まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。JBpressで「川から考える日本」を連載中。『あなたの隣の放射能汚染ゴミ』(集英社新書)、『投票に行きたくなる国会の話』(ちくまプリマー新書)、『四大公害病』(中公新書)、『水資源開発促進法 立法と公共事業」(築地書館)』ほか。

まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。JBpressで「川から考える日本」を連載中。『あなたの隣の放射能汚染ゴミ』(集英社新書)、『投票に行きたくなる国会の話』(ちくまプリマー新書)、『四大公害病』(中公新書)、『水資源開発促進法 立法と公共事業」(築地書館)』ほか。

最近の記事

歴史に残る判決を!鬼怒川水害控訴審が結審

2024年11月11日、鬼怒川水害訴訟の控訴審の第2回口頭弁論が東京高裁で開かれた。弁論は終結し、結審。2025年2月26日(水)14:00に判決と決まった。2022年地裁判決については2024年9月9日に書いた。 控訴したのは両者 茨城県常総市若宮戸地区(左岸25.3km付近)の溢水氾濫による損害(3000万円)賠償責任については、原告9人の主張を認めたので、国が控訴。 常総市上三坂地区(左岸21.0km付近)での堤防決壊による氾濫の損害(2億2218万円)賠償責任つ

    • 足りなくなった廃炉や損害賠償コストを誰が負担するのか? #託送料金許可取消請求訴訟

      足りなくなった廃炉費用等を、経済産業省が省令改正で、原発を選択しない者の電気料金にも上乗せしてよいとしたことは違法だとして、控訴中の原告らを招き、2024年11月14日、原子力市民委員会が第11回「連続オンライントーク」を開催した。以下は筆者のオンライン視聴メモ。 廃炉や損害賠償を自然エネルギー電力が回収? 招かれたグリーンコープ生協ふくおかの坂本寛子・理事長と一般社団法人グリーンコープ共同体の日高容子・代表理事によれば、最初は裁判をするつもりではなかったという。むしろ消

      • 敦賀原発2号機パブコメを経て「変更不許可」

        2024年11月13日、原子力規制委員会は、日本電子力発電(以後、原電)の敦賀原発2号機の「設置変更許可をしない」と決定した。 「K断層は活動性が否定できず、2号炉原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できない」。つまり、原子炉等規制法第43条の3の6第1項第4号の「原子力規制委員会規則で定める基準に適合する」とは認められないという理屈だ。 パブコメ282件中「科学的・技術的意見」は67件 これは、8月29日から30日間のパブコメを経て決定したものだ。 意見を寄

        • 0.69gのデブリ茨城に到着 #福島第一原発2号機

          福島第一原発2号機から試験的に取り出された0.7gの燃料デブリは、今日(11月12日)、茨城にある日本原子力研究開発機構(JAEA)大洗原子力工学研究所に到着したようだ。昨日の東電会見で分かったことを記録しておこうとして、念のためにニュースリリースサイトを見たら、そう出ていた(輸送の完了)。東京電力は、これまで、核物質防護のために、いつどのように輸送するのかは非公表として、昨日も今日輸送するとは一言も言わなかった。 昨日(11月11日)明らかにしたのは、11月8日(金)に6

          廃炉の優先順序は?原子力規制委員長の考え #1F

          2024年11月6日、福島第一原発の廃炉の優先順序について、福島第一原発の廃炉の最高責任者である小野明氏(既報)に続いて、山中伸介原子力規制委員長にも尋ねた。尋ね続ける理由は以下の2つだ。 優先順序を尋ね続ける理由1 増えるのは汚染水だけではない  原発事故から13年半、原子炉建屋地下に地下水が流入して燃料デブリなどに触れて生じ続ける「汚染水」問題は、単なる「汚染水問題」にとどまらない。  それをALPS(多核種除去設備)処理することによって①高濃度の放射性廃棄物(汚泥)

          廃炉の優先順序は?原子力規制委員長の考え #1F

          1F構内グローブボックスの測定の目的と公表 #2号機燃料デブリ試験的取り出し

          11月7日、東電の1F会見に行かず会見動画(←いずれリンク切れ)を視聴。 「11月6日に、燃料デブリ回収可否の判断基準「線量率24mSv/h(20cm位置)以下」であることを確認したことから、把持した 燃料デブリを運搬用ボックスに回収」したと発表。乏しい情報に対し、河北新報の東野記者らが質問した結果、 11月7日は 9:08 エンクロージャ側面ハウスの設置 9:43 エンクロージャ側面ハッチを開放 11:31 エンクロージャの外へ運搬用ボックスを取り出し 11:40 DP

          1F構内グローブボックスの測定の目的と公表 #2号機燃料デブリ試験的取り出し

          燃料デブリ「24mSv/h」→「0.2mSv/h」の謎

          11月5日、東京電力は、福島第一原発2号機から試験的に取り出したデブリは「0.2mSv/h」だったと発表した。11月5日朝8時44分から11時半にかけてエンクロージャー越しに約1メートル離れた距離に積算線量計を置き、2時間程度測定し、「燃料デブリ」から20cmの距離に換算した結果だという。 放射線防護の観点から「24mSv/h」超なら原子炉格納容器に戻すとしていたが、それより桁違いに低く、肩透かしとも言えるレベルだった。3g以下を取り出すとしていたが、重量の測定はこれからだ

          燃料デブリ「24mSv/h」→「0.2mSv/h」の謎

          燃料デブリ試験的取り出し3g:線量測定の位置、方法が説明と違う。

          トラブル続きの福島第一原発2号機燃料デブリの試験的取り出し(既報)について、東京電力は10月31日の会見で、その後の進捗を説明した。 「10月24日にカメラ交換作業が完了。28日に試験的取り出し作業を再開、30日に燃料デブリを把持。今後は、把持した燃料デブリをエンクロージャー内へ引き戻し、燃料デブリの線量を測定する予定です」と。 記者には、デブリを掴んだ記録が動画でUSBで提供された。 7月「エンクロ内で20cm離れたところから測定」 7月25日の中長期ロードマップ会

          燃料デブリ試験的取り出し3g:線量測定の位置、方法が説明と違う。

          廃炉の優先順序は?最高責任者の考え #1F

          2017年に政府が改訂した福島第一原発(1F)の「中長期ロードマップ」では、2021年12月までに燃料デブリ取り出しが開始されるはずだったが、2024年11月現在、その見込みはない。 かろうじて、880トンの溶け落ちた燃料デブリのうち、3g程度が試験的に建屋から出るかどうかという段階だ。 しかし、それは中長期ロードマップで定めたように最優先すべきことなのか。 政府と東電の優先順序は? 通常の原発でさえ、低レベルの放射性廃棄物から片付けを始める(既報)。 福島第一原発で

          廃炉の優先順序は?最高責任者の考え #1F

          福島原発刑事訴訟・勝俣被告の死去について、弁護団に聞いた

          東電元経営陣の刑事責任を追及する「福島原発刑事訴訟支援団」が、2024年11月1日、第9回の最高裁正門前アピールを行った。午後に行われた集会後、福島原発告訴団弁護団の海渡雄一弁護士に、この刑事訴訟の被告の一人である勝俣恒久・元会長(東日本大震災当時)の死去について思いを聞かせてもらった。 (*1)原子力発電所のトラブル隠し(失敗知識データベース) (*2)福島第一原発の吉田昌郎所長(故人) (*3)政府「地震調査研究推進本部」による「地震発生可能性の長期評価」 【タイトル

          福島原発刑事訴訟・勝俣被告の死去について、弁護団に聞いた

          美浜原発3号機配管に2つの穴と腐食

          美浜原発(47歳)の配管に2つの穴が空いたことを、福島第一原発の配管の穴のことと共にこちらで書いた。その配管とは、1次系の冷却水を海水で冷やすための配管A、B、C3系統のうちC系統の配管だ。 関西電力は、10月5日に異常が(10日に2つの穴と)発表した後、10日して15日に原子炉を停止させた(発表)。そして翌16日、穴の空いた配管(以後T管)を取り外して観察した。 すると、配管内側の上半面に施されたコーティングが剥がれて、凹凸状の模様と、炭素鋼の腐食があったと発表した。

          美浜原発3号機配管に2つの穴と腐食

          地震の巣窟で女川原発再稼働

          2024年10月29日、東北電力が、牡鹿半島の中ほど太平洋岸に立つ女川原発2号機の核燃料から制御棒を引き抜いた。12月に営業運転を開始すると発表した。 大事故まで「紙一重」だった 女川原発は、東日本大震災で大事故まで「紙一重」だったと「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」の多々良哲さん(資料)が原子力市民委員会のセミナーで語った。不勉強だった私は震え上がった。 標高14.8mの地盤が1m地盤沈下し、津波は13m。80cmの差で助かった。 2号機建屋地下のB系

          地震の巣窟で女川原発再稼働

          投票率:V字回復を目指したい

          先週金曜日、遠方の取材先で、久しぶりに出くわした記者から「え?こんなところにいていいの?」と言われ、「・・・あ。国会のお仕事はもう2年前にやめたんです」と答えるまで、質問を理解するのに時間がかかった。「選挙活動で忙しいんじゃないの?」という意味だったのだ。「犬の介護のためにやめて犬が死んで現在に至ります」と名刺を出した。18歳の時から、その時その時を選んで生きている。 そして衆院選投票日、小泉今日子さんが「70%80%に投票率が上がった時にどんな結果が出るかをすごく見たい」

          投票率:V字回復を目指したい

          屋内退避は「深層防護」の何層目の議論か

          2024年10月18日に「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム」の第6回会合でまとまった「中間まとめ」について、現在、UPZ(5~30km圏)の自治体に意見を原子力規制庁が求めている最中だ。次の会合は11月に開かれる。 会見で原子力規制委員長から得た回答と、私自身の頭を整理して結論から言うと、この中間まとめは、IAEAがいう深層防護の第4層と第5層の両方に関する考え方が示されている、と原子力規制委員会としては考えているということだ。 以下は、その整理の過程を記録

          屋内退避は「深層防護」の何層目の議論か

          原子力災害対策指針には屋内退避についてどう書かれていたか?

          原子力災害時、政府は人々にどのような場合に屋内退避を求めるのか。 「屋内退避は「深層防護」の何層目の議論か」について、頭を整理するために、今さらだが、原子力災害対策指針(以後、指針)では、屋内退避について、どう書かれていたかを振り返った。 指針P3 原子力災害の特殊性 指針P6 初期段階の防護措置の考え方 指針P8 (重点的に原子力災害に特有な対策を講じる必要がある区域について) 指針P23 緊急事態応急対策

          原子力災害対策指針には屋内退避についてどう書かれていたか?

          自衛隊の半分を「災害即応組織」に再編してはどうか:#スフィア基準 #衆議院選挙 #予算は「死の商人」ではなく被災者に 

          選挙戦で、「防災省の設置」が謳う権力者がいる。 今さら、何を言っているのかと思う。 高度経済成長時代から続けてきた「防災」インフラ政策に失敗し、 「減災」と言い始めた。「国土強靭化」もその類だ。 首相が率いる内閣府には特命担当大臣(防災)まで任命している。 「減災」「国土強靭化」の名で、「土建政治」「政官業の癒着」にしがみついて、 自らの権力維持のために利用していただけではないか。 グルっと回って、また「防災?」と呆れたので、以下、提案しておきたい。 提案:スフィア基準

          自衛隊の半分を「災害即応組織」に再編してはどうか:#スフィア基準 #衆議院選挙 #予算は「死の商人」ではなく被災者に