「細尾真孝さん×山口周さん」 トークイベントメモ

これからnoteの「日々の出来事」マガジンで、自分が聞いたり見たり感じたりしたことを、きちんとメモとして残していこうと思います。すべての出会いの積み上げによって今の自分のスタンスがあります。それを残すことの意味、今はわからないけど、経営判断に影響を与えていることは間違いないので、もしかしたらPDCAのサイクルをまわす中でも意味があることなのかもしれないとは思っています。

今回は、THE KYOTOのNewspicks内での、京都西陣織老舗株式会社細尾の細尾真孝さんとパブリックスピーカーの山口周さんのトークイベントを聞いて思うこと。

細尾さんとは、京都のフラッグシップストアに特注カーペットを一緒に制作させていただいたご縁で、仲良くさせていただいています。山口周さんは、著書を通してとても感銘を受け、とあるご縁で一度一緒に食事をさせていただきました。

株式会社細尾の成功要因

僕がこんなことを分析するのもおこがましいですが、様々なお話を伺っている中で、何が現在のHOSOOブランドにいきついたのか?ということを考えていました。僕の中での1つの結論は、幅広の西陣織りを自社開発でつくりあげたこと。メーカーとしてものづくりを進化させたことが最も大きなことだったのではないかと思っています。

細尾さんのことを、端から見ていると、「海外でのブランディングの逆輸入」、「ブランディングの成功事例」みたいに捉える人もいるかもしれないけど、本質はここではないと思います。

その本質は、メーカーとして愚直にものづくりを進化させたことだと思います。

ブランディングとは「伝えるべきことを整理して正しく伝えること」(中川淳)。という中で、経営状況を分析し、ビジョンを掲げ、コンセプトに落とし込み、商品制作、商品開発に取り組んでいきます。でもこの要素の中に、細尾さんの「幅広の西陣織りの織機を開発する」という要素は、おそらくこのステップの中には、なかなか入ってこない内容だと思います。メーカーとして、日々ものづくりに向き合いながら、ものづくりを進化させていくこと。最近のブランディングの事例をみていても、この要素までいきついている会社はとても少ないと感じています。

そもそもメーカーの本質は、「良いものをつくり続けていくこと」ということであり、絶対に見失ってないけないことだと思います。

本質を見極める

細尾さんはトークイベントの中で、「西陣織のDNAは、会社という枠組みを超え『協業』をベースに、『美』を軸にし、『革新』を続けてきたこと。」とおっしゃっていました。事業をする中で、「本質」をどう捉えるのか?は自社が目指すべき未来を考える上で、とても大切なことだと思います。細尾さんは、本質をきちんと言葉に落とし込むほどに、西陣織の歴史、日本のファブリクスの歴史を紐解きながら考え抜いてきた。その末にいきついたとても深い「本質」なのだと思います。

カーペットの本質とは何か?お客様に提供できる本質的価値はどこにあるのか?それは、「やわらかい床」「ファブリクスの空気感」「視座の低い暮らし方」と僕は思っています。

ですが、今日の細尾さんの話を聞きながら、まだまだ深い部分にたどり着けていない気がしてきました。

今日の細尾さんの話を聞いていると、京都という場所、海外も含めた織物の歴史、工芸というものづくり、を深く深く学び、考え抜いている、ということを感じました。「話の深さ」は「良い質の学び」から「考え抜く」というステップが絶対的に重要なのだと感じました。

「物」には力がある

お話の中で、柳宗悦さんの話に、「工芸とは何か?」という答えとして「ミュージアム」をつくったという話がありました。「美」という言葉では表現しにくいことを、「物」をみせることで伝える。つまり「物」には力があり「良い物」は「良い」ということなのだとあらためて感じました。

「物」だけでは売れない、だから「伝える」ということを努力していく。これがブランディングの一番最初の始まりな気がします。「ブランディング」(伝えるべきことを整理し正しく伝えること)は、あたりまえの用にできるようになって、「良い物」をちゃんとつくりあげることの重要さをあらためて感じます。「物」には言葉にできない力がある、そう思える「物」をつくりあげることを、メーカーとして追求していきたいと思います。

「美」を経験をもって鍛える

山口周さんの著書にもありますが、「体」をきたえるのと同じように、「美」も鍛えないとおとろえていくという考え方。「良いもの」をつくりだそうとするとき、「美」を鍛える努力は圧倒的に重要であると、ここ数年で深く感じ、実践できるようになってきました。カーペットだけではなく、絵画や器、アートやファブリック、様々な良いものに触れること、経験することで、美は鍛えられ、「力のある『物』」が生み出せるようになるのだなと思います。マーケティングに頼らず、「これがいいんだ!」と言える力をつけることで、マーケットの多様性が生まれ、世界で戦えるものが生まれるのだと思います。

「職人」の価値を高めるという「ビジョン」

「物」には力がある、だけではやはりコミュニケーションとしては不十分で、どう伝えるのか?はもちろん重要になっていきます。「物」と「コミュニケーション」を両方ともやっていかなければなりません。

その中で、細尾さんは「職人の価値を高める」とおっしゃっていました。そういった会社としての思想や哲学を商品の中に込めていく、買う側はその思想に共感し、職人へのリスペクト、それに対して対価を払っていく、そういう流れにもっていくことにチャレンジしていくとおっしゃっていました。

工芸品を扱う多くの会社のコミュニケーションは、「手作り」や「工芸品」、「職人」ということがつかわれることが多いと思います。ですが、僕は今回細尾さんの話を聞いておもったことは、コミュニケーションの手段としての「職人」なのか、ビジョンとして「職人の価値を高める」というコミュニケーションなのかは、大きく違うなと思いました。

僕は単純に「手作りだから良い」とか「日本製だから良い」、というのはメーカーのマスターベーションだと思っています。「量産品」でも良いものはあるし、「外国製」のものでもたくさん良いものがあると思います。その中で、「手作り」や「日本製」というのは「ちょっと高いのは、手作りだからです、日本製だからです。」というコミュニケーションではお客様は対価を払ってはくれない。

「本気」で、「職人の価値を高める」ということを会社をあげてやっている、ビジョンとしてそれに向かっているからこそ、お客様には伝わるのだと思います。今回の細尾さんの話を聞くまで、僕は「日本製」や「手づくり」というコミュニケーションではだめだな、ということだけ思っていたのですが、「ビジョン」まで昇華されると、それは伝わるのかもしれない、と思いました。

まとめ

僕は個人的に、細尾さんも山口さんも好きだから、というのはありますが、頭の整理がめちゃくちゃ進みました。以下が僕の今日の学び(まとめ)です。

・「物」には力があるということ

・本気で思う(ビジョン)から「伝わる」ということ

・「学びの質と量」が深さを生むということ

・「美」を鍛えるから「良い物」ができるということ

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