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キャンパス【エッセイ】六〇〇字
ウォーキングで外苑東通りから正門通りを左折、二千七百歩の地点に、早大本部キャンパスがある。いくつかあるルートで一番落ち着ける。大学特有の清新さを感じ、学生たちの語らいを目にし、聞いているのが、好きだ(った)。が、いまは、その風景が消えた。
緊急事態宣言後、門は閉ざされた。もともと「開かれた大学」であったが、大学紛争を契機に封鎖されて以来の、ことだろうか。
解除後開放され、ルートが復活。正門横の政経から、銅像前のなだらかなスロープを通り、法・商・教育の各学部を三周。演劇博物館前のベンチのところが、八千歩の中間点になり、しばし銀杏並木を眺める。深緑から秋冬物に衣替えし、間もなく冬が訪れることを伝えてくれる。像の方向を向くと、一年当時が蘇る。自然発生的に集まり、過激派に虐殺された川口君の抗議集会にいる、自分を。
演劇専攻だったので、本部は、教職科目の授業と博物館によく通った。当時付き合っていたひとが教育だったので、博物館前あたりで待ち合わせ、ベンチで映画『いちご白書』の話なんかをしたことを、思い出す。なので、キャンパスの想い出が、鮮明に残っている。
われわれが謳歌したキャンパスライフ。学生たちが取り戻せるのはいつになるのか。何年の想い出を、奪うことになってしまうのか。
半世紀の道のりを思い返しながら、ベンチから腰を浮かし、二〇二〇年に、戻った。
「思えば遠くに来たもんだ」