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雪だるま【エッセイ】六〇〇字

 また新聞のコラムの受け売りで恐縮だけど。二月十九日の朝日「月刊安心新聞」(千葉大学大学院教授・神里達博氏)に、こうある。
 豊臣秀吉の政策相談役に、曽呂利新左衛門というものがいたらしい。彼の貢献に、秀吉から「褒美をやろう、何が欲しいか」と言われ、こう答えたという、「頓智話」である。
 「大津の三井寺の階段は五十一段ありますが、一番下の段に米を一粒、次の段に二粒、その次に四粒と、倍々に最上段まで米粒を置いてください。その米を全部いただければ」
 数学好きは、お気づきだろうけど、「等比級数」や「指数関数」、「ねずみ算式」とか「雪だるま式」として知られる、問題である。
 二倍の数値は、コロナ禍でお馴染みの「実効再生産数」では、「2」である。米が一粒、二粒であるうちは、秀吉も、「なんだそれごとき」と安請け合いしたが、何段目かで、米粒が俵になった時点で、様相が一変してくる。
 計算の答は、一粒を0・0二gとして、総量は約四五00万tになるようだ。日本の米の年間総生産量は、八00万t位らしいから、いかに巨大になるか、驚きだ。確かにこの話は、単純に倍々にしていくと、つまり何も対策を講じなく、「2」に近づいていけば、想像を絶する悲惨な状況になる可能性もあるという、警告である。しかと、受け止めたい。
 話を政治に転ずれば、コロナほどの伝播力がなくても、「たかが一票」が、一強をも崩せるということを意味している、とも言える。

※画像は、「スキーマガジン」サイトから借用

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