『夢は捨てたと言わないで』
期待以上の盛り上がり。
『夢は捨てたと言わないで』安藤祐介
27歳、元甲子園球児。地元の期待を背負い、プロ野球選手になるも戦力外通告。故郷から逃げ、今はスーパーで働く普通の男。それでも、人の夢を後押ししたい。35歳、お笑い芸人。芸歴15年。バイトしながら妊娠中の妻と安アパートで暮らす。売れなければ、もう食っていけないかもしれない。それでも、夢は諦めない。お笑いがなくても人は生活していけるし、世の中は回る。でも芸人がいない世界より、芸人がいる世界の方がずっと楽しい。憂鬱な気分も笑い飛ばす、感動の逆転劇!!(Amazonより)
この前に読んだ『本のエンドロール』が素晴らしすぎてかなりハードルが高いまま読み始めた。最初は結構ドタバタする感じなのかと、ちょっと期待してたのとは違うかなと思ったら。
ストーリーも、作中の漫才も、普段の会話のやり取りも、スピード感よくグイグイのめり込んでいった。漫才は素直に読みながら笑ってしまった。大麻ネタ最高。
しかも笑えるだけではなくて、現時点への葛藤や不満、成功しようとする仲間への羨望や妬み、振り切って切り捨てるように見せることで最後のもうひと踏ん張りの実力が足りていない点など、色んな感情を抱えた上で笑いや人生に挑んでいる登場人物の姿に胸が熱くなる。
めちゃくちゃ鬼気迫る勢いでやっているけど本人たちが面白いと思えていない点など、他の仕事にも通じるひとつのことに対する向き合い方を感じ取れた。
どんどん昇っていく姿も、こんなうまくはいかないよなって思う点も、結局はすべて叶うわけではないよなってところも全てひっくるめて人生だなって感じられる。たとえ破れたとしても人生と夢は自分から捨てない限り続いていく。彼らは決して純粋な成功者ではないけど、決して失敗者ではないしこれからも挑戦者である。
表紙もタイトルも最高だし、勤め人×芸人ってのも新鮮だし、色んな人に読んでほしい作品。漫画の『べしゃり暮らし』好きな人とか特に。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?