夢見モグラは空を待ち侘びて 35日目
二人組の長い質問が終わると、
モグラは四角い箱の中に乗せられ、
それは一度大きくブルン身震いすると、
今度はブオーンとすごいスピードで走り出した。
周りの景色もグルグル変わっていって、
身を乗り出してそれを目で追うので精一杯だった。
光って、回って、動いては、揺れて、
土や岩や砂ばかりの世界とは違う、
沢山の色に溢れた世界に、
モグラは見惚れていた。
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運転手さんの話。
その日は仕事にタクシーで向かっていた。
コロナで困っている職業をあげれば枚挙にいとまがないけれど、
おそらくタクシーの運転手さんもその渦中にいる1人。
「今日はあったかいですね。」
大概はこう言う時話しかけられると、ちょっと鬱陶しいなとか思いがち(性格悪っ)、正直ちょっと苦手だ。
少し遠い距離の移動だったこともあってか、
なんとなしに昨今のこと色々と話した。
最終的にはちょっと盛り上がって、お互い大変ですね、なんて話しながら気づけば目的地の近くで少し道に迷って、
「このあたり、止めやすいところで大丈夫ですよ。」
と適当なところで降ろしてもらい、忘れ物がないことを見届けると、お礼を言って、扉を閉めた。
僕が外人だったら「have a nice day!」とか言えたらかっこいいなと思ったけれど、残念ながら僕は日本人だった。けれど心の中でいい1日を!と込めてお礼を言った(ということにしておこう)。
(旅先とかの「have a nice day!」ってなんか好きなんですよね。)
「このままじゃいけないと思ってね、使い方をいちから勉強したんですよ。」
おそらく僕の親と同じかそれよりも年配の運転手さんが、
どんな配車アプリで呼ばれても対応できるように、
その運転席近くに沢山のスマホやタブレットの端末を用意していて、
まるでロボット漫画のコックピットみたいになっているのを嬉しそうに僕に紹介してくれた。
換気しますねって途中で窓を少し開けたり、
その学ぼうと言う姿勢、その変わろうという心意気に、
なんかちょっと勝手に心打たれていた。
世界のせいとか、ウイルスのせいとか、誰かのせいにしてる、暇があったら、
頑張り方を見つけて、もうちょっと頑張ってみろよ。
そんなこと一言も言われていないけれど、
そんなことを言われたような気がして、
お尻を鞭でペチンと叩かれたような気分がしたところ(ヒヒーン!)。
それではまた明日。
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本日の表紙はm622o511eさんの写真を使用させていただいております。ヒヒーン!