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生きがい【エッセイ】一四〇〇字

 お騒がせの退院から体力が徐々に戻ってきており、中断していた通信講座の課題を確認する余裕もようやく出てきた。すると課題は、なんと「生きがい」。死に損なった人間に、あまりにもタイムリーすぎる。これまで「生きがい」なんぞ、まったく意識してこなかった。ただただ前を向いて進んできただけ、猪突猛進の猪だった。

 内閣府の2021年の調査によれば、60 歳以上の男女(2,435 人)に、現在どの程度、生きがい(喜びや楽しみ)を感じているかを訊いたところ、「十分感じている」が 23.1%で、「多少感じている」(50.1%)と合わせると、73.2%が『感じている』と回答している。そして、生きがい(喜びや楽しみ)を感じる時は? の問いへの答えは、「孫など家族との団らんの時」(40.5%)。次いで、「おいしい物を食べている時」( 40.1%)、「趣味やスポーツに熱中している時」(39.2%)が、差がなく続く(以下は、別表)。

あなたは、どの程度、生きがい(喜びや楽しみ)を感じていますか?
生きがい(喜びや楽しみ)を感じる時は?

               ※
 ホリエモンが、「人生は壮大な暇つぶし」と、大層なことを言っているらしい。 <今は昔のような生きるために働くということを超越した時代であるため、このような時代に豊かな人生を送るためには、様々な遊びを全力ですることが大切である>ということらしい。
 その言葉は、そもそもはパスカル大先生が『パンセ』に書いていた「人生は死ぬまでの暇つぶし」の引用であるが、(パスカルの時代はともかく今はまだ)多くのひとは時間に追われるように暇なく過ごしているのではないだろうか。「生活するため、生きるために」必死に仕事する、「仕事だけが人生」のひとが、実際は多いだろう。ただ、もし大先生やホリエモンのお言葉通りに「暇つぶし」感覚で、「生きがい」を感じるだけの人生をおくることができたら、どれほどまでに豊かな社会になることだろうか。
 私も、「仕事だけが人生」の人間であった。が、幸運にも「趣味と実益」が一致したケースだったので、ストレスはほとんどなかった(いや、そう思いこもうとしていたのかもだけど。たぶんなかった…💦)。特に47歳で(失敗覚悟で)独立してからは、「遊び感覚」で仕事ができていたように思う。仕事日と休日の分け目がなかったし、休日の「暇つぶし」にいろいろな趣味に夢中になるように仕事していた。しかし、仕事が「生きがい」だったかと言われると、「NO」である。「生きがい」だったなら、引退せずに死ぬ直前まで仕事していただろうからね。
 古稀を前にしたころだったか「生きている証」探しをはじめた。のだが、そこで今回、人生最大のピンチが突然訪れた。なにしろガンマ何某の数値が、4桁だからね(1,568 正常値:13~64)。胆管癌の疑いで緊急入院。一時は、「享年74歳」がチラついた。しかし、不幸中の幸いで、付録の人生をいただけたことによって、これまで経験ないほどに強く感じることができたことがある。「いまは、生きている」である。それが「生きがい」とするなら、初めてのことになる。
 いまの時間の密度が濃くなってきているのがわかる。入院前までにやっていた同じことでも、全てが楽しいと思えている。特に料理と食事のゆったりとした時間である。禁酒令とか、脂質制限とかやかましいことがあるにしても、おいしく食べられる歓びを感じている。これは、とても贅沢な「暇つぶし」ということになるのではないだろうか。

(別表)


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