マガジンのカバー画像

思い出の扉

33
運営しているクリエイター

2024年8月の記事一覧

【詩】1978年4月、上京

【詩】1978年4月、上京

1978年4月の上旬のことだった。
キャンディーズの解散コンサートを
テレビでしっかり目に焼付けてから
桜前線を追うようにぼくは上京した。

東京で新幹線から中央線に乗り換え
降りた駅が当時国電の新宿駅だった。
この街がぼくの東京デビューとなる。

一度も来たことのない街だったのに
まったく違和感を感じなかったのは
東京での生活の中心がこの街になる
という潜在的な予感があったのかも。

『迷い道』

もっとみる
【詩】19歳のお盆

【詩】19歳のお盆

一人前に恋をしてるんだよと
母が息子の秘め事を触れ回る。
まあ、お盆に恋の話なんてと
近所のおばさんが笑い出す。
仕事を探す方が先だろうがと
親戚のおじさんが怒り出す。
そもそも恋とは何であるかと
読経後に坊さんが語り出す。
その恋のお裾分けをせよと
仏壇のご先祖様が迫って来る。

【詩】サイダー1968

【詩】サイダー1968

ピチピチ、ピチピチ、
ピチピチ、ピチピチ、
宿題帳の横にあるサイダーが、
しきりにピチピチはねている。
この問題を解いたら飲んでやる。
そう心に決めてぼくは、
算数の問題をずっと見ている。

机の上には各科目の教科書と、
読書感想文の課題図書と、
何も書いてない二百字帳と、
噛みあとのあるエンピツと、
コンパスで名前を彫った三角定規と、
あまり使ってない分度器と、
無意味な消しゴムのカスでいっぱい

もっとみる