「読書してるのに変わらない…」と感じているあなたへ。僕らが見つけた、真の読書の価値
「読書、してますか?」――この問いにどんな印象を抱くかは、人それぞれですよね。
「本を読むのが大好きで、毎日の習慣になっている」
「興味はあるけど、忙しくて積読が増えるばかり…」
「正直、本なんて読まなくても生きていけるでしょ」
しかし、読み方ひとつとっても、その後の行動や考え方がガラリと変わる可能性があるのが読書の不思議なところ。
今回の対話では、ただ“読む”だけで満足していないか? という観点から、インプットの先にある「読後の活かし方」をあれこれ掘り下げてみました。
アトミックリーディング、ショーペンハウアー、ピエール・バイヤールなど、多彩な読書論にも触れつつ、あなたにとっての“良い読書”とは何かを考えるヒントになれば幸いです。
※この記事は、日米のIT業界で働く友人同士で対話したポッドキャストの内容を元に文章化しています。実際の音声へのリンクは最後に掲載しておきます。
「読書」とは、そもそも何をする行為なのか?
インプットだけで終わってない?
「いやあ、この本すごく良かったよ!」と友人に熱く語ろうとしたけど、いざ内容を聞かれると「あれ、どこが良かったんだっけ?」と答えに詰まる――こんな経験、ありませんか?
実はこれ、僕も含めた多くの人たちが、“読んだら読書は終わり”と思い込みがちなせいかもしれません。アトミックリーディングの著者は、「読書とは“読んだあとになにをするか”まで含めて完結する」と指摘しています。
読んだ内容を誰かに話す
自分の仕事や生活で活かすアイデアに落とし込む
文章やブログにまとめ、アウトプットする
こうした後工程があってこそ、本を読んだ意味が“血肉”になるわけです。
読む目的は、単なる情報摂取ではない
多くの人は本を手に取るとき、漠然と「いいこと学びたい」「面白そう」と思って読み始めますよね。でも、読み終えて行動に活かさないままだと、その“学び”はすぐに霧散してしまいがち。
だからこそ「ただ読む」だけではなく、自分は何を求めて読むのかを意識し、行動や思考の変化につなげるところまでが読書だ――これがアトミックリーディングの基本姿勢なんです。
アトミックリーディングの主張:読んだ内容を“自分の言葉”に変える
(1) 読む前に「アウトプットするぞ!」と決める
「この本を読んだら、誰かに話そう」「ブログにまとめよう」と思っておくだけで、驚くほど読み方が変わります。必要なところに自然とアンテナが立ち、自分の頭で噛み砕こうとする力が働くのです。
(2) 読みながら、“自分の言葉”でメモ
引用文をコピペしただけでは、自分の中で咀嚼しきれていない
なぜ重要と思ったか、どんな気持ちになったかを 自分の言葉 でサッと書き添える。この少しの工夫が、10年後に見返しても「ああ、こういう文脈で響いたんだ」と思い出しやすくするカギ。
(3) “アトミックノート”で使い回しやすく
1つの本から得た気づきを、「Aのテーマ」「Bのトピック」など細かく分割してメモするのが“アトミック”な方法。すると、後で別の本と組み合わせたり、自分のアイデアと合体させたりしやすくなる。
プログラムのモジュールのように、再利用・再配置が自在
点と点を線でつなぎ、新たなアイデアが生まれる
メリットとデメリット
メリット: “頭で噛み砕く”習慣がつく、読書後に語りやすい、アイデア再利用がしやすい
デメリット: 時間や手間がかかる、細かい“粒度”の設定が難しい、全ての本にやってると疲れる
ショーペンハウアー『読書について』:多読批判の逆説
「本ばかり読んでると、自分の思考がなくなる?」
19世紀の哲学者ショーペンハウアーは、エッセイ『読書について』で 「読むことばかりに時間を使うな」 と警鐘を鳴らしています。
他人の頭の中を追体験する行為が読書
それにのめり込み過ぎると、自分で考える時間が奪われる
「たくさん読む = 偉い」ではない
現代でも、多読が称賛されやすい傾向はありますよね。でもショーペンハウアーは逆に、「本を読まず自分の頭で黙考する時間こそ大切」と説く。
読む行為は悪ではないが、読む“だけ”で終わってしまうのは自分の思考を育てづらい
しっかりアウトプットなり、内省なりをしなければ意味が薄い
ポイント
これはアトミックリーディングの「アウトプット重視」と、ある意味似ている発想。読む“だけ”に満足せず、自分の考えをどう耕すかが本質だと、ショーペンハウアーは言っているのです。
『読んでいない本について堂々と語る方法』:読書の定義を揺さぶる
一見ふざけたタイトル、でも実は哲学書
フランスの文芸批評家ピエール・バイヤールは、「読んでいない本をどう語るか」という、一見“とんでもハウツー”みたいな本を書きました。
実際は「そもそも読書って何?」を問い直す哲学的内容
「一字一句読む=読書」という常識を揺さぶり、「ざっと眺めたり、人から話を聞いただけでも立派な“読み”の一形態では?」と提案
読むか読まないか、そのグラデーション
人は「読んだはずだけど、内容を忘れてる」「あらすじだけ知っている」「飛ばし読みした」など、多様な“曖昧な読書状態”を抱えている。この本は、それを恥じることなく認めるアプローチを勧めるわけです。
ポイント
全ての本を完璧に読むなんて不可能。それでも“本がどういう位置づけか”を把握するだけで、必要な知識をカバーできる、という逆説を示しています。
じゃあ「良い読書」って何だろう?
目的は人それぞれ——自分は何を求めて読むか?
誰かに語るため: 読書会やブログなどでシェアしたり、コミュニケーションのネタにしたり
自分の思考を耕すため: ショーペンハウアー的に、深く考えるための材料にする
楽しむため: 小説や漫画を純粋に娯楽として味わう
仕事や研究の素材: 引用したりアイデアの源泉にしたり
どれが正しい・間違っているではなく、「自分がこの本を読む動機」は何か? と明確にするほど、読書体験も充実しやすくなります。
問いがあると読書が深まる
ただ情報を眺めるだけより、「こんな疑問に対して何か答えやヒントがないかな?」と意識して読めば、吸収度が全然違うはず。
なぜこのテーマに興味があるのか
どんな課題を抱えているのか
読んだ結果、自分はどう変わりたいのか
そんな問いを片隅に置くだけで、本の内容が自分ごと化しやすくなるんですね。
まとめ:「読む」だけじゃなく、どう活かし、どう考えるか
(1) 読む目的を更新し続けよう
アトミックリーディングのように「語る」ことをゴールにするのもいいし、ショーペンハウアーのように「自分の思索を育む」ことを重視するのもいい。ゴールは人によって違うし、同じ人でも時期によって変わります。読書のたびに「今回の狙いは何だろう?」と問う習慣があると、自分なりのスタイルが定まってきます。
(2) 多読至上主義は一つの錯覚
数をこなすことに満足するだけでは、「自分の思考」が薄いまま。本当に役立つ知識や刺激を得るには、ある程度立ち止まってアウトプット・対話・内省する時間が必要。一方で、“読んでいない本” に関しても、ざっと概要を知るだけで用が足りる場面も多々ある。何でも完読しなきゃいけないわけではありません。
(3) 読んだら、誰かに語ってみよう
「読みっぱなし」より、読後に誰かと感想を共有すると定着率が格段にアップします。特に「ここが面白かった」「自分はこう思った」を言葉にすることで、自分の理解もクリアになるし、相手とのコミュニケーションが深まる。これはビジネスだけでなく、人生のあらゆる場面でプラスに作用するはず。
最後に:あなたの次の一冊は何のため?
結局のところ、本の読み方に“絶対の正解”はありません。むしろ「どんな読み方が自分に合うか」「いま何を得たいか」を常に模索し、アップデートすることが肝心です。
アトミックリーディング的に、綿密なメモを取って後で“再利用”するもよし。
ショーペンハウアーに倣って、「多読を少し控えて思考の時間を増やそう」としてもよし。
ピエール・バイヤールのように、「全部を読まなくてもいい」と開き直るのだってアリ。
読むのが好きな人も、あまり得意でない人も、まずは自分の“問い” を意識してみてください。その問いを持つだけで、読んだ一冊があなたにとって何倍も価値あるものに変わっていくはずです。
さあ、あなたの次の読書はどんな目的で、どんなスタイルで挑みますか?
本を閉じた先に、どんな行動や思考の変化を生みたいですか? 一度そのゴールを思い描いてからページを開けば、きっと読書の世界はもっと豊かに広がることでしょう。
“読む”だけじゃない、新しい読書体験――ぜひあなたなりの楽しみ方を発見してみてくださいね。
こちらの記事の、元となった対話音声はこちら↓
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自分の認知や行動を書き換えて、より良く生きる方法を一緒に探求しましょう。
※ポッドキャストの文字起こし版へのリンクはこちら(LISTEN)