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「FINAL FANTASY VII REBIRTH」(Steam版)感想 / 外観だけはきれいにまとめられたパワポ資料を読んでいるようなゲーム

おおよそプレイ時間110時間を超える旅が終わったので、感想を記録。

ネタバレあります。特に最終章についての言及を含みますので、ご注意ください。

約1ヶ月、これだけみっちりやり込んだのだから、つまらなかったわけはない。FF7ユニバースという箱庭いっぱいに詰め込まれたアメニティを、心ゆくまで楽しんだと思う。

それについては満足だったが、なんというか、どこまで行っても80点という感じで、ひたすら金と手間暇をかけた料理を食わされたんだけど、「新しさ」とか「創造性」が本当に皆無。

やたらと外観だけはきれいにまとめられているけど、中身はそうでもないパワポ資料を読んでいるような気持ちになった。たしかに丁寧に作られているから読みやすいし、きれいなデザインに目も喜ぶんだけど、「なにか意見がありますか?」と問われると内容が薄くて答えに詰まる、という経験はないだろうか。

細部まで作り込まれたグラフィックやゲームの挙動から、勤勉なスクエニ社員たちがとてもがんばったのは嫌と言うほど伝わってくるんだけど、感嘆できるのはその「作業量」という感じで、いかにも大企業の物量を見せつけられたに過ぎない。

どこかで見たゲームシステム、どこかで見たミニゲーム、どこかで見たオープンワールドのフォーマット。そんじゃそこらのゲームと違うのは、投入された予算と人員規模のスケール感。そこに和製ゲームの丁寧な仕上がりが加わって、間違いなく上質なんだけど、「新しさ」がどこを見てもない。

暇つぶしのツールとしては、とても満足できるのだけど、クリエイターの創造性を通して、人生の価値を高めたいというようなアートに求める部分は全く満たしてはくれない。作品というよりは商品。そんな印象だ。

そしてストーリー、ね。

散々コクーンのファルシのルシがうんたらかんたら言われているから、今回のリメイクは良い意味で王道のエンタメに寄せてきているのかな、と思ったら、終盤に行けば行くほど「考察」を要求してくる作り。そういうおじさん臭いシナリオはもうお腹いっぱい。

考察とか謎解きを求めてくるのであれば、シナリオにあっと驚くミステリ的な仕掛けがほしい。まずは完璧に騙されたい。作家との知恵比べに敗北したい。そして「参りました」と頭を垂れながら、細部まで作り込まれた世界観や謎を考察させていただきたい。

なんだか全くリスペクトできない作家からとってつけたような考察を要求されても、なんでこっちがそんな労力を強いられなければならないんだと、反発心が生まれてくる。

騙しも、トリックも、仕掛けもないストーリーテリングに、考察要素をぶっこまれても、ただただ分かりづらいだけでストレス。最後の最後にエンタメを放棄されて、がっかりした。

エアリスに突き立てられた刀を、ついにバチコーンと弾き飛ばす様を見られたカタルシスが、直後のシーンから作家の自慰が満を持したかのようにスタートすることで一気に失速。こういうところがいかにもスクエニ。そこまで次作品の売上を落としたいのだろうかとがっかりしてしまったよ。

あまり関係ないけど、ドラクエ10のver.6のシナリオも「最後の最後で急失速」という展開で、当時公式サイトのコメント欄が炎上していて、大企業の異なる制作ラインを十把ひとからげにはできないとわかりつつも、「スクエニ…」と唸ってしまった。

すごく勤勉で、上からの指示通りに圧倒的な作業量を提供する若手社員が作った上質な舞台の上で、老害な作家やディレクターが自慰を始めた。またスクエニのゲームにそういう印象を持ってしまった。

昨今のスクエニの良い部分と悪い部分を、煎じて煮詰めたかのような象徴的なゲームだったと思う。


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