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糸をほどいて、心を紐解く。

糸を、指で編んでいく。
一目ひと目、地道に。…でも、着々と。
そして少しずつ、形が出来上がっていく。

出来上がったモチーフにパーツをつけて、チャームが完成する。
それをバッグに付けてくれた人がいる。
自分で作ったものを、誰かが身につけてくれた時というのは
作業にかけた時間も、込めた想いも、我が子のような作品そのものも、全てまるっと肯定してもらえたような気持ちになって、ふわふわと頬の熱が上がっていくようだ。

この気持ちを知ったのは、ハンドメイドを本格的に始めた、つい最近のこと。

今年は
「新しい気持ちを一つ知った」というだけで
「いい一年だった」と言ってもいいかもしれない。


ハープとピアノの作業用BGMを流しながら編み物をしていた、ある午後のこと。

…知らぬ間に、糸が絡まっている。

私はそのこんがらがった糸の塊を見て
少し前まで使っていた、コードの付いた“イヤホン”のことを考えていた。


イヤホンコードと人


最近はワイヤレスのイヤホンを使うことが多くなっているけれど
その分「どこかへ行ってしまった」と探す頻度も上がったような気がする。

コードの付いたイヤホンを使っていた頃。
バッグに入れる時、いくら丁寧にまとめても
バッグから取り出す時、なぜか絡まっていることがある。

…いつだったか
その様子が、「人間関係も、そんなものかもしれないな」というようなことを誰かが言っていた。

知らないうちに、こんがらがっている。
目に見えないところで生まれた小さな絡まりが、なかなかほどけない、複雑な絡まり方になってしまっている。


…そんなことを思い出しながら、手を動かす。

複雑に絡まった糸が、なかなか解けない。

解き方を失敗すると、新しい結び目ができてしまい、さらに複雑になってしまう。

私は根気強く、固く結ばれているところを見つけては、ひとつひとつ、解いていく。

時々、深く息を吐く。

一体いくつのコマ結びや玉結びがあったことだろう。


小さな結び目の集合体だ


糸をほどくうちに
思考はどんどん脱線して、どこまでも深くなっていく。
でも、複雑な糸とは対照的に、シンプルな結論に至ったことがある。

「複雑に絡まった糸の塊」は
「小さな結び目が、たくさんある」という状態だったりするのだ。

…そう思うと、ちょっとだけ頭の中が整理されたような
すっきりした心地になった。

きっと
「なんだ。どんなに複雑になっても、ひとつひとつ、地道に解けばいいだけじゃないか」という風に思えたのかも知れない。
同時に
「どんなに小さな絡まりも、無視し続けてはいけない」というような気がした。

そして、最近少し、頭の中がごちゃごちゃしていたことに気づいた。


小さなもの


心の中に、得体の知れない“モヤモヤ”が広がったり
小さな傷が、気づいたら知らないうちに“深い溝”となっていたり

結局いつも限界を迎えそうな時は
振り返ると、糸でいうところの小さな結び目のような
“小さなもの”の積み重ねが原因だったりするような気がする。

だったら

何かを感じたその“小さなもの”に対してその都度
軽く見ないで、向き合っていけたらいいなと思う。

“自分の心”だけじゃなくて
“誰かとの関係性”や
“何かを感じた言葉ひとつ”にしても。


糸みたいに、まだ解けるうちは大丈夫だ。


あまりに絡まりすぎると
複雑になって
一番最初の小さな結び目が見えなくなって
もともと何がきっかけなのかも
本当の気持ちも
どんどん見えなくなっていってしまう。

…そんな気がした。


糸が解けたら、また次に進める。

完成したら
達成感と共に、あの喜びが待っている。


最近

誰かの気持ちを優先したい。
でも、自分の気持ちを無視したくない。

そんな狭間で揺れ動く日々が続いていた。


絡まった糸を解きながら、手芸に没頭していたら
ふっとよぎった考えや気持ちが頭の中を駆け巡り
結果、少し頭の中がクリアになった。

大丈夫。
一見複雑そうに見えるこの気持ちも
書いて消化できるうちは、大丈夫だ。


2024年がもうすぐ終わる。

「これまでで一番、一年が早く感じた」

と、毎年感じているような気がして
それはつまり、年々、“一年の体感スピード”を更新し続けているということだ。

きっと来年は、今年よりもさらに早く感じるのだろう。

…1日1日を、しっかり覚えていたい。


今年新たに出会えた人、作品、言葉、気持ち。
たくさんの繋がった縁に感謝だ。

たくさんの「ありがとう」を込めて。



2024.12.31

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