格付けされたサメくん
祖母のタンスから出てきた、着物。
柄は江戸小紋で、鮫文様といらしい。
伊勢型紙で、染め上げると、細かい鮫皮の模様になる。
鮫のおろし金に、そっくりだ。
普通、小紋は「格」下で普段着扱い。
ところが、この鮫文様は、紋を入れると、略礼装となる「格」だそうだ。
しかも、文様が細かければ細かいほど、「格」が上がってお値段も上がる。
職人さんの手間がかかっているから、値段が上がるのは当然だ。
鮫の皮そっくり。だけど、着物になると、近寄って見ないかぎり無地にしか見えない。江戸っ子って、おしゃれ。
拡大するとこんな感じ。
とても、汚れているが、私が着ようとしたら、
明治生まれの祖母の身長では丈がたりない、腕の長さが短い。
その上、明治生まれは、少し小太りの方が健康的という意識があったようで
祖母は、背丈は低いのに横幅はあった。
私が着ると、ガバガバで、脇にたくさん寄せないと着物の中心がズレてくる着付けに、やっかいな着物。
将来的には、ほどいてリメイクする運命。
日本中には、高度成長期から、バブル崩壊までに売られた着物が、たくさんタンスに眠っている。
戦時中、派手な着物は禁止になり、戦争が終わったら、金融封鎖で、財産がパーになり、昭和20年代は物不足、そんな時代を経た祖母が、豊かな時代に、着物をたくさん買ったのを、とやかくはいいたくない。孫の私が着るのが一番の孝行だけれど、サイズが合わないから仕方ない。
せめて、サイズの合う母の着物は、普段着として自分で着て町を歩く勇気が欲しいが、まだ、外に着物で出かける勇気はない。