「東電にも規制委にも適格性はない」批判の声
2023年12月27日、原子力規制委員会は、東京電力の柏崎刈羽原発の燃料移動の禁止命令を解除(*)し、原子炉を運転する「技術的能力がないとする理由はない」という2017年の判断を変更しないと結論した。「原子炉設置者としての適格性がある」とはっきりは言わず、「ないとする理由はない」を踏襲したのである。
この判断に対し、原子力政策を監視する市民団体からは批判の声が上がっている。
NPO法人 原子力資料情報室は
東京電力は、2002年のトラブル隠し事件を受けての改善策でも、以降の類似の事案でも、似たような改善策を立てては、問題を繰り返している。なぜ同じような問題が繰り返されるのかといった疑問には全く応えられていないと批判。
また、「東京電力の組織改善の取り組みについて、規制委は最低限ながら改善したと判断している。しかし、そもそも改善したと判断できるような専門性が規制委にあるのだろうか。規制委の委員の顔ぶれを見ると、組織論や品質管理といった専門性がある委員は一人もいない」と指摘した。
(「柏崎刈羽原発「運転禁止」解除、規制委に判断する資格があるのか」より)
「原子力規制を監視する市民の会」と「国際環境NGO FoE Japan」は
命令解除の検討は、少なくとも実際に大雪の状況を何度か経験したうえで、改善の実効性を確認したうえで行うべきではないか、
今年10月25日に発生した福島第一原発における多核種除去装置(ALPS)前処理施設で洗浄中の作業員の被ばく事故については(略)軽微と決めつけ、検証も待たずに適格性を判断した規制委も問題だ。規制委に原子力の安全規制を行う「適格性」があるのか疑わしい
2017年、柏崎刈羽原発の設置許可の際、規制委は、福島第一原発の廃炉について、「やりきる覚悟と実績を示すこと」を求めた。「覚悟を示すこと」を求めること自体、意味不明だが、「実績」はあるのか。デブリの取り出し開始は2回延長され、当初予定の「2021年中」から2年以上遅れている。最近では、2号機の原子炉に通じるフタの内側が堆積物で塞がれていることが判明。
規制委は今年8月24日からのALPS処理汚染水の海洋放出開始を「実績」とみているようだが、これで廃炉が進むわけではない。漁業者などが反対している中、集中管理すべき放射性物質を環境中に放出することに踏み切ったことは大きな問題だ。止水もできておらず、増え続ける汚染水の元を断てていない。
「すなわち、廃炉の「実績」は示されていない、東電に適格性はなく、柏崎刈羽原発を動かしてはならない」と明言した。(「柏崎刈羽原発の運転禁止措置の解除に抗議する-東電にも規制委にも適格性はない」より)
(*)関係「地味な取材ノート」
・原発事故を起こした東電の柏崎刈羽原発の行方
・東電社長と原子力規制委員たちの不思議な意見交換
・濡らしたウェスで放射性物質を拭き取る作業
・柏崎刈羽原発2020年の不正ID事件(2)2017年から遡る
【タイトル写真】
2023年12月27日、原子力規制委員長会見にて筆者撮影
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