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柏崎刈羽原発2020年の不正ID事件(2)2017年から遡る

(1)規制庁による隠蔽事件だったことの続き。来週月曜日(12月11日)に原子力規制委2人が柏崎刈羽原発に足を運んで確認する「追加検査」と「適格性の再確認」とは何なのか。2017年に遡って記録する。


初代・原子力規制委員長の7つの「基本的な考え方」

2017年12月27日、原子力規制委員会は、柏崎刈羽原発6、7号機の設置変更を東京電力に許可した。経過措置のある新規制基準以外の適合性を判断したことになる。

ただし、田中俊一・初代原子力規制委員長はその5ヶ月前、7月10日に東電に、福島第一原発の廃炉をやりきる覚悟と実績を含め7つの「基本的な考え方」を示して回答を求めていた。

国立国会図書館所蔵2017年7月10日原子力規制委員会の参考資料「基本的考え方」。
議事録を追えば、「基本的考え方」を田中俊一委員長(当時)が東電社長に突きつけたことがわかるが、資料としては日付もクレジットもない、読み人知らずの怪文書状態だ)

田中委員長(当時)は、上記の一番目についてこう語っている(*)。

田中委員長(当時):福島第一原子力発電所の廃炉を主体的に取り組んで、きちっとやるという覚悟と実績を示していただくということです。これについて、私どもがこれまで1F(福島第一原子力発電所)の廃止検討会、更田委員を中心として随分議論して進めているわけですけれども、汚染水のトリチウムの問題、トリチウム処理水の排水の問題、それから、デブリ取り出しについての格納容器の調査、あるいは、汚染水と関係しますけれども、凍土壁の問題、それから、もろもろの廃棄物の問題、余りにも多くの課題を抱えていて、正直言いまして、東京電力の主体性というのがさっぱり見えないというところがあります。そういう点について、私どもは非常に危機感を持っているのですけれども、東京電力のお考えをお聞きしたいと思うのです。

2017年7月10日原子力規制委員会議事録

東電社長の7つの回答を受けた「適格性判断」

これに、東電社長は2017年8月25日に「本年7月10日の原子力規制委員会との意見交換に関する回答」を提出。8月30日原子力規制委員会で社長がそれを説明した。

これを受けて原子力規制委員会は、「東京電力については、柏崎刈羽原子力発電所の運転主体としての適格性の観点から、原子炉を設置し、その運転を適確に遂行するに足りる技術的能力がないとする理由はないと判断」し、設置変更(2017年12月27日)を許可した。流れは以下の通り。

出典:保安規定第2条「原子力事業者としての基本姿勢」遵守のための取組状況について

柏崎刈羽原発の保安規定第2条に反映

東電は社長の7回答をその後、「原子力事業者としての基本姿勢」として、柏崎刈羽原発の保安規定第2条に反映することになった。最終的に、2020年10月30日、原子力規制委員会は、保安規定の変更を認可したが、不正ID事件はこの1ヶ月前、9月20日起きていた。

出典:「保安規定第2条「原子力事業者としての基本姿勢」遵守のための取組状況について」に筆者加筆

冒頭の答え:「適格性の再確認」とは

そして、2021年に不正ID事件が明るみに出て、大騒動となり、次のコマで書くが「原子力規制検査」とその「追加検査」で2年が経過。

そして、2023年6月22日、原子力規制委員会と東電経営層による意見交換で、原子力規制委員会が指示、2023年7月12日に原子力規制庁が提案した「平成29年の適格性判断の再確認の進め方」が了承された。「以下の3つを踏まえ、総合的に判断」すれば、東京電力は柏崎刈羽原発を運転する適格性があると再確認されたことになる。以下の3つとは次の通り。

1 柏崎刈羽原発に対する原子力規制検査(基本検査)における検査指摘事項
2 追加検査の結果(原子力安全への影響)
3 東京電力における保安規定第2条の「原子力事業者としての基本姿勢」遵守

平成29年の適格性判断の再確認の進め方」(2023年7月12日原子力規制庁)より

複雑だが、冒頭で述べた「追加検査」と「適格性の再確認」とは何なのか、のうち「追加検査」の結果は「適格性の再確認」に含まれている。

上記3つのうち、1と2に関するものが2023年12月6日原子力規制委員会での追加検査の結果の報告で、上記1、2、3を含めたものが、平成29年の適格性判断の再確認に係る原子力規制庁による確認結果(2023年12月6日)となる。

冒頭の答え:「追加検査」とは

ここまで読んで下さった希少な方々(感謝!)でさえも集中力が切れてもおかしくないので、一旦、ここで切る。冒頭に述べた「追加検査」とは何かは次のコマで書く。

(*)【余談】現・原子力規制委員長の「基本的な考え方」

ちなみに2023年12月6日の定例会見で山中・現委員長の認識を尋ねた。

○記者 6年前に規制委員会がこの7つの約束をさせたのは、東電が原発事故を起こした事業者だからというふうに理解していますが、それでよろしいでしょうか。
山中委員長 福島第一原子力発電所の事故を起こした事業者であるということと同時に、これまでもやはり幾つかの不祥事を起こしておりますので、そういった特別な事業者だということで、ほかの事業者には用いていない項目を技術的な能力の審査の中で見たということでございます。
○記者 「ほかの」というのは、事故後にということですか。事故前にもあったということでしょうか。
○山中委員長 事故前にということです。

2023年12月6日定例会見録 p18より

【タイトル写真】

保安規定第2条「原子力事業者としての基本姿勢」遵守のための取組状況について」(東電、2023年8月31日)に赤い吹き出しなどを筆者加筆。


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