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夢見モグラは空を待ち侘びて 28日目



随分と深い穴が出来ていた。
モグラは次に来た誰かが通りやすいように、
安全に誰かが通れるように、
ゴツゴツした大きな石を避け、
ストンと上から物が落ちてこないように柱を建てて、
歩きやすいように道を均すことにした。

どうやらこれは”トンネル”というものになるらしい。
オジジがそう教えてくれた。
最近ゼイゼイと息をして、
ケホケホと咳き込むので少し心配だ。

土の壁の向こうで、
時に悲しそうな、時に楽しそうな、
モグラのまだ知らない声がたくさん聞こえてくることに、
日々想像を巡らせて、思いを馳せながら、
モグラは眠りにつくたびに、色鮮やかな夢を見ていた。

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横断歩道の話。

用があったので久しぶり外の世界へ。
う、まぶしい。
制作期間の自分は本当にモグラのような生き物だと思う。
(と同時にそれに没頭できることもすごく幸せなことだとも思いつつ。)
良くも悪くも交差点はいつも通り人だかり。
信号待ちの間はつい他の人たちの会話を耳で追ってしまう。
信号が青に変わって歩き出す。
ふと自分の歩幅が横断歩道の白いインクとシンクロしてることに気づく。

いつか生まれ変わったら何になりたいかという質問に対して、
ぱっと思いついたので、
「横断歩道すかね。」
と答えたことがある。
全力ではあ?みたいな顔をされたような気もする。
いい大人が何言ってんだと。
(うるせえ、まともな神経なんかしていたらアーティストなんて自称してるのが恥ずかしくてたまらないんだ。)
そんな心の声の主には全力で往復ビンタ、そっとチャックで締め上げる。
当時の僕は、あなたが前に進めるように、
誰かの背中を押すというところに表現の焦点が当たっていたので、
半分大喜利のつもりで、半分は大真面目にそう答えた。

今、同じ質問をされたらきっと別の答えをすると思うし、
幼少期の文集では「枕。」と答えたくらいなので、
とりわけ生き物であることには固執しないタイプらしい。


「涙は急に止まれない」
という歌詞(のちに本のタイトル)を拾い上げたときの話。
物語のヒントはきっと、いろんなところに転がっている。
机の上にも、アスファルトの上にも。

それではまた明日。

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本日の表紙はairingo1031さんの写真を使用させていただいております。


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MasatoKanai
褒められても、貶されても、どのみち良く伸びるタイプです。

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