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『卵の緒』
やっぱりこの人ものすごい。
『卵の緒』瀬尾まいこ
捨て子だと思っている小学校4年生の育生、妙ちきりんな母親、そのとぼけたボーイフレンド、不登校の同級生、血の繋がらない親子を軸に、「家族」を軽やかなタッチで描く。坊ちゃん文学賞大賞受賞作に書き下ろし1編を収録。(Amazonより)
『そして、バトンは渡された』でドハマリした作者。その原型とも言えるような物語だった。
熱さも高揚も絶望も悲しみも希望も、わかりやすく目立っているものはなく、淡々と過ぎ行く季節の中で、傍から見たら複雑な境遇の渦中にいる登場人物たちが、力みすぎず毎日を生きている。そんな平熱のような文章なんだけど、読んだ後に心に残るというよりは、流れるように読むときにしか味わえないような面白さがそこにはある。
何かの気付きや経験を得たりするのではなく、読書という行為そのものを味わうのにこれほど適した作品はないんじゃないかと思う。
描き下ろしの『7's blood』も併せて、何気ない表情で、「家族」の大切な構成要素を感じさせてくれる一冊。