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『ジンセイハ、オンガクデアル LIFE IS MUSIC』
知らなかった一面とより鋭い切れ味。
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『ジンセイハ、オンガクデアル LIFE IS MUSIC』ブレイディみかこ
『アナキズム・イン・ザ・UK』の後半部に大幅増補。待望の文庫化!
貧困、差別。社会の歪みの中の「底辺託児所」シリーズ誕生。著者自身が読み返す度に初心にかえるという珠玉のエッセイを収録。
貧困層の子どもたちが集まるいわゆる「底辺託児所」保育士時代の珠玉のエッセイ。ゴシック文学的言葉を唱え人形を壊すレオ。「人生は一片のクソ」とつぶやくルーク。一言でわたしの心を蹴破ったアリス。貧窮、移民差別、DV。社会の歪みの中で育つ、破天荒で忘れがたい子どもたち。パンクスピリット溢れる初期作品。映画・アルバム評、書評を収録。(Amazonより)
自分にあまり馴染みがないってのもあるけど、第2章の海外を中心とした映画・本・音楽の評は、今までの作品では深く知ることはできなかった、著者のそれらの分野に対する造詣の深さというか、作品の深掘りの仕方や他の事象へとの結びつけ方が見事だった。むしろ本来はこっちが本当の姿なのかもしれないけど。
順番逆になったけど、第1章の「底辺託児所」編は、昔の文章ってこともあるけど、さらに遠慮のない文章というか、何も着せなず抜き身のまま綴っている感じがして面白かった。それは著者の日常世界に、オブラートに包めないハードさが至る所にあるからだろうけど。
そしてその紛れもない現実から鋭い洞察力で得る見識は読み応えがある。『BROKEN BRITAINーその先にあるもの』『ガキどもに告ぐ。こいのぼりを破壊せよ』『さらば、底辺託児所』は特に好きだった。
そして、あとがきに書かれているように、この頃の文章に嫉妬を覚えているというところに著者の熱量をとても感じた。
”「餅は餅屋に」とよく言われます。
が、ティーンの頃にパンクのDIYスピリットにやられてしまったわたしにとっては、餅屋が焼かない餅こそすべてだったはずなのです。”
続編の『オンガクハ、セイジデアル』も早く読まなければ。