伸一さんと飲んだ:平野屋バンケットの一日
伸一さんは、父の兄の子供だ。生まれて事故で実父が死んだので、三男が兄嫁と結婚して本家を継いだ。「直し」という家族を維持するための知恵だ。当時は家に属することが会社に属することと同じ意味を持った。そして人は簡単に死んでいた。
僕の父はそんな伸一さんをいつも子供のように可愛がっていた。
こちらの続きです
仕入れ
お気に入りのスーパーに行った。生のホタルイカはここで買うのが一番だ。昨晩の内に近くのスーパーでッサシミなどは買っておいた。
仕入れをしてきた。伸一さんは食べ物を作る仕事をしていたので口が肥えている。昨日の内にローツキャベツと鰯の煮付は作っておいた。
父が亡くなった時は、東京の兄と近くに住む母方の叔父とは縁を切っていたので、伸一さんにだけ伝え、父の遺言(本家の父名義の土地を遺贈する)を実施した。もう僕の親戚は彼しかいない。
ゆっくりと話しをしながら、夕食を食べようということになった。
動画もどうぞ
前日の下ごしらえはこちら
今日の動画はこちら(揚げている所からです)
生ホタルイカのボイル
生ホタルイカは、沸騰したお湯に入れて再沸騰後火を止めて4−5分で、よく水で洗う。
お店でボイルされて売られているパック入りとは全く味わいが違う。目玉が固くないことに驚くだろう。
わさび醤油でいただくのも、ポン酢で頂くのもよろしい。
豆アジの唐揚げ
小アジは干すように開いて、内臓を洗い粉を付けてあげた。
メンマとバラブロックの味付け煮
先だっての失敗したベーコンの肉はジックリ脂を出して、メンマと合わせて味を入れた。これはとんこつラーメンにあう。
干しカブの煮付け
これは煮すぎて失敗であった。干しカブが薄くて乾燥が足りなかった。この料理は難しい。母の作っていたコリコリとした食感は出ない。ザイゴの人が自宅用に作ったものを分けてもらっていたと聞く。
干しカブ(大根の薄切りを乾燥させたもの)を戻して、煮切る(水がなくなるまで煮る)のだが、実にむずかしい。時折お店でも見るが、違ったもののようであるので買う気にならない。
手羽先のネギはさみ
これは鉄板ネタ。絶対美味しい。これがあれば、焼き鳥屋さんに行きたいとは思わない。
イワシの紫蘇巻あげ
しそがやたら安かったので多めに買ってきて開いたイワシに巻き込んで天ぷらにする。衣が強すぎてイワシの美味しさが逃げた。後悔している(笑)。
10匹を捌いた写真を撮りたかったので頭をおいておいたが普段はシンクに落とす。この「血と身の中」には多くの生命が詰まっている。遠くから来てくれた嬉しい。地元の海(1時間ほど北)でとれたものだ。こういう物が食べれるのは嬉しい。
揚げる手順
天ぷらは難しい。後片付けも面倒だし、油も跳ねる。けどね、できたては嬉しいものだ。問題は上手く出来るまでに経験が必要だということだ。
タイマーが付いているフライヤーなども買ったが、天ぷら鍋で揚げる今の形に落ち着いた。
今回は「鳥胸肉のフライー>カキフライ->(冷凍2品)ー>イワシ->豆アジ->イワシの骨せんべい」の順であった。とにかく鍋を休ませないでせっせと衣つけながらあげていく。温度の調整もままにしたほうが良い。豆アジから先は高温にする。
イワシの中骨は手で抜いて、カタクリ振る。豆アジは水気をとってからカタクリを振る。高温なのではねやすいので注意がいる。
壮観である。
後片付け
揚げ物をしている時に、最後のパートになったら片付けを始める。
煮しめや揚げ物と言った鍋に任せて手が離れる料理は後片付けタイムが取れる。食べれば皿が出るので「包丁、大きな鍋、ボール、ザル」を洗う。揚げ物系に使ったボールは粉がこびりついているので水にうるかしておくと良い。
盛り付け
ベーコンとミニトマト、アスパラにセロリをソテーしてバルサミコを振って煮詰めた。おしゃれである。
食事
小鉢でこまごまと並ぶのが楽しい。
時はすぎる
楽しかった。父の思い出を聞き、今の状況を話した。痛飲した。
料理が好きな人と食べるのは楽しい。作った人の気持ちがわかるのだ。
伸一さんの友人が次々なくなったことを聞いた。食事がいかに大切かということで意見は一致した。
病因がなく、症状だけの病に医学は無力である。節制が悪いと言うが、選択できる道は多くはない。ラーメンやおにぎりばかり食っているととても辛い人生の終りを迎える。
「幸運な病のレシピ」の事や、「百年しばた」の事を話した。
あの頃のことを今の僕の目から見てどう見えるかを話して、意見を交換した。本を沢山読んでいる方で、新発田の飲み屋も庭のような人だ。もうあの頃から20年経った。多くの登場人物は居なくなった。
驚くほど時は早くすぎる。
美味しかった。また来年飲もうと約束した。
酒と煙草は仏前に供えた。父は最後までタバコを吸いたがった。寝タバコを発見して、僕が渡さないようにしたのだ。暖かくなったら一緒に外です吸おうと約束していた。
伸一さんのお父さん(育ての親)も、最後にタバコを吸いたがっていたそうだ。後悔は残る。
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マユのご飯もごちそうである。
厨房研究に使います。世界の人々の食事の価値を変えたいのです。