文学フリマ京都、作品紹介
文学フリマ京都の準備を少しずつ進めています。
ちょっと宣伝多めになりますが、ご容赦を。
作品の紹介をさせていただきますね。
ソナチネ
こちらは8つの短編集。83ページ。
目次・・・・・・・・
・雪解け
・たんぽぽ幻想曲
・雨の日の子守歌
・ひぐらしのカノン
・哀歌
・無題
・風のロンド
・空色のピアノ
最後の2作は童話です。これは2,3年前に書いたものを加筆、修正したものです。
残りの6作は書き下ろしです。
それぞれ3000字程度のごく短い短編で、季節を織り込んで書きました。
風の匂いや蝉の声、雨の音を感じながら小さな世界に浸っていただければと思っています。
小学校の高学年から読んでいただけます。
少しだけ、中身を紹介します。
〈たんぽぽ幻想曲〉
―-宿題のない春休みがやってきた。今日はお母さんの妹である、ふくちゃんが朝から家に来ていて、一緒にお昼ご飯を作ることになっている。ふくちゃんに会うのはお正月以来だった。
「あみちゃん、もう五年生かぁ。また背が伸びたんじゃない?」
ふくちゃんはお正月のときも同じことを言った。
「そうかなぁ」
わたしが答えるとふくちゃんは日焼けした顔でにっと笑った。ふくちゃんとお母さんは全然似ていない。お母さんはどちらかというと色白で口も小さめだけれど、ふくちゃんの肌はいつでもこんがり焼けたパンみたいな色をしているし、笑うと不思議の国のアリスに出てくるチェシャ猫みたいになる。ふくちゃんが持ってきたビニール袋の中には、たんぽぽがたくさん入っていた。 ―-つづく
川の声
こちらは、原稿用紙30枚の作品です。
私小説に近くて、舞台は昭和の終わりごろ。
少女を取り巻く友情や家族の物語です。
冒頭を少し紹介いたします。
〈川の声〉
―-ふいに背中に犬の気配を感じたような気がして、朝子は振り返った。お盆を過ぎてもなお、照り付ける太陽が田舎のアスファルトを焼いている。犬はいなかったが、振り返った拍子に汗が入ったのか、急に目に痛みが走り、朝子は半袖の先で汗を拭いながら、家までの道を急いだ。背中に張り付くランドセルの間にときどき空気を入れるように飛び跳ねながら、家に帰るまでどうか犬が現れませんようにと、祈るような気持ちで歩いた。
―-つづく
まだ野良犬がいた時代の話です。本当に怖くてたまらなかったのが懐かしい思い出です。(そのせいか未だにちょっと犬は怖かったりします)
田舎だったせいなのか、生も死も身近にありました。そんなお話です。
フリマ詳細
フライヤーはこちらです。webでも見られます。
文学フリマ京都の詳細はこちら。
ジャンルは純文学になっていますが、自分の作品が何に属するのかよくわかっていません。
どんなジャンルであれ、情景や人物が読んでいただく人の心にほんの少しでももたらす何かがあればと思っています。
大人になったきみに。
子どもだったあなたに。
子どもに戻りたいきみに。
まだあなたの心の中にいる、小さなきみに。