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夢見モグラは空を待ち侘びて 44日目


モグラの部屋の壁の片隅には、
顔よりも少し大きく、
四角で角ばった、
キラキラ輝く板が貼ってあった。
その板を覗いている間だけ現れた相手は、
こちらが手を振れば手を振って返してくれたし、
微笑んだら、微笑みで返してくれた。
こちらがメソメソ泣いていると、
今度は一緒になって泣いていた。
いつからかモグラはついうっかり寂しくなると、
ノソノソとその板の前に立って、
そに日にあったことを、思ったこと、
誰にも言えない心のうちを、
その相手にだけは伝えるようになっていた。

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違う、それは俺じゃないという話。


「ねえマッチングアプリやってる?」

昔は物騒なものだと思っていたけれど、
近頃マッチングアプリで知り合い、
実際に付き合いだして一緒に暮らし始めたなんて友達もいて、
満更でもないんだな、そんなこともあるんだなと思いつつ。

「いや、やってないけど。」

友人からの唐突な連絡に、首を傾げながら、
寝起きで歯をゴシゴシ磨きながら適当に返信をしていたが、
次の瞬間、咽せる。

「ねえ、これ見て。」

送られてきた画像をマジマジと見つめる。
ははーん、どっかで見たことのある写真だな。
さては良く見慣れた顔だな、
誰かに似てるな、ええっと誰だっけか、
っていうかこれはあれだな、
冷静にどっからどう見ても俺だな、これ。
いつかの自分のソロのアーティスト写真が貼られたプロフィール。
そして、それに添えられたちょっと気恥ずかしい自己紹介文、照。

これ、実際に会う時どうするんだろう、
じゃーん、実は私でした!みたいなシーンが起こり得るんだろうか。
それとも誤差範囲でほぼ俺と同じ顔の人来るとか(ちょっと会ってみたい)?
ひとえに心から思うのは、
それって、上手くいかなくても俺のせいにしないでね、というところ。
いや、むしろ写真のせいであんまり興味持たれなかったら、なんかごめんな。
というのと、あとお願いだから揉めないでね(切実)。

「いや、違う。それは俺じゃない。」

いろんなことが頭によぎりながら、そっと画面を閉じたのであった。

ちょっと前の出来事なので、
今はどうなってるか知らないけれど、
あの日のいつかの僕の(どこかの誰かの)恋路が、上手く行っていますように、と祈りつつ。
またはただ悪用されていないのを願うばかり。
それではまた明日。

いや、違う、それは俺じゃない。

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本日の表紙は27_cpcpさんの写真を使用させていただいております。

褒められても、貶されても、どのみち良く伸びるタイプです。