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屋根裏に住んでいる
6歳の娘には秘密があるみたいだ。
秘密だからパパには教えないよー、というのだが、パパにはお見通しだ。
娘には秘密のともだちがいるのだ。
お兄ちゃんとケンカして、ダンダンダンッと足音を立てて
プンスカプンと2階へかけ上がる娘。
暫くは1階のリビングからもすすり泣く声が聞こえた。
やがて泣き声は収まり、何やら話し声が聞こえてきた。めっちゃ喋ってる。
喋り声は笑い声に変わり、すっきりした顔をして娘は降りて来た。
落ち着いた?と聞くと、静かに頷いた。
何か話してなかった?と聞くと、内緒だよ、と言ってまた2階へ上がっていった。
今度は静かだ。ヒソヒソ話の気配がする。
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普段は閉まっている
我が家には2階の天井裏に屋根裏部屋がある。
普段は閉じている天井の扉を開けるとスライド式の階段が出てくるのだ。
時折、寝袋を持ち込んで子供たちと朝までキャンプごっこをやったりする。
お兄ちゃんが立つと丁度頭が付く位の三角屋根の小部屋。3人で並んで寝転がるのにぴったりの広さだ。
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この家に暮らして5年程になる。
以前はマンションに住んでいた。
娘が生まれて、息子が小学生になるタイミングで引越してきた。
新しい家を決める時の条件は3つあった。
・妻の実家から近いこと
・今と同じ市内であること
・屋根裏部屋があること
なかでも、屋根裏は息子の強い希望だった。
ここに住みたい! お家を内覧した時の息子の言葉で即決したのであった。
引越してきたばかりの時は、板張りの味気ない物置小屋みたいだったけど、ある日家族皆でペンキ塗りをしたのだ。
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仕事から帰ってきて、妻と2人リビングでコーヒーを楽しむ時間。家には他に誰もいないはずなのに、たたたっ、と誰かが階段を昇る足音がする。
いるね。
うん、そうだね。
夫婦の会話。
何かしらいるのだ。
娘のともだちかもしれないし、座敷わらしみたいなものかもしれない。
普段はきっと屋根裏に住んでいるんだ。
悪いやつじゃない。それはわかる。
家ってなんだか不思議だ。
皆それぞれに住む家があって。
そこでは様々な人達の日常があり、
毎日がその空間の中で流れていく。
あたりまえのようでいて、
あたりまえじゃない。
奇跡みたいに思える。
この家で家族と暮らす日常。
ホント奇跡だ。
コーヒーを飲む日常の時間のなかで、
非日常的な我が家の住人のことを想う。
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ハート型チョコクッキー
妻の手作り♡
息子はひとりでお風呂に入るとなかなか出てこない。
鼻唄が聞こえるなあ、と思っていると
いつの間にやら喋り声がする。
誰かと話してるようだ。
なんだか楽しそう。
息子にもいるんだろうな。
秘密のトモダチが。
思い出したんだ。
僕にもいたな、心のともだち。
今はもういないけど。
でも大丈夫。
僕には家族がいるんだ。
それだけで十分すぎる。
しあわせだ。