
【質問こそ最強の武器】ソクラテスのクエリ術:ビジネスを成功に導く「問いの力」
ソクラテスに学ぶクエリ術:正しい問いがデータを活かす
どうも、ビジネス哲学芸人のとよだです。
今回の“ビジネスと哲学とITの交差点”では、「Query(問い合わせ)」と「ソクラテス的問答」を絡めながら、データの活用とビジネスの意思決定をどう結びつけるかについて、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。
前回はウィトゲンシュタインの言語ゲーム論とDSL(Domain-Specific Language)を取り上げましたが、今回も「正しく問いかけること」にまつわるお話です。いやはや、私たちが扱う“言語”や“問い”って、本当に奥が深いですよね。いつもながら素朴な疑問が止まらないカオスなテーマ、どうぞ最後までお付き合いください!
1. 「問いの力」が生む価値とは?
ビジネス上の“問い”はあらゆる場面に潜む
ビジネスの現場では、「データをどう活かせばいいのか?」「この数字は何を意味しているのか?」といった問いが日々飛び交っていますよね。ときには「売上が伸びている商品を知りたい」「顧客がどんな理由で商品を選んでいるかを知りたい」など、分析して答えを導くためにデータをかき集めることもあるでしょう。
でも、データを手に入れたからといって自動的に良い答えが得られるわけではありません。むしろ、やみくもに数字を眺めているだけだと時間がかかるばかりで、結局「何が重要だったの?」とモヤモヤしたまま終わってしまうことも。
そこでカギを握るのが「正しい問いをどう設定するか?」という視点です。たとえ膨大なデータがあっても、問いがズレていれば欲しい情報にはたどり着けない。これはまるで、“正しい目的地”を知らずに地図を眺めているようなものです。
ソクラテス的問答との接点
一方で、古代ギリシャの哲学者ソクラテスは「問答法(エレンコス)」と呼ばれる独自の対話術で知られています。対話相手に質問を投げかけ、「本当にその認識は正しいのか?」「その定義をもう少し詳しく説明できるか?」と何度も確認し、答えが曖昧だったり矛盾していると、そこを突いてさらに深い議論へ導くのです。
ここで重要なのは、ソクラテスは相手の矛盾を責め立てるのが目的ではなく、「対話を通してお互いが考えるきっかけをつくる」という姿勢にある、という点です。ソクラテス的問答は、ただ「なぜ? なぜ?」と繰り返すだけでなく、前提・定義・矛盾点・別視点などを多角的に問うことで、思考の曖昧さを浮き彫りにし、より深い理解へと進むプロセスなんですよね。
なぜこの2つを並べて語るのか? ポイントは「正しい答えを得るためには、正しい問いが不可欠」というシンプルな原理にあります。ビジネスの世界でも、ソクラテスが活躍した古代ギリシャでも、「問う」という行為がすべての出発点なんですよね。
2. 「Query」とは、“データへの質問”のこと
ITの現場でよく聞く「Query(クエリ)」という言葉。これは本来、データを保管しているシステムに対して「こんな条件で必要な情報をください」と問い合わせをする行為を指します。
たとえば「今月の売上のうち、特定の商品カテゴリーだけを調べたい」
あるいは「WEBサイトのアクセスログから、ユーザーがどのページをよく見るのかを知りたい」
といった具合に、欲しい情報を得るための“質問”をシステムに投げかけるイメージです。
SQLを知らなくても実は日常で使っている“問い”
専門用語でSQLや検索エンジンのキーワード入力などを「クエリ」と呼びますが、実は私たち誰しも検索サイトを使うときに「東京 おすすめ スイーツ」と入力したりしますよね。あれも立派なクエリです。「東京近辺で評判の良いスイーツを教えてください」とネット上のデータに“質問”しているわけです。
ただし、質問の仕方が曖昧なら、検索結果も曖昧なものが返ってくる可能性が高い。これと同じように、ビジネスで扱うデータ分析でも「何をどう質問しているのか?」が重要になってくるのです。
3. ソクラテス的問答:「なぜ?」を掘り下げる対話術
次にソクラテス的問答(問答法)を見てみましょう。ソクラテスは対話の中で、相手に次々と質問を投げかけます。
「その概念はどう定義されるのか?」
「それは矛盾していないか?」
「具体的な事例を挙げられるか?」
こうした質問を繰り返すことで、最初は自信満々だった相手の主張がほころびを見せたり、逆に相手が自分の無知に気づいて謙虚になったりします。ソクラテス本人は「自分は何も知らない」という姿勢をとりつつも、問いを投げることで真理へ迫ろうとするんですね。
これは現代のビジネスシーンでもよく言われる「Whyを5回繰り返す」方式に近いところがあります。問題の根本原因を突き止めるために、「なぜそれが起きたのか?」と何度も問い返すアプローチ。それをさらに洗練させたのがソクラテス的問答法ともいえるでしょう。
4. ソクラテス的問答が生きるのは「前提を疑う」場面
ソクラテス的問答法とクエリを結びつけるとき、最も大事なのは“問いそのものの定義”や“前提”を疑う視点です。たとえば「売上が伸びている商品を知りたい」と思ったとき、ソクラテスなら真っ先にこう尋ねるかもしれません。
「そもそも ‘売上が伸びている’ とはどんな状態を指すのか? 成長率? 金額? それとも去年の同時期との比較?」
「なぜそれを知りたいのか? その情報はどんなビジネス意思決定に繋がるのか?」
「その定義で本当にいいのか? もし季節商材なら、一時的な売上増加かもしれないが?」
こうした問いは、データベースへの問い合わせ(クエリ)を改善するだけでなく、「そもそも何が大事なのか?」という上位の目的をはっきりさせるのに役立ちます。ちょっと哲学的に聞こえるかもしれませんが、ビジネスの現場で陥りやすい「何のためにこれをやっているんだっけ?」問題を解決するには、こうした多角的な問いが不可欠なんです。
5. クエリ改善のためのソクラテス的アプローチ事例
(1) そもそも目的が曖昧になっていない?
たとえば、あなたが「今月どの商品がどれだけ売れたかをサッとまとめたい」と思ったとしましょう。
従来の考え方: 「商品ごとの売上リストを作ろう。ついでに在庫も、利益率も、過去3ヶ月の推移も、全部まとめてください!」
ソクラテス流の問いかけ: 「目的は何かな? 在庫管理がしたい? 売上ランキングを見たい? それとも利益率の低い商品を探したい?」
こうして聞かれると、「あ、そういえば在庫管理担当と売上分析担当は別部署だから、一緒にすると話がごちゃごちゃになるな」と気づく場合もありますよね。結果的に、必要な情報が明確になり、問い自体が洗練され、データ抽出もシンプルになります。
(2) “前提が合っているか”を問いただす
あなたが欲しいデータを取得するために、どんな条件で情報を絞り込むかが重要です。ソクラテス的に言えば、「その条件は妥当か?」を繰り返し問うのがポイント。
「この期間設定でOK? イベントの影響で変動してるかもしれないよ?」
「商品の分類は正しい? カテゴリーの切り分け方に問題はない?」
「比較対象は去年なのか? それとも前月と比べたいのか?」
ちょっと面倒に思えるかもしれませんが、こうした問いが「本当に意味のある分析結果」に導いてくれるんです。ソクラテスは相手の言うことにいちいちツッコミを入れ、矛盾や曖昧さを指摘しましたが、データ分析の世界でも「思い込んでいた前提が間違っていた…」となれば分析結果そのものが無効になりかねません。
(3) 何が矛盾しているのか・していないのか
ソクラテスは「〇〇と言っているけど、あなたの別の発言と矛盾してない?」としばしば相手を問い詰めました。データ分析でも、「こっちのデータとあっちのデータが食い違っている」という状況は珍しくありません。
組織の中で管理されているデータがバラバラなら、まさに“矛盾した数字”が出てきて混乱してしまうことも。そういうときこそ、ソクラテスになった気持ちで「両方の定義は何が違うのか?」「どちらの前提が正しいのか?」「あるいはどちらも部分的にしか合っていないのでは?」と問いかけてみる。
すると、組織がデータを管理する仕組みや、そもそもの指標(KPI)の定義がきちんと揃っているかなど、“表には見えない課題”が浮き彫りになってくるのです。
6. ビジネス全体への活用:問いの質が意思決定を変える
(1) 組織やチームでの対話に役立つ
ソクラテス的問答法は、個人のデータ分析だけでなく、組織レベルの意思決定にも応用できます。たとえば会議の場で「それってどういう意味ですか?」「その定義、全員で共有できていますか?」と問いかける人がいるだけで、議論の質はガラッと変わる可能性があります。
もちろん、頻繁に「それは矛盾じゃないか?」と突っ込んでばかりいると煙たがられるかもしれませんが(僕自身、よく煙たがられています笑)、ただ形だけの報告や曖昧な同意で終わらせず、組織内の思考を深めるうえでは“遠慮しない問い”が大事なんですよね。
(2) データドリブンな文化を根付かせる
「数字やデータに基づく意思決定がしたい」と言いながら、実は「何を指標にするか」が曖昧だったり、みんなが大量の資料を見ているだけで終わってしまうケースは意外と多いもの。ここでもソクラテス的問答が生きてきます。
「私たちは何を変えたいのか? 数字が上がること自体がゴール? それとも顧客満足度を上げたいのか?」
「データが示す数字は、どんなビジネス上の選択肢に繋がるのか?」
「この指標は、ほんとうに会社全体の価値やミッションを反映しているのか?」
このような問いを繰り返し、データの裏にあるビジネス上の意図を明確にすることで、組織としての方向性がブレにくくなります。
7. まとめ:「私たちは何を問い、何を探し求めているのか?」
クエリ(問い合わせ)は、データに質問を投げて答えを得る手段ですが、ソクラテス的問答のエッセンスを取り入れることで、「自分が何を本当に求めているか?」を掘り下げる姿勢を身につけることができます。
正しい問いが正しい答えを呼ぶ
どんなに性能の良いデータベースやツールを使っても、問いがズレていたら望む結果は得られません。ソクラテスが投げかけた「それは本当に正しいのか?」「その定義をもう一度考えよう」という問いを意識するだけで、クエリの書き方や分析の方向性が大きく変わるはず。クエリの最適化は“要件の再定義”でもある
時間がかかる、結果が膨大すぎる、目的が曖昧…そんなときは技術的な解決策だけに目を向けるのではなく、「そもそも何を知りたいの?」という根本的な問いに戻ってみましょう。思わぬ省エネ&適切な設計が見えてくるかもしれません。ビジネス全体でも“ソクラテスモード”が有効
組織内のコミュニケーションや意思決定の場面で、曖昧さや定義不足が原因でモヤモヤした議論が起こることは多いですよね。そんなときこそ、ソクラテスのように「なぜ?」「本当にそうなの?」と問いかけてみる。言いにくいこともあるかもしれませんが、問いを恐れずに投げることが、新たな発見や本質的な問題解決につながります。
「私は何も知らない」というソクラテスの名言は、ある意味とても謙虚な姿勢を表しています。データの前でも、私たち人間は時に大いなる無知をさらけ出すもの。でも、その無知を自覚してこそ、正しい問いを立て、正しい答えを見つけ出せるのかもしれません。
データの海に溺れるか、それとも賢く泳ぎ切るか。すべては問い方次第じゃないでしょうか?それではまたお会いしましょう!
参考文献・関連資料
白米FMとは?
日米のIT業界で働く小学校からの友人2人が、最新トレンドから古の哲学思想まで気ままに語り合う人文知系雑談ラジオ。
コテンラジオ、超相対性理論、a scope等に影響を受け、一緒に考えたくなるような「問い」と、台本のない即興性の中で着地点の読めない展開が推しポイントです。
移り変わりの速い時代だからこそ、あえて立ち止まり疑ってみたい人。
他者の視点や経験を通して、物事に新しい意味づけや解釈を与えてみたい人。
自分の認知や行動を書き換えて、より良く生きる方法を一緒に探求しましょう。
※ポッドキャストの文字起こし版へのリンクはこちら(LISTEN)