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『エンディングドレス』蛭田亜紗子

こういう丁寧さ大好き。

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『エンディングドレス』蛭田亜紗子


夫に先立たれた麻緒、32歳。自らも死ぬ準備をするため“死に装束を縫う洋裁教室”に通い始める。20歳の時に気に入っていた服、15歳の頃に憧れていた服、自己紹介代わりの服…。ミステリアスな先生による課題をこなす中で、麻緒の記憶の引き出しが開かれていく。洋裁を通じてバラバラだった心を手繰り寄せた先に待つものは?「本当の自分」と「これからの自分」を見つける、胸打つ傑作小説。(Amazonより)


最愛の相手を亡くし、自ら終わりを迎えようとしている主人公が偶然出会った「死に装束を縫う洋裁教室」。そこに集う人たちはそれぞれの過去を経て一見後ろ向きなその教室に通って、開いている。

他者が自分に対してどういう気持ちを抱いていたか、その真意や思いやりには気づきにくい。服を縫うという原始的な、自らの心をも整え再び形作る行為を通じて、過去への精算と過去があったからこその現在を認識し、いつから迎える終わりを意識しつつ進んでいく未来に一本の筋が通っていく。

服が好きな人間として、丁寧な服作りの描写も心惹かれたし、意外にも途中で亡き夫との過去に一種の踏ん切りをつけ、主人公本人の現在と未来を描いていく展開が良かった。最期の言葉のような緊急連絡先に記す人物や事柄が増えていくっていうのも、主人公の変化を反映していてグッと来た。また服飾の良い面ばかりではなく低賃金労働などの問題を指摘している点もキレイ事ばかりではなくしっかりと現実に向き合っているようで交換が持てた。

個人的にはこんな出会いや別れをまだ経験していないけど、なにかをきっかけに誰しもが心の支えになりうる作品だった。

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