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2024年11月26日(火)「有害鳥獣・猪肉に関するウンチク話」

今日の東京は朝方晴れ、午前遅くから曇り。先ほどから小雨。明日の明け方迄は雨のようです。
朝の最低気温は3.5℃迄低下、日中の最高気温は13℃弱。少々寒いお天気でありましたね。そりゃあ、11月も末に近付いてるんだから、この程度の気温は当然かと。さて、

昨日は「未利用魚・エツ」についてお伝えしましたが、今日は前回の鹿肉に続いて「有害鳥獣・猪肉に関するウンチク話」についてお伝えしたいと思います(冒頭写真は以前猟隊で獲ったヤツ)。

猪肉。
イノシシに関して言えば、要は豚のお仲間なので然程語るべきウンチクなんて無いんですけどね(笑)。
ただ、流石に人間に飼い慣らされて養豚場から出て来た豚肉とはチト訳が違うトコロもあるので、多少のご説明をしてみたいと思います。

マズは前回と同様に、旬。
本来であれば、我々がいつも口にしている牛だって豚だって、もしかしたら鶏にだって食って一番美味い時季、即ち旬ってモノはあるのだと思います。が、余りにもソレらの家畜はブロイラー化(と言うのかな?鶏で無い場合でも(笑))され過ぎてしまってて、我々今の日本人にはコレらに旬を感じて食す、と言うコトが無いのが常態化してしまってますね。
でも、野生のイノシシとなれば、前回ご説明の鹿と同様にチャンとした旬があります。コレについてもシカと同じように、発情期・出産期に深く関連してるんですね。
イノシシの交尾期は大体2月頃で、出産期は約4ヶ月の妊娠期間を経た5~6月頃。
従い、オスの場合にはシカと同様に交尾期前にいっぱいエサを食べて脂肪を溜め込み、交尾期に入るとメシも食わずにメスを追っ掛け(従い、交尾期後には脂を使い切ってしまって痩せて肉質も悪くなる…)、メスを誘い出す為にフェロモンを沢山出してケモノ臭さが酷くなるので、交尾期前の脂を溜め切った状態の11月~12月(ギリ1月?)に旬を迎えると言って良いのでは無いかと思います。
メスの場合にはシカと同様に余り発情期・交尾期の影響は受けないようではありますが、出産後は体力消耗してて痩せコケてしまうので美味くないとされてます。また、未経産のメスは美味いけれども、年増イノシシはあまり美味くないとされます(コレはオスも同じで、特に100g超みたいなデカいのは40~70㎏位の丁度良い大きさのモノよりも美味くないとも言われてます)。

エサ問題。
シカは草食性でイノシシの場合は雑食性なのですが、秋の発情期・交尾期前にナニを食っているかによっても、その肉質・味に大いなる影響があります。
一番美味いとされるのは、秋にどんぐりを鱈腹食べて脂肪を蓄えたヤツ。ほら、スペインのイベリコ豚の中でも、最上級とされるのがイベリコ・ベジョータなんですが、アレはエサとしてどんぐりを与えて育てたモノなのですね。
従い、秋のどんぐりが沢山生る山でコレを鱈腹食べて脂肪を蓄えたイノシシは、イベリコ・ベジョータ並みに(かどうかは分かりませんが(笑))、美味いんです。正に、今からですよねぇ。

秋に獲れたイノシシを解体して胃袋を開けてみたら、全部コレがどんぐり!
そのイノシシはやっぱり皮下脂肪をたっぷり溜め込んでました。
解体後のイノシシは猟隊のみんなで分け分け。シカは要らんと言うヒトもイノシシはお持ち帰り。
このお肉は然程でも無いけれど、まぁまぁ脂肪あります。

処理の問題。
この点はシカの時には解説しませんでしたが、サカナとも同様で獲ってからの血抜き処理は肉質や味にも大いに影響するモノと思われます。更に言えば、如何にストレスを与えずに獲るか、と言う点についても影響があると言われてます。そりゃあ一晩中罠に繋がれて必死に逃げようともがいてたヤツのストレスは相当なモンでしょうから、一発のヘッドショットで即死させられ、適切に血抜き処理されたヤツの方が肉質が良いであろうコトは想像に難くありませんね。
血抜き処理も、キッチリと止め刺しを行い撃ってまだ心臓が動いている段階で(心臓を切るとポンプが使えなくなるので、頸動脈を切るのが良いと言われてます)、確りと血を出し切るのが理想なのだと思います。イノシシの場合、罠に掛かったヤツを鼻括り(括り罠を水平に?使えるように改良して鼻を固定するコトで生け捕りにする技術)で生け捕りにした上で、生きたまま処理施設に運搬し、ソコでキッチリと血抜きすると言う方法をもあるようです(この場合、ストレスと血抜きの天秤になるのかなぁ…?)。

イノシシ肉の栄養。
イノシシは豚のご先祖様的な存在であり、栄養価についても互いに似てはいるのですが、鉄分に関して言えばイノシシ肉は豚の4倍、ビタミン12に関しては3倍と豊富に含まれてます。またコラーゲンも多く、これ等によってイノシシ肉は疲労回復に効果あり、またお肌のトラブルを改善してくれる効果もあるとされてます。更に言えば、イノシシの脂身には不飽和脂肪酸が多く含まれている為、悪玉コレステロールを減少させ、血液サラサラ効果も期待出来るとのコト。栄養価の面から見ても、イノシシ肉は中々にスグレものであると言えそうです。

イノシシ肉の生食。
コレは絶対にアカンやつ。前回のシカ肉の生食の際にもお伝えしているのですが、矢張りシカやイノシシ等野生鳥獣に関しては牛や豚等の家畜とは違ってエサや飼育環境に於ける衛生管理が適切に行われていないコトもあり(当たり前ですが)、E型肝炎等ウィルス感染・サルモネラやカンピロバクター等細菌感染・糞便等に含まれる寄生虫など、様々なリスクが存在してます。イノシシの場合、コレらに加えてウェステルマン肺吸虫のリスクもあります。シカは基本草食ですが、イノシシは雑食でありまして、肺吸虫の中間宿主でもあるサワガニ等甲殻類も大好物なので、コレらによって肺吸虫の待機宿主となっている模様であります。
従い、コレらのリスクを回避する為には、シカ肉と同様に保健所認可の解体処理施設で厚生労働省の定めるガイドラインに沿った手順で解体処理され、適切な衛生管理がされた調理場で加熱調理されたモノを食べる必要があります。
実は。
そんな知識を知らなかった10年以上前、ヒトから戴いたイノシシのモモ肉をお正月に親族一同に振舞ったコトがあり、その際にイノシシ肉の刺身を提供しちゃったコトがありました。幸い、10年以上経っても振舞った親戚一同の中でヘンな症状が出たと言うハナシは出ていないので、多分大丈夫だとは思いますが、自分の中では心の大きなキズになってます(笑)。反省。
アト、イノシシの場合に気を付けねばならんのは、昨今流行していた豚熱ですね。豚熱は豚やイノシシに感染するウィルス性のモノらしいのですが、ヒトには感染しないとされてますし、仮にヒトが感染した豚やイノシシを食べたとしても人体への影響はないとされています。が、まぁ一体何が起こるかは良く分かっていないコトもあるので、この観点からも生食は避け、良く加熱したモノを食べるようにしないとイカン、と言うことのようです。

イノシシ肉の調理法。
コレもシカ肉の時と同じで、シカの場合には牛肉の調理方法を、イノシシの場合には豚の調理方法を参考にすれば良いのでしょう。従い、個別のイノシシ肉に関する調理方法はココでは触れないです。
ともあれ、脂がたっぷりと乗ったイノシシ肉は、牡丹鍋にしろ、カレーにしろチャーシューや生姜焼にしろ、豚に使える調理方法で料理すれば何だって美味いので、イノシシ肉が入手出来たのならば、是非この時期にお召し上がり戴ければと思います。

調理前のお肉。良い脂が付いてます。美味いに決まってるヤツ。

明日はインドネシアの納豆(?)「醗酵食品・テンペ」について書いて行きたいと思います。

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