【ボクの腰痛体験記】第二夜 「朝起きたら、虫になっていた件」
運命の出会い、それはときに
私たちの人生を大きく変えうるもの。
ただしそれが、良い方向にとは限らない…
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ある日、朝起きると
世界が、変わってみえた
「な、なんじゃ…この…痛みは…」
「陣痛ですか?僕、男ですけど…これから赤子が生まれるんですか?」「できれば、鼻筋の通ったかわいい子がいいな」
そんな、軽口を叩く余裕はなく
全身に痛みが走りまわった
「世界の『痛みさん』大集合スペシャルですか?」「いや、そんな番組、誰が見るねん」
そんな考えが、
頭を駆け巡る…余裕はなく
ただただ、真っ黒い何かが、胸の奥底に
沈んでいくのを感じた
「これって、救急車呼ぶパターンのヤツ?」
「でも、救急車を呼んでなんともなかったら、迷惑かけちゃうし…」
だんだん過呼吸になってくる
一種のパニック状態だ
「パニック!あたまパニック!パニッ」
気を落ち着けながら、スマホを手にすると
119に電話をかけた…
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「フランツ・カフカ」の代表作「変身」を
ご存知だろうか。朝起きると、主人公が虫になっているという衝撃的な作品だ
まさに、あの朝は
僕にとっての「変身」だったのだ
「変身」の主人公が最も悲劇的だったのは
家族と「意思の疎通」ができなかったこと。
もし、スマホをいじれる指があったなら、
『朝起きたら、虫になっていた件』をネタに
ブログを立ち上げたり、ネットでライブ配信するなどすればよい。それでバズれば、家族の家計の足しにはなったはず。冗談ですよ。
でも、そうすれば、あそこまでのバッドエンドは防げたのかもしれない。いや待てよ、前言撤回。虫になった時点で詰んでるわ。ハッピーエンドはありえない。
そういえば、僕には立派な指がついていて
今も軽やかに、スマホ入力中である。
人は、できないことに注目し、
すぐに絶望しがちだけれど
まだ、できることはたくさんある
そう、僕にも、きっと…あなたにも…
〜第三夜につづく〜