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kyatapy
悪名高い手法の果てにあるもの/業界の闇の話/営業ツールの塾模試
業界の闇は深い。
よく使われるエリア内の無料テストは、業界内でも比較的悪名高い手法の一つだ。
無料で行われるテストは営業ツールとしてのもの。残念ながら正義はそこにはない。
この手法が業界内で特に嫌われてきた理由は、その手法にある。
自塾の生徒には事前に点数が取りやすい類似問題をさせてからテストを受けさせ、自塾外の生徒の保護者には「うちの塾の子たちはこんなに点数が高いですよ」と勧誘するのである。
僕は、これについて、忘れるのことのできない出来事がある。
僕が業界でお世話になった、取引先の教材会社の方のお話だ。
仮にAさんとしておく。
Aさんは僕が唯一業界内で信頼を置いていた優秀な営業マンだった。
優秀すぎて唯一の存在であったし、物腰はいつも優しく、年下の僕にも(たぶん誰に対しても)敬語で丁寧に接してくれていた。
それは、ある塾が生徒集めのために業界内でも評判の悪い無料テストを始めた時だった。
Aさんはその塾のとった手法を見て、僕にこう話された。
「そんな手法をとる塾とは付き合わない。自分の会社の教材は絶対に売らない」
きっぱりとそう話されたAさんの表情からは、強い正義感を感じ取ることができたし、
同時に、ある種のもの悲しさも浮かんでいた。
そのあと少しして、Aさんはこの業界の限界を感じとり、業界から引退された。
あまりに優秀なAさんにはこの業界はつまらないものだったかもしれないし、
いつまでも実現されないこどもたちや親御さんに誠実な教育に対して苛立ちがあったのかもしれない。
残念ではあったが、至極当然のことでもあった。
教育の業界と呼ぶにはあまりにも幼稚な業界である。
闇はいつも深い。
僕がAさんの言葉を忘れることはたぶんないだろう。
Aさんは正しかったのだ。
その瞬間も、そしてこれからも。
(おわり/2018年記事)
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