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ユニバーサルデザインの強化書 242 ユニバーサルデザインとインクルーシブデザインの違いとは?
ユニバーサルデザインとインクルーシブデザインの違いとは?
はじめに
デザイン分野において「ユニバーサルデザイン」と「インクルーシブデザイン」は、共に多様性を尊重し、可能なかぎり誰にとっても利用しやすい製品・サービス・情報・環境の実現を目指す重要なアプローチです。
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しかし、これらはしばしば混同されがちです。両者の本質的な違いを理解するためには、それぞれの概念が指向する「目的」と「手法」の違いに注目する必要があります。本コラムでは、ユニバーサルデザインを「目標のデザイン」、インクルーシブデザインを「プロセスのデザイン」と捉える視点から、両者の役割と相互関係について考察します。
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ユニバーサルデザイン:
目標としてのデザイン
ユニバーサルデザイン(Universal Design)は、「誰もが公平に使えることを目指した最終的なデザインの形」を指します。この概念は、アメリカ建築家ロナルド・メイスによって提唱され、特定の利用者層に限定することなく、広く普遍的な利用を可能にするデザインを目標としています。具体的には以下のような7原則に基づいています。
ユニバーサルデザイン7原則
1:誰でも公平に利用できること
2:使う上で自由度が高いこと
3:使い方が直感的ですぐわかること
4:必要な情報がすぐに理解できること
5:うっかり失敗や危険につながらないこと
6:少ない力でも楽に使用できること
7:アクセスしやすいスペースと大きさが確保されていること
これらの原則は、ユニバーサルデザインが「最終的に到達すべき理想の形」としての性質を持つことを示しています。たとえば、公共の施設や製品が、障害の有無に関係なく、すべての人にとって利用可能である状態が目指されるのです。
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インクルーシブデザイン:
プロセスとしてのデザイン
一方、インクルーシブデザイン(Inclusive Design)は、「多様なニーズを持つ人々をデザインプロセスに参加させるアプローチ」として定義されます。これは単に製品や環境をつくるだけでなく、その過程でユーザーとの協働や共創を重視します。イギリスのHelen Hamlyn Centre for Designが提唱するインクルーシブデザインの実践例は、以下のようなステップを含みます。
1.多様な声を取り入れる:
高齢者や障害者など、デザインによる恩恵を最も受ける人々を積極的にプロセスに巻き込む。
2.課題の本質を把握する:
利用者の視点を理解し、体験を共有することで、課題の本質を把握する。
3.フィードバックを繰り返す:
試作品を通じてユーザーのフィードバックを受け取り、改善を重ねる。
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インクルーシブデザインは、デザインそのものが進化していく「プロセス」を重視しており、完成形というよりも、デザインを通じた対話や実験の連続と言えます。この点で、インクルーシブデザインは、ユニバーサルデザインの「目標」に向かうための実践的な手法と位置づけることができます。
両者の相互関係
ユニバーサルデザインとインクルーシブデザインは、対立する概念ではなく、むしろ補完的な関係にあります。ユニバーサルデザインが目指す理想形は、固定的なものではなく、社会の変化や新たなニーズに応じて進化していくべきものです。
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そのためには、インクルーシブデザインが提供する「多様な声を取り入れるプロセス」が不可欠です。逆に、インクルーシブデザインのプロセスは、明確な目標としてのユニバーサルデザインを指針とすることで、より実効性を持った成果を生むことができます。
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結論
ユニバーサルデザインとインクルーシブデザインを「目標」と「プロセス」として理解することで、両者の違いだけでなく、それぞれの重要性を再確認することができます。ユニバーサルデザインは、誰もが利用可能な理想的な環境を目指す「目標」であり、インクルーシブデザインはその目標に向けた「プロセス」を提供します。この視点を共有することで、社会全体が多様性を尊重した持続可能なデザイン文化を築く一歩となるのではないでしょうか。
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