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インドの食文化のなかにイタリア人に欠かせない魅力を見つけた

イタリアとインド、一見するとまったく異なる文化を持つ両国だが、実は食文化には多くの共通点がある。彼らの食への情熱と、家族や友人との絆を深める手段としての料理は、地理的な距離を超えて「食に国境はない」という真実を思い出させる。エスプレッソとチャイ、ピッツァ窯とタンドール、リゾットとビリヤニという象徴的な料理や調理方法を通して、イタリアとインドの食文化の共通点とその魅力を探ってみよう。

まず、飲み物の例として、イタリアのエスプレッソとインドのチャイは、両国の食文化に深く根付いている。イタリア人がエスプレッソを片手にリズムのある一日をスタートさせるように、インド人はチャイを通して人々とコミュニケーションを取るのだ。
エスプレッソもチャイも、短時間で濃厚な風味を楽しむことができ、心を温めてくれる飲み物。エスプレッソはイタリアのカフェ文化を象徴し、忙しい日々のリフレッシュの一環として愛されてた。

一方、チャイはインドの家庭や街角で日常的に飲まれ、家族や友人との交流の場に欠かせないもの。どちらも、手軽に作れる飲み物でありながら、豊かな味わいと人々の心をつなげる役割を果たしている。

アシルワードのインド人シェフたちが自分用のチャイを入れている様子

チャイがインドで愛される理由はたくさんあるようで、調べた後にますます飲みたくなった。茶葉、牛乳、砂糖、そして様々なスパイスは、インドでは手に入りやすい身近な材料だし、手軽に作れる。簡単に作れるから家庭で手軽に楽しむことができる。まさしくエスプレッソと同じだ。アレンジの自由度も大事なポイントで、スパイスの種類や量、甘さなどを自分好みにアレンジできる楽しさがある。

次に、料理の調理法に目を向けると、ピッツァ窯とタンドールという異なる国の調理器具にも驚くべき共通点がある。ピッツァ窯で焼かれる薄くカリカリのピッツァは、イタリア料理を代表する食べ物だけど、その調理方法はインドのタンドールで作られるナンと非常に似ている。

どちらも直火の高温で焼き上げ食材の旨みを閉じ込め、香ばしい風味を引き出す料理だ。さらに、窯の形状や焼き方によって、食材に独特の焼き色が付き、見た目から美しさも楽しめる。このように、異なる文化から生まれた調理器具だけど基本的な発想は共通していて、歴史的にも人類が火を使って食文化を発展させてきた足跡がそこにはあるのだ。

ちなみに、僕がよく行っている金沢のインド料理店「アシルワード」では、タンドール窯の炭に火を入れる作業から一日の厨房仕事が始まるようだ。この話を聞いた時に、イタリアのピッツァ屋さんの朝の作業を思い出した。「アシルワード」のインド人シェフたちは、炭火の熱が窯全体に行き渡るのを待つ間にも次の仕事に取り掛かるけど、その傍には必ず淹れたてのチャイがあるという。エスプレッソを片手に人々が一日をスタートさせるイタリアと変わらない朝が、金沢にもあるというわけだ。

このスタイルと日常生活はヨーロッパに非常に似ている。外国人のお客様が多く、彼らがいつも満足気にしている理由は、アシルワードにしかない食事の空間かもしれない。

最後に、米料理の例として、イタリアのリゾットとインドのビリヤニは、どちらも米が主役の料理だけど、その調理法や味付けは異なる。リゾットは米をスープでじっくり煮込み、クリーミーな食感と素材の風味を楽しむ料理。

調理の様子

一方、ビリヤニはスパイスや肉とともに米を炊き込み、香り高い一品に仕上げる。異なる味わいを持ちながらも、どちらも米を大切に扱い、その一粒一粒を生かす調理法に共通点がある。そして、リゾットもビリヤニも、地域ごとの特色や家庭ごとのレシピがあり、それぞれの文化や歴史に根ざした料理であることも似ている。

イタリアとインドの食文化は、単に料理を楽しむだけでなく、人々が食を通してつながりを築くための重要な存在だ。「エスプレッソとチャイ」「ピッツァ窯とタンドール」「リゾットとビリヤニ」のように、異なる文化から生まれた食べ物や調理法は、「食の体験」を家族や友人と分かち合う大切さを教えてくれる。

食に対する視野を広げ、新しい味や調理法に対して好奇心を持てば、遠い国との距離もぐっと縮まるだろう。イタリアとインドという異なる文化を持つ国が、食を通じて共通の価値観を持っているのを知ったら、もっと世界を知りたくなるはずだ。食文化の探求は、国境を越えた文化の道を開いてくれている。

インドのチャイでもイタリアのエスプレッソでも、きっと最高の1日の始まりになるはずだ。


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マッシ|エッセイスト・ライター
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