始める/出す 【JLPT 文法 解説メモ】
複合動詞「V+始める」
動詞「始める」は、「食べ始める」のように他の動詞に接続し複合動詞を形成することができる。複合動詞は、前項動詞+後項動詞で形成されるが、後項動詞としての「始める」は、前項動詞の始動相を表す。
複合動詞「V+出す」
動詞「出す」も、「始める」と同様に、他の動詞に接続して複合動詞を形成することができる。後項動詞としての「出す」は、前項動詞の始動相を表すだけでなく、様々な用法がある。
【意味①】前項動詞の始動相を表す。
例)雨が急に降り出した。
【意味②】「外や表面に現れるように移動する」
例)箱から取り出す。
【意味③】「顕在化させる」
例)解決策を考え出す。
※「V+出す」の意味の分類については色々な論がある。ここでは詳しくは述べない。
接続
前項動詞の連用形(ます形の「ます」を取った形)に接続する。
【V+始める】
・食べます+始める→食べ始める
・遊びます+始める→遊び始める
【V+出す】
・泣きます+出す→泣き出す
・話します+出す→話し出す
「始める」と「出す」の違い
後項動詞としての「始める」と「出す」は、共に、前項動詞の始動相を表すことができる。後で述べる点を除き、多くの場合は互いに言い換えが可能である。ニュアンスや傾向としての差には、一般的に以下のようなことが言われている。
①突然性
その物事が突然始まったり、話し手にとって意外なことであった場合は「出す」を使われることが多い。しかし、「始める」も「突然」「急に」といった副詞と共に使って不自然になるわけでも、非文になるわけでもない。
・突然雨が降り出した。
・突然雨が降り始めた。
・彼は高3になって急に勉強し出した。
・彼は高3になって急に勉強し始めた。
②勢いよく始まった場合
その物事が勢いよく始まったということ強調したい場合には、「出す」のほうがより使われるという傾向がある。ただしこの場合も「始める」を使っても非文になるわけではない。
・その商品は去年から売れ出した。
・その商品は去年から売れ始めた。
・彼は今年に入って太り出した。
・彼は今年に入って太り始めた。
③感情の表出を表す語
「怒り出す」「泣き出す」「笑い出す」のように、感情の表出を表す語には、「始める」より「出す」が使われる傾向がある。ただし、これも「始める」を使ったとしても非文とまでは言えない。
・それを聞いて、彼は怒り出した。
・それを聞いて、彼は怒り始めた。
・彼はその様子を見て、笑い出した。
・彼はその様子を見て、笑い始めた。
④音の発生を表わす語
「鳴り出す」「吠え出す」など音が出るということに関する言葉には、「出す」が使われることが多い。ただし、これも「始める」を使ったからといって非文になるわけではない。
・私が通りかかると、犬が吠え出した。
・私が通りかかると、犬が吠え始めた。
・私がそれに触ると、警告音が鳴り出した。
・私がそれに触ると、警告音が鳴り始めた。
「出す」が使えない場合
前段で述べてきたように、「始める」と「出す」の使われ方に多少の差はあるが、明確に使い分けが定義されているわけではないし、言い換えて大きく意味が変わるわけでもない。
ただし、動作主が意志をもって行う未来の行為には「出す」は、ほとんど使われない。
【意志未来】
・8時になったら勉強し始めます。(〇)
・8時になったら勉強し出します。(✖?)
・来週から英語教室に通い始めるつもりです。(〇)
・来週から英語教室に通い出すつもりです。(✖?)
【意向形】~う/よう
・そろそろ掃除し始めよう。(〇)
・そろそろ掃除し出そう。(✖?)
【依頼形】~てください
・残業で少し遅くなるので先に飲み始めてください。(〇)
・残業で少し遅くなるので先に飲み出してください。(✖?)
リンク・例文
・「V+始める」JLPT Grammar N3/N4 - Hedgehog Japanese
・「V+出す」JLPT Grammar N3/N4 - Hedgehog Japanese
参考資料
・複合動詞「―出す」の分類 : 統語論的・意味論的方法を使って
・開始を表す複合動詞「~出す」「~始める」の違い : コーパスを利用した使用実態から