかった。しかし、彼から返ってきた言葉はハッキリと覚えている。
「育てよう」だった。
びっくりした。嬉しかった。ホッとした。この人でよかったと思った。涙する私を見て、彼の目も潤んでいた。
それから私は、昨日からインターネットで集めたできる限りの情報を彼に伝えた。まずは、病院に行って、子宮内に妊娠しているか確認しなきゃいけないこと。近所の婦人科は予約が必要だから明日以降になること。すでに悪阻が始まっていそうなこと。悪阻には個人差があること。
一通り話し終えると、彼は私のお腹に耳をあてて「まだ何も聞こえないよね?」と言った。
その様子が可笑しくて、愛おしくて「聞こえるわけないよ」と笑いつつも、このときを覚えておきたいと強く思った。