#61 『私の履歴書』に観る”パラダイムシフト”の瞬間
1.『私の履歴書』は学びの宝庫
1-1立花隆著「自分史の書き方」
社会人になった年から、日経新聞の『私の履歴書』を読み続けています。2020年の2月に、(一社)自分史活用推進協議会認定の自分史活用アドバイザーの資格を取得し、少しずつ活動を始めています。
「知の巨人」と呼ばれた立花隆さんの著作に「自分史の書き方」という名著がありますが、立花隆さんは、2008年ー2011年の4年間「立教セカンドステージ大学」で開講された「現代史の中の自分史」の講義を担当されました。その実践記録をもとに書かれたのが同著です。
同著の帯には「セカンドステージの充実のためにこれまでの人生、時代の中の自分を書き留める」とあり、立花さんは、自分史作成にあたって『時代の中の自分』という視点を大事にされました。
昨年の立花さんの死を悼み、同窓会の掲示板にも多くのメッセージが寄せられており、受講生の心を捕らえた立花さんの熱血講師振りが窺えます。
その立花さんが教材に使われたのが日経新聞の『私の履歴書』だったことを知り、昨年来、日経新聞の『私の履歴書』の登場者をフォローしています。
1956年の連載開始以来、連載は867シリーズ、登場人物は866人です。両者の数が合わないのは、松下幸之助氏が、1956年、1976年の2回登場しているためです。
866人の内訳は、経済専門紙とあって、経済人が361人(41.5%)と最多で、以下、芸術243人(28.0%)、政治111人(12.8%)と続きます。連載が始まった当初は、政治家も多く登場しましたが、近年は減っています。
1-2 『私の履歴書』に見る「自分史の書き方」
私も自分史作成のお手伝いする際に、ある方には、日経新聞の『私の履歴書』を参考にすることをお薦めしています。
『私の履歴書』は、1回13字X105行(1,365字)という字数制限があり、1か月(30回)で完結するという形式をとっていますが、このやり方は、自分史作成者にとっても、参考になるものです。
特に毎回のタイトルを書き出してみて、並べた後に、全体の構想を練るのも一法です。
2.本日の『私の履歴書』に観た”パラダイムシフト”の瞬間
「自分史作成」のためのヒントとして『私の履歴書』を読む一方、やはり、『私の履歴書』の醍醐味は、その人の半生、生き方に触れることだと思います。
その意味で、今月から連載が始まった滝久雄氏(ぐるなび創業者)の本日の『私の履歴書』連載第5回目(私の履歴書 滝久雄⑤)には、特に「キャリア・転機」という観点からも、私の関心を強く引くものでした。
2-1 『偶然』の遭遇がもたらした「パラダイムシフト」
新幹線の車中で、たまたま通り過ぎた1人の乗客の何気ない一言を受けて、こんなにも強烈な価値観の大転換(パラダイムシフト)が行われたことに、驚きましたが、その何気ない、偶然の「瞬間」の一言を見逃さないだけの感受性と受け入れる心の態勢が、滝氏にあったからこそ、の反応だったと思います。
3.「転機」を乗り越えるキャリアの考え方
目の前に明らかに転機が訪れているのに、それに気づかないことは、少なくありません。転機は、上手くとらえ、対処することで、これまでとは違う「新しい自分」になる「絶好の機会」です。
「プランド・ハップンスタンス理論」
◆キャリアの80%は偶然の出来事に左右されるが、良い偶然が発生する確率には影響を与えられる。
◆すなわち、キャリアの偶然を必然化する5つの要素として、①好奇心、②持続性、③柔軟性、④楽観性、⑤冒険心 がある。
◆現在では、日本でも広く流布している米クルンボルツ教授のキャリア理論です。
「プランド・ハップスタンス理論」は、良い『生活習慣』を作るための5つの要素を論じています。目の前に訪れた偶然の出来事が「転機」であることに気づき、それをつかみに行く力、対処する力は、この良い習慣があるかどうかに、深く関わっている・・・これまで、キャリアコンサルタントとして私が関わった方々で、転機を転機として捉え、乗り越えて来た方々の生き方やスタンスには、この良い『生活習慣』があると、確信しています。