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『十字架のカルテ』
楽しさだけではなかった。
『十字架のカルテ』知念実希人
心の闇を暴くミステリーの新境地!罪を犯した本当の理由とは―精神鑑定医・影山司が繰り広げる、究極の頭脳戦。(Amazonより)
ほとんどの作品を読んでるし、この作者で医療ミステリーの面白さを知ったけど、今作はミステリーとしての面白さだけではなく、自問自答しなければいけない苦味もあった。
珍しい病気も出てこないし、天才の活躍がメインでもない。奥の奥まで覗く頭脳・心理戦も面白いけどそこが核でもない気がする。
物珍しくて知らないことを知ったような気分になるのは、社会人として、大人として知って置かなければいけない精神疾患についての理解が足りていないからだと感じた。
福祉に携わってたこともあるから多少は理解している気がしていたけど、精神疾患であることと犯罪を犯すような異常者はもちろんイコールではないし、うつ病と統合失調症の違いなど、立ち止まって考えれば判断がつくことが、作中のような日常で偏見なく対応できるかと言われると自信がない。
すべての章のエピソードは精神科病棟の現場では多分日常的なことで決して特別なことでない。そして弓削のように医療従事者が悩みに悩んで答えを見出したとしても、精神病患者を取り巻く環境が全て好転するわけではなく、社会全体の問題なんだと痛感した。
派手な展開だけではない作者の新たな魅力が詰まっていてとても良かった。