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合う、合わないとかそういう話

【合う、合わないとかそういう話・スキルの話】


若い頃というのは必ずしもそうではなくて、大抵想像される通りの、自分がこうしたいというのを、授業でもガツガツと情熱で押し切るんですね。


授業自体が得意で、これはかつての価値観の下で、と考えると、ありきたりなハイテンションで、元気で、熱のこもった授業、見せる授業、楽しい授業、笑わせてくれる授業、それでいてわかりやすい授業、それを突き詰めて、やはり若い頃はそうしてやってきたわけです。

で、実際にそれで全国に知られるだけの特殊な結果を出してきたんですね。
ご存知の通り、県でも特殊な大規模な教室展開をしてきたわけです。
テレビCMを出していましたけれど、つまりそれで効果が上がるくらいの規模だということです。

大手(企業)塾に雇用される講師、という方が大半だとは思いますが、僕の場合はレアケース、自分で大手を作ったという経験の持ち主なのです。

ただ、個別指導が地方で増え始めるタイミングがきて、単に集団授業を極めればいいということに陰りが出てきたことで、割と早いタイミングで、一斉授業を突き詰めるというのは、方向性を変えてきたので、ものすごく長い時間、一斉授業だけをやったということでもありません。
むしろ、5年先を見通すくらいの予測が得意技なのもあって、周囲よりかなり早く、転換をしてきたことになるでしょう。


とはいえ、やはり若いには若いなりに、当時は、テンションの高さを競うような授業スタイルを極めてきたわけです。    

さて、本題です。


よく、自分に合う先生、合わない先生、という言い方をする場面がありますよね。

この先生には合う、とか、私には合わない、とか。

相性みたいなことを多くの方が考える。


ところが、これは、かつての一斉集団授業のもとでの考え方、なんですね。
もしくは、個別指導や家庭教師であっても、実際にはあまり変わりなく、合う、合わない、なんてことを考えることがあるでしょう。 


これはつまり、先生のスタイルによるところ、からくる発想なんですね。
(僕が長く言及してきている、先生像のことですね)


個別であろうが集団でやろうが、合う合わないが、生じていると考えてしまうのは、
それが、従来通りの知識の伝達授業だからです。
もっと正確にいえば、教え手が主となる授業だから。

だから、合う合わないがある。
当然ですよね。

教え手が主であるから、学び手はそれに合わす必要がある。だから向き不向きが出るんですね。
そしてこれがかつての先生像によって作られてきた授業、指導ともいえます。


翻って。

僕にはほぼ”合う、合わない”がないんです。
ご存知の通り、これだけの数の生徒と学んでこれたというのは、裏を返せば、合う合わない、というのが限りなく少ないんです。

若い頃のスタイルを変えてから以降は特にです。(僕の場合は前述の通り、割と早いタイミング、先生職と経営職を始めて数年のうちにスタイルを転換させてきました/30代半ば以降からもう10年以上)。

僕を知る方はご存知だと思うのですが、なんともまあこれは不思議なことに、小さい頃から、人の好き嫌いがない。
というか、好きはあっても、嫌い、というのがないんです。
子どもの頃も、周囲はあの先生嫌いとか嫌だとかよく言ってましたけど僕はそこには反応できずポカンとしてましたから。

だから、もちろん元々のタイプ(性質)が、ポジティブに働いている面もあるのだとは思います。

ただ、これは主要因ではありません。


主たる要因は、授業転換と先生像の転換・アップデートなのです。

わかりやすくスキルとして言及すれば、これはコーチングというスキルゆえ、というのが正確な言い方になるでしょう。

単に、元々そういうタイプだ、以上に、知識を含めたスキルとしてちゃんと磨いているんです。

で、これは、先生側が主となるようなスキルじゃないのです。

学び手を主役とするための、スキル、それがコーチングなのですね。
技術でやっているから、できるのです。
勘とか感覚だけに頼っても、やはりそれはうまくいかない。


合う、合わないが出ちゃうんですよ。

もちろん、このコーチングのスキルに、先生としてのスキルを融合させたものではあるのですが、何よりコーチングスキルは、「受ける技術」であることがとても大切。
受け手に徹することができるんですね。 
 
だから、ちゃんと技術として、子どもたちを主役に置くことができるんです。

受ける技術だから、合う、合わない、がないんです。

ここがなかなか知らない方には想像ができないとは思うんですけれど、そういう意味でも特殊なスキルと言えますね。


合う、合わない、がないおかげで、何度も言及してきた通り、
学校や地域のトップの子や優等生、だけでなく、学校を代表する悪、たちとも、これまで楽しく勉強してこれたのです。事実として。

それと理解されていない点をついでに述べておきます。こうした前置きがわからないと書けないので、せっかくなのでここで書き添えておきます。
  
それは、子どもたちのベスト、を引き出すという点。

コーチングは指示命令のスキルではありません(コーチングという用語が、日本のスポーツ関連では誤用されていることがしばしあるので、それもご注意を)。アドバイスや指導はコーチングの領分ではないのです。


もっとも肝心なのは、その人の思考を整理し、その人自身のベストを引き出すこと。


だから、僕と学ぶ子たちは、今できるベストをしっかりと引き出し、勉強に取り組んでくれることになります。

誤っても、親御さんが想像するベスト、ではありません。それって大抵、他者から見た希望、欲でしかありませんからご注意を。

そうではなくて、子どもたちのその時点でのベスト。それを目指すものなのです。

このことを忘れて、周りがこれをやらせたい、こうだったらいい、と大人の側の理想や欲を押し付けると、当然、歪み、が生まれることになります。

必要以上の過度なストレスを生むかもしれません。 
短期的にはなんとかなっても、いずれどこかで破綻するのです。息が切れる、壊れる。最悪の場合を想定すると、やはりこれはとんでもなく恐ろしい。 

でも、多くの場合、大人の側の感情は、そのことを忘れさせ、子どもたちに過度な教えつけをしてしまう。
子どもの今、現状をしっかり見つめなければ。心や身体が今どんな状態にあるのか、それを無視した押しつけは、いずれどこかでツケを返すことになる。

だからこそ、この子たちの今できるベストを引き出す。

それをちゃんと本人が考え、自分の思考や感情を整理できるように導く。

その手助けをする。

受ける技術、ベストを引き出す技術。 

それが、僕が実際に実践して結果を出してきたスキルなのです。


話を戻します。

よくいうところの、合う、合わない。

合う先生、合わない先生、合う授業、合うやり方、合わない指導、
世に数々の合う合わないが転がってはおりますが

僕にはあんまりそれが適用されることがないのです。

(おわり)




本田篤嗣(Honda Atsushi)プロフィール

<教育部門>
特定非営利活動法人「まなびデザインラボ」理事長。
コミュニケーションと対話を重視しながら、理解力、思考力、論理力などを養う学びの場を創り続けている。

「まなびデザインラボ」のスクール事業『まなラボスクール』にて教育に取り組む。(2005-2014年、本田屋にて「みかみ塾−本田屋」ブランドを経営。県内外で10店舗以上を経営(県内最大級の規模へ)後、譲渡。1年目で100人、2年目で200人、3年目で300人の生徒を集め、全国を代表する学習塾、日本を代表する講師となる。

県内を中心に数千人以上の子どもたちを直接指導。オーナー経営者として関わった生徒は相当数) 15年以上に渡り、多数のエリアで地域トップ校合格を輩出する一方で、不登校など問題を抱える子どもたちのサポートを続ける。

受験や入試だけにとらわれない教育としての場作りに取り組む。コーチングをベースにコミュニケーションを大切にしながら指導を続け、全国から教育関係者が多数見学に訪れている。

著書のみならず、無料小冊子、受験生応援ソングCDを全国に無料配布。CDの累積は1万枚を突破した。 YABニュース取材「学びの本質とは」などで取り上げられる。

企業経営を進める中、利益追求では教育実践は不可能だと感じ、2015年に法人をNPO化。教育としての場づくりとその発信に取り組む。

2021年現在は、NPO理事長、受験指導まなラボスクール、フリースクールまなポート、通信制高校など社会起業家として活躍の場を広げている。

まなラボスクール【山口県周南市の学習塾 | 小・中・高校生対象】


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