熱いプレゼンで実現した、初めての社員発ブランド「MIESROHE (ミースロエ)」ディレクター兼デザイナー 坂上典子 (後編)
こんにちは、マッシュnote編集部です。
今回は2022年にマッシュの新しいブランドとしてスタートした「MIESROHE」のディレクター兼デザイナー坂上典子さんのインタビューの後編をお届けします。
前編はこちらから→熱いプレゼンで実現した、初めての社員発ブランド「MIESROHE (ミースロエ)」ディレクター兼デザイナー 坂上典子
Mila Owenで現役デザイナーとして活躍していた坂上さん。「これから自分自身が着たい服」を形にするべく、そのイメージやデザイン、世界観をノートやイメージマップに表現していました。上司からの打診もあり、その想い、考えを社長にプレゼンすることに。新しいブランドを設立するまでにどのような舞台裏があったのか。またブランドをスタートしたことでどのような変化があったのかを語っていただきました。
社長に想いを伝えるプレゼンを実施
ー準備万端で臨んだ社長へのプレゼンはどうでしたか?
実は本番で頭が真っ白になってしまったんです!社長とは会議などで顔も合わせていたし、もちろん話したこともあったので、緊張はさほどしないだろうと思って臨んでいました。でもいざ席に座ってパッと社長を見たら、真剣に聞こうとしてくださってる佇まいや眼差しに圧倒されてしまって。何も喋れなくなってしまいました。何度も練習して話すことも決めていたのに、一気に飛んでしまったんです。
多忙な中、貴重な時間をやっともらうことができ、気合を入れて来たはずなのにどうしよう、と。とにかく資料をひと通り読むのが精一杯でした。あとは、ご納得頂いているかな?と表情を伺いながら進めていく感じで。「私はこれをやりたい」「新たにブランドを作りたい」という話ではなく、ただ自分が強く思っていること、感じていることをストレートに伝えました。
ーブランドの設立はスムーズに決まったのですか?ー
プレゼンを終えて社長からは「じゃあ次はこの世界観を出すための資料を持って来てみて」「では次回はイメージに合うサンプルを見せて欲しい」と具体的なリクエストをもらいながら何度もミーティングを重ねていく感じで進んでいきました。イメージを可視化していくために必要なものを揃え、アドバイスを頂く。それを繰り返し、その延長線上にブランドのデビューが決まったという感じです。プレゼンから約1年程かかりました。その間もMila Owenのデザイナーとしての仕事は続けていたのですが、周りのメンバーがすごく協力してくれたおかげで両立できていました。本当に感謝しかありません。
いよいよ新ブランドのスタート
ー実際にブランド「MIESROHE」をスタートしていかがですか?
アイテム1つ取っても、もう語り出したら止まらないという感じです。伝えたいポイントがあり過ぎて。こんなに言葉って溢れ出てくるもんなんだ、こんなに説明してもまだ足りないと感じるんだ、と自ら作ったものに対する熱い想いを改めて認識しました。大切な服って本来そういうものなのかもしれないですね。
例えば今日、編集部の方に今着ていただいているこのトップスは(←取材日に編集部・岡村が着ていたMISROHEの服を指して)少し透け感がありますが、腕まわりや袖部分の形にゆとりを持たせているので、インナーに大胆なデザインのものを着ていただいても、バランス良いコントラストになって素敵です。タイトな着こなしに抵抗がなければ、裾をパンツに入れても可愛く着れます。
またパンツは、ウエストのゴム部分をタブ(サイズを調整するための装飾)で隠しています。ウエストを楽に履きたいけどゴムがチラッと見えるのは、何だかオシャレな感じがなくなってしまうなと。そこでタブを付けました。元々イージーパンツのようにリラックス用ならいいんですけど、この素材は「そもう」と言ってスーツ生地に使われるものを使用しています。なのでピリッとしたスタイルに決めるには、カチッとしたベルト風のデザインの方がマニッシュでかっこいい。じゃあウエストのゴム部分を隠してしまおうと、このテザインしました。
やっぱりMIESROHEの服を着たい方って、ただイージーだけじゃなくてどこからしらモードさとか、女性らしさとか、シンプルの中にもそういう気分というか雰囲気が欲しいという方が多いので、素材やパターンにはもの凄くこだわっています。でも履き心地は絶対に良くしたい。なのでこのパンツは30、40代女性の体型だと肋骨の下あたりが一番細いので、そこに合わせてハイウエストにしています。
仕事をする上でのこだわり
ー仕事をする上で大切にしていることは?
今の自分はブランドを牽引していくという立場なので、健康面も含めた自己管理はしっかりやっています。以前はブランドのトップディレクターがいて、その中のいちデザイナーだったので、どこか「自分のペースで頑張っていればいいのかな」と個人プレーのような感覚がありました。ですが今は自らがブランドを運営し、約10人のチームをまとめながら部下のデザイナーたちと一緒にやっていくという役割になり、プロ意識が芽生えてきたと実感しています。だからこそ、いつも良いパフォーマンスができるよう「余白」を作るようにしています。
ー「余白」とは?
自分のための時間や思考のゆとり、みたいなものです。ブランドをやっていくうえで常に様々な情報のインプット、多くの人とのコミュニケーションなどで多忙になりがちなのですが、それが一定のラインを超えてしまうとフリーズしちゃうんです、脳が。何も出てこなくなって、固まってしまうというか。自分もデザインをやっているし、時間もないし、という状況で心の余裕がなくなってしまうと、部下のデザインをしっかり見てあげられなくなることも…。人との対話も相手のことを考える余裕がないので円滑にいかなくなったり、デザインを考える視野も狭くなって、良いものができなくなったり。なので私の中でプロ意識とは「余白を作ること」です、本当に!
ー具体的にはどのように「余白」を作っていますか?
例えば絶えず考え続けている頭の中を一旦休憩させる、ということを意識的にやっています。サウナに行く、筋トレをする、などでしょうか。特にパーソナルトレーニングでは、何も考えられないくらい負荷をかけ、辛い状態にしているのでその間は仕事を忘れられるし、終わった時の爽快感が最高。
また、料理は筋トレと同じく頭が空っぽになるので好きなんです。ひたすら千切りしたり、手順を考えたり味見したり。
睡眠時間も7時間しっかり取っています。余白を作れるようになってからは残業もほとんどしませんが、その代わりオフィスには一番早く来ています。同業者の方は夜型が多く私もずっとそうでしたが、朝方にすると1日も長く感じるし疲労の回復も早く、精神面にも良いので私はこの働き方にしようと。
ー仕事のクオリティーを上げるために実践していることはありますか?
いろんなインプットを心がけてます。月並みですが、他のアーティストさんの作品に触れるのが、やはり一番刺激をもらえるので美術館はよく行きます。京橋のアーティゾン美術館、六本木の新国立美術館や森美術館、ギャラリー巡りも最近すごく好きですね。見たものが直接デザインに反映するということはあまりないのですが、次のシーズンの気分とか気持ちを考える時の源泉にしています。
MIESROHEはマッシュの中でもコンセプチュアルなブランドなので、毎シーズンのテーマを考える時に「こういう雰囲気の部屋で、こんな人たちと、こんなものを食べながら…」とイメージを作っていきます。「ユニバーサルデザイン」を謳っているブランドでもあるので、自然にも都会にも馴染む服、その人の人生や行動に自然と寄り添う服であることを大切にしています。
今後、挑戦したいこと
ーこれから挑戦したいことはどんなことですか?
未来のイメージというか、やってみたいことがあります。私は「デザインされた服を提供するだけでなく、服を着る人の人生も一緒に幸せできたらいいな」という想いがあります。ただ服だけを提供するのでは、ちょっと物足りないと感じていて。例えば私はアートが好きですが、アートに興味がない方でもMIESROHEを通じてアートの素晴らしさとか、クリエーションとか、人生を豊かにすることを感じてもらえたらいいなと。服という「モノ」だけでなく、目に見えないエモーショナルな部分や、世界観をもっと伝えていけたらと思っています。
編集部あとがき
坂上さんは、重ねていく年齢に合わせて変化する価値観や心の動き、物事の見方など様々なものを言葉でなく、その時々にデザインや絵にしてノートに書き記していました。そこに表現されたイメージの集大成が「MIESROHE」のブランドの世界観を創る糧になったとのこと。いつも平均点が取れてしまう自分を無個性だと感じ、それをコンプレックスと思いながらも、自身の感性と常に丁寧に向き合い続けてきた坂上さん。そんな彼女が新しい魅力を開花させながら素敵なブランドに成長させていく「MIESROHE」の未来がとても楽しみです。
*インタビューで「挑戦したいこと」として語っていたアートを通じたクリエーション企画が「MIESROHE・アートプロジェクト」として実現しました。その様子をMASHのYouTubeチャンネル「MASH CHANNEL」でご覧いただけます。普段見ることのできない企画制作の舞台裏も公開していますのでぜひご覧ください!
→MASH CHANNEL :【アートプロジェクト】MIESROHEディレクターの貴重な裏側を大公開!
MIESROHE公式HP
MIESROHE/インスタグラム
坂上典子/インスタグラム
MISROHEのブランドストーリー/MASH CHANNEL(YouTube) "Brand Philosophy "