『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』
意識の転換。
『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』 ハンス・ロスリング オーラ・ロスリング アンナ・ロスリング・ロンランド
ここ数十年間、わたしは何千もの人々に、貧困、人口、教育、エネルギーなど世界にまつわる数多くの質問をしてきた医学生、大学教授、科学者、企業の役員、ジャーナリスト、政治家―ほとんどみんなが間違えた。みんなが同じ勘違いをしている。本書は、事実に基づく世界の見方を教え、とんでもない勘違いを観察し、学んだことをまとめた一冊だ。(Amazonより)
冒頭にあるテストから盲点突かれてる感じで面白そうという第一印象。今までの自身の考え方とは全く違う視点からの、ただ独創的なのではなく、事実に基づいた考え方で新鮮だった。
ほとんどの人が「世界は実際よりも怖く暴力的で残酷だ」と考えているが、様々な思い込みに気づき脱し、ドラマチックすぎる世界の見方を変えることが重要。
①分断本能
「世界は分断されている」とう思い込み
人は誰しもさまざまな物事や人々を2つのグループに分けないと気が済まない。そして、その2つのグループの間には決して埋まることのない溝があるはずだと思い込む。
しかし、いまや世界のほとんどの人々は中間にいる。世界人口の75%は中所得の世界に住んでいる。「豊かな国」「貧しい国」などの分断はもはや存在せず、ありもしないそれらの強調はやめるべき。
また、ほとんどの人が想像するほど低所得の暮らしは苦しくなく、人口も多くない。世界は2種類以上の暮らしがあり、所得に応じて1〜4のレベルに分けられる。そして、大半の人はレベル2〜3に属している。
本能の抑制方法
「データ比較」「極端な数字の比較」「上からの景色」に注意し、大半の人がどこにいるか探す。
②ネガティブ本能
「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
数値の差が10%程度かそれ以下である場合、その差を基になんらかの結論を出すことには慎重になるべき。
ネガティブ本能を刺激する要因は3つ。①あやふやな過去の記憶、②ジャーナリストや活動家による偏った報道、③状況がまだまだ悪い時に「以前に比べたら良くなっている」と言いづらいっ空気。
本能の抑制方法
・「悪い」(現在の状態)と「良くなっている」(変化の方向)は両立すると考える。
・悪いニュースの方が広まりやすいと気づく。
③直線本能
「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
2100年の子供人口は20億人で現在と変わらない。
極度の貧困率がこのまま下がり続け、性教育や避妊具が広まれば、人口はいずれ横ばいになる。ただし、貧しい子供を助けないと、労働力の確保や病死の危険性回避のため人口はひたすら増え続ける。
本能の抑制方法
グラフの形にはたくさんの種類(直線・S字・滑り台・コブ・倍増)があることを心しておく。
ほかのレベルの線が同じ形をしているとは限らない。グラフで示されていない部分がどうなっているか不用意に憶測しない。
④恐怖本能
危険でないことを恐ろしいという思い込み
人が情報を選ぶ際には優先順位があり、物語形式で伝えられる情報はドラマチックに聞こえ、「関心フィルター」をすり抜けやすく優先してしまう。恐ろしいものには自然と目がいってしまう。
「身体的な危害」「拘束」「毒」はレベル1〜2の人には確かな恐怖だが、レベル3〜4の人には、それらへの恐怖心は逆に足を引っ張るものになる。
本能の抑制方法
見出しの影に隠れている事実に目を向ける。
→自然災害による死亡者数は、100年前と比べて半分どころか25%になっている。
恐怖本能は諸刃の剣。この本能のおかげで世界中の人々が助け合うことができ、人類の進歩に繋がる。一方、このせいで「年間4,000万機もある無事に着陸した飛行機」にも気づかないし、「年間33万人もの下痢で亡くなる子供たち」がテレビに映ることはない。
福島の原発事故やDDT(殺虫剤)など、規制が厳しくなる理由の多くは死亡率ではなく、恐怖によるもの。目に見えない物質への恐怖が暴走し、物質そのものよりも規制のほうが多くの被害を及ぼしている。
しかし、テロだけは年々増え続けている。レベル4の国では減っており、そのほかの国では犠牲者が大幅に増えている。アメリカでは酔っぱらいに殺される確率はテロリストに殺される確率より50倍高い。
リスク=危険度×頻度。「恐ろしさ」はリスクと関係なく、恐ろしいが起きる可能性が低いことに注目しすぎると、本当に危険なことを見落としてしまい、判断力を鈍らせる。本当に危険なことを察知し大切な人を守るためには、恐怖本能を抑えて死亡者数を見極めること。恐怖に感じるということはリスクが有るように「見える」だけ。一方、危険なことには確実にリスクが有る。
⑤過大視本能
「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
・数字をひとつだけ見て、「この数字はなんて大きいことか」とか「なんて小さいんだ」と勘違いしてしまう。
・ひとつの事例を重要視しすぎてしまう。
本能の抑制方法
「比較」と「割り算」
・「ひとりあたり」を見る。
・最も大きな数字に注目する。
量ではなく割合を計算する。その後で数字が重要かどうか判断すればいい。
⑥パターン化本能
「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み
人間は無意識にいつも何も考えず物事をパターン化し、それをすべてに当てはめてしまう。また、ほんの少数の例やひとつだけの例外的な事柄に基づいて、グループ全体の特徴を勝手に決めつけてしまう。間違ったパターン化は思考停止に繋がり、あらゆる物事への理解を妨げてしまう。
本能の抑制方法
分類は必要だが、間違った分類に気づき、より適切な分類に是正することが重要。
・より適切な分類を見つける(「ドル・ストリート」)。
・分類を考え直す。
1.同じ集団の違いと、違う集団のあいだの共通点を探す。
人の行動の理由を国や文化や宗教のせいにする人がいたら疑ってかかったほうが良い。
2.「過半数」に気をつける。
「過半数」とは半分より多いという意味でしかなく、51%かも99%かもしれない。具体的に何%なのかを聞く。
3.「例外」に注意する。
4.自分が「普通」で、自分以外はアホだと決めつけない。
5.ひとつの集団の例をほかの集団に当てはめていないかを振り返る。
⑦宿命本能
「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
持って生まれた宿命によって、人や国や宗教や文化の行方は決まると考えてしまう。
しかし社会と文化は岩のように動かないものではなく、また西洋以外の変化のスピードは西洋よりもはるかに早い。
本能の抑制方法
・ゆっくりした変化でも変わっていないわけではない。
・積極的に知識をアップデートする。
・おじいちゃんやおばあちゃんに話を聞く。
・文化が変わった事例を集める。
⑧単純化本能
「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
世の中のさまざまな問題にひとつの原因とひとつの解答を当てはめてしまう。
これは「政治思想」と「専門知識」のせいである。
その道のプロは、その道のことしか知らないし、自分が注力してきた社会問題を実際より大げさに語る。専門知識が邪魔をすると、実際に効果のある解決法が見えなくなる。自分が肩入れしている考え方の弱みをいつも探し、様々な角度から世界を見たほうが良い。数字だけが全てではない。
また民間か政府かという議論への答えは殆どの場合二者択一ではない。ケースバイケースだし両方正しい。判断と自由のちょうどいいバランスを見つけることが大切で難しい。
キューバは貧乏人の中でいちばん健康で、アメリカはは金持ちの中でいちばん不健康。
本能の抑制方法
・自分の考え方を検証する。
・知ったかぶりをやめる。
・単純なものの見方と単純な答えには警戒する。
⑨犯人捜し本能
「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
なにか悪いことが起きたとき、単純明快な理由を見つけたくなってしまう。個人なり集団なりが実際より影響力があると勘違いをしてしまい、事実に基づいた本当の世界を見ることができなくなってしまう。
世の中でいちばん悪者扱いされるのは、あくどいビジネスマン、嘘つきジャーナリスト、ガイジン。
本能の抑制方法
物事がうまくいかないときには、犯人を捜すよりシステムを見直したほうが良い。
うまくいったときは社会基盤とテクノロジーという2種類のシステムのおかげと考える。
⑩焦り本能
「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
恐れに支配され、時間に追われて最悪のケースが頭に浮かぶと、人は愚かな判断をしてしまう。一刻も早く手を打たなければという焦りから、冷静に分析する力が失われてしまう。
本能の抑制方法
必要なのは総合的な分析、考え抜いた決断、段階的な行動と慎重な評価。
・危機が差し迫っていると感じたら、最初にやるべきなのは「オオカミが来た!」と叫ぶことではなく、データを整理すること。
・不確かであることを認めない予測は疑う。
・ドラマチックな対策よりも、大抵は地道な一歩に効果がある。
◉日々の生活でのファクトフルネスの実践
「謙虚さ」と「好奇心」を持つことを子供たちに教える。
謙虚さとは、本能を抑えて事実を正しく見ることがどれほど難しいかに気づくこと。謙虚になると心が楽になり、何もかも知っていなくちゃならないというプレッシャーがなくなり、いつも自分の意見を弁護しなければと感じなくていい。
好奇心があるということは、新しい情報を積極的に探し受け入れるということ。いつも何か面白いことを発見し続けられる。
「事実に基づいて世界を見ることが人生の役に立つ。それは心を穏やかにしてくれる。」
個人的にまとめるとこんな感じでした。
どっちの立場(悲観・楽観)に立ち気味な人でも、事実の正しい認識として読んだほうがいいテーマばかり。しかも本能の抑え方自体は極めてシンプル。
すんなり受け入れられるところと、「本当かな?」と考えを改めにくい箇所があって、そうやって考えることに意味がある気がする。
特に印象的だったのは、「悪い」は現在の状態で「良くなっている」は変化の方向であり両立するってこと。日々の出来事やニュースを見聞きするときには、今までの固定観念から抜け出して、冷静に謙虚に考えることから始めたい。
現在の新型コロナウィルスの危機についてはどう考えているのか気になる。