見出し画像

森羅万象膝枕現象─人参膝枕「にんげんは、ほぼにんじん」

1周年フェス中に「膝人参」現る 

2021年5月31日からclubhouseで続いている「膝枕リレー」(詳しくは自称広報の膝豆さんのlitlinkをどうぞ)が1周年を迎えた。誰かが読んでくれたらと公開した短編小説「膝枕」を読む人、聴く人、さらに思いがけないことにアレンジ作品や外伝を書いてくれる人が集まり、輪が広がっていった。

お互いを面白がり、拍手を贈り合う温かくて和やかな世界。「膝枕リレー」はゆるやかに形を変えながら成長する広場のような場所になった。遊具もイベントもその日の話題も持ち寄りで、ルールはとくになく、そこに行けば誰かが何かやっていて、楽しい気持ちになって帰っていける。

膝枕にのめり込むと、膝センサーの感度が上がり、なんでも膝に結びつけてしまう膝反応が現れる。そんな症状も面白がる膝枕erたち。故郷あるあるで盛り上がる県人会のように、膝あるあるで「ナカーマ!」と意気投合する。

そこから膝新語や新作が生まれ、走り続ける膝枕リレーの燃料がくべられていく。

1周年を記念した1週間の記念フェス(愛称「膝フェス」)期間中は、膝枕erたちの膝反射(隙あらば膝‼︎)がいつも以上に発揮され、膝枕リレーがさらに勢いづいて2年目に突入したのを感じた。

5月7日にパートナーの川田修さん(出版界のおやっさん)とイチャコラな「膝浜」でデビューし、おやっさんとふたり揃って「お膝にはまって、さあ大変」なオリエさん(膝番号132)は6月4日、「膝人参?」のコメントをつけて人参の写真をツイートした。

丸っこくて先が分かれ、正座した腰から下のような形。はちきれんばかりの太もも。まるで「ぽっちゃり膝枕」。

オリエさんは続いて「膝枕してもらう人参」の写真をツイート。

よくある形の人参の真ん中あたりから下が割れていて、二本足ができている。その人参が丸っこい人参に頭を預けているように見える写真。

人参が人参に膝枕されている‼︎

オリエさんによると、スーパーで買った袋詰めの人参たちらしい。オリエさんは引き寄せ力の強い人だが(なにせclubhouseでパートナーのおやっさんを引き寄せている)、膝フェス期間中に膝人参を引いてくるのがさすがだ。

隙あらば膝。すかさずのっかろうではないか。

今井雅子作「人参膝枕『にんげんは、ほぼにんじん』の巻」

休日の朝。スーパーの不揃い野菜コーナーで、子どもが母親に聞いた。

「お母さん、『にんげん』と『にんじん』って似てるよね」
「そうだね。名前は似てるね」
「4文字中3文字同じだから75%同じだね」
「75%。結構似てるね」
「違うのは『げ』と『じ』だけど、ふたつとも濁点がついてる」
「じゃあ75%より似ているね」
「80%くらい同じだね。『け』の左側は『し』に似てる」
「そしたら80%より似ているね」
「90%くらい似てるね」
「にんげんは、ほぼ、にんじんだね」
「実はね、もっとすごいことに気づいちゃったんだ」
「もっとすごいこと?」
「『にほんじん』の中に『にんじん』が隠れてる」
「『にほんじん』の中に『にんじん』。ほんとだ」
「『にほんじん』は『にんじん』に『ほ』をくっつけただけだよ」
「じゃあ、『にほんじん』は、ほぼ『にんじん』だね』
「他にも『にんじん』が隠れてる言葉を見つけたよ。『にほんじかん』『にんじゃずかん』『にんじょうかみふうせん』」
「どこにも隠れているんだね、にんじんは。忍者みたいだね」
「『人情紙風船』って昔の映画だよ。『にほんのえいがじん』の中にも『にんじん』が隠れてる」
「にんじんって、すごいんだね。シチューや肉じゃがにしとくの、もったいないね」
「お母さん、にんげんも膝枕するのかな」
「するんじゃないかな」
「にんげんは、ほぼ、にんじんだもんね」
「そうだね。ほぼ、にんじんだもんね」

休日の朝。スーパーの不揃い野菜コーナーで、人参の親子はおしゃべりを続ける。子どもが何を言っても母はうなずき、そのたびに、子どもの頭の下で、ぽっちゃりした膝が小さく揺れる。

「人参膝枕」大喜利

膝枕リレー1周年記念フェスの1週間がフィナーレを迎えた2022年6月5日、「人参膝枕」を書いて下書きに入れた。noteの「膝枕と派生作品」マガジンにまとめた作品が98本になっていた。

フェス中に100本に届くと美しいなと思い、あと1本となったときのために「人参膝枕」をスタンバイさせていたら、夜に膝開き(初演)をした2本が公開され、100本を超えた。

さらに、きぃくんママの1本を加え、101本。このnoteを加えると、102本。note以外の場所で発表されたものも足すと、煩悩の数くらいにはなっているかもしれない。

膝フェスフィナーレのルームで下間都代子さん(膝番号3)と「膝枕リレー2年目どうなる?」を話した。

都代子さんは膝フェス中に川上徹也さんと「膝浜」を上演。川上さんは膝番号135番(ヒサコ)で膝枕リレーのデビューを飾った。「膝浜」に新刊の『すごいタイトル㊙法則』を入れ込み、膝枕にタイトルをつけて売り出したら大当たりというアイデアが秀逸。

都代子さんが『ユダヤ人大富豪の教え』の本田健さんや『3日で運がよくなる「そうじ力」』の舛田光洋さんにも膝枕営業をかけてくれ、2年目は「著者が自分の著書を入れ込んだ膝枕アレンジ作品」が増えそうな予感。

わたしは1年目以上に膝枕iterさんが参加しやすいようにしたいと話した。5月30日に公開した「七五調膝枕」のアレンジが続々生まれているのを見て感じたのだが、一から作るより、あるものをいじるほうがとっつきやすい。

膝人参の写真から物語を膨らませる形は、どうだろう。時間のない膝枕iterさんはもちろん、まだ膝枕iterデビューしていない人にも「これならできるかも」と思ってもらえるかもしれない。

人参ふたりの関係を想像するところから、物語は始まる。

親子なのか、恋人なのか、夫婦なのか。
行きずりなのか、見知らぬ者同士なのか。
お金を払って膝枕されている関係なのか、
転生したら人参だったのか。

ふたりはこの体勢になって、どれくらいなのか。
一瞬なのか、一時間なのか、
溶け合って離れられない状態なのか。

「?」の数だけ物語は生まれ、それを読む人、聴く人の数だけ「!」が生まれる。

「写真はご自由にお使いください、と膝人参たちが申しております」とのこと。作品を公開される際にタイトルを入れたり、内容に合わせて写真を加工したり、膝コラ作品にも期待。

オリエさんがツイートした「膝枕される人参」。木のテーブルの上に、人参ふたり。コロンと丸っこい人参(先が割れていて正座した腰から下に見える)に頭を預けるように、乗っかっている人参(よくある形で、真ん中から脚のように二股に割れている。先っぽから白い根っこが出ている)

「料理の素材ではなく物語の素材に」
「人参冥利」

素材を提供してくれたオリエさんうまい! 

膝開きで年少さんバージョン誕生

noteを公開した6月6日、京都の中原敦子さんが早速膝開き(初演)してくれた。

小学校に上がる前のような幼い子どもが可愛い。

聴きながらちょこちょこ手直し。オーディエンスのふみさんから「濁点が同じっていうところが、点々っていう方が子どもっぽいかな」とチャット欄に感想が。

確かに大人でもあまり言わない。子どもが言うなら「点々」。でも、『人情紙風船』を知っている渋いお子ちゃまなので、オリジナル版の「濁点」は残しつつ、子どもの年齢を下げた年少さんバージョンを作ってみた。

今井雅子作「人参膝枕『にんげんは、ほぼにんじん』の巻」年少さんver.

休日の朝。スーパーの不揃い野菜コーナーで、子どもが母親に聞いた。

「おかあさん、『にんげん』って『にんじん』のこと?」
「にんげんとにんじん? どうして同じって思ったの?」
「なまえがにている」
「そうだね。名前は似てるね」
「に・ん・げ・ん。に・ん・じ・ん。4つのもじのうち3つがおんなじ」
「結構似てるね」
「ちがうのは『げ』と『じ』だけ。どっちもてんてんがついてる」
「ほんとだ。そこも似ているね」
「『け』のぼうと、『し』もにてる」
「似てるね」
「『にんげん』は、『にんじん』のことだね」
「そうだね。『にんげん』は、ほぼ『にんじん』だね」 
「あとね、もっとすごいことに、きづいちゃった」
「もっとすごいこと?」
「『にほんじん』のなかに『にんじん』がかくれてるんだよ」
「『にほんじん』の中に『にんじん』。ほんとだ」
「『にほんじん』は『にんじん』に『ほ』をくっつけただけだよ」
「へーえ。よく気づいたね』
「まだあるよ。『にんじん』がかくれてることば。えっとね。『にんじゃずかん』」
「に・ん・じゃ・ず・か・ん。に・ん・じ・ん。ほんとだ。隠れてる」
「にんじんって、すごいよね」
「シチューや肉じゃがにしとくの、もったいないね」
「おかあさん。にんげんも、おひざがすきなのかな」
「そうねえ。すきなんじゃないかな」
「にんげんは、にんじんだもんね」
「そうだね。にんげんは、ほぼ、にんじんだもんね」

休日の朝。スーパーの不揃い野菜コーナーで、人参の親子はおしゃべりを続ける。子どもが何を言っても母はうなずき、そのたびに、子どもの頭の下で、ぽっちゃりした膝が小さく揺れる。

親子が「母親と子」とは限らない

「父親と子」の親子だったっていいじゃないか、と父親バージョンを読んでくれたのは関成孝さん。そういう声を待ってました。そもそもスーパーの不揃い野菜売り場で会話している親子が「人間」という前提から崩しにかかっているお話。常識からどんどん解き放たれて、自由に遊んでいただけたらうれしいです。

おばあちゃんやおじいちゃんと孫の組み合わせも、もちろんあり。

『人情紙風船』と聞いて、山中貞雄の映画を封切りで見ていたおばあちゃん人参が孫人参に「恋人と二人で観に行ったんだよ。おじいちゃんと出会う前のことだよ」と思い出惚気話を語るバージョンを考えていたら、「山中貞雄の無声映画の脚本を活弁したことがあります!」という活動弁士の縁寿さんが「山中貞雄入れ」バージョンを演ってくださった。

『人情紙風船』も山中貞雄も知らない親に子どもがウンチクを語る、というのが面白い。縁寿さんの差し込み原稿を合体させたバージョンをこちらにて公開。本文の太字部分が縁寿さんによる山中貞雄入れ。

今井雅子作「人参膝枕『にんげんは、ほぼにんじん』の巻」に活動弁士・縁寿による山中貞雄入れ

休日の朝。スーパーの不揃い野菜コーナーで、子どもが母親に聞いた。

「お母さん、『にんげん』と『にんじん』って似てるよね」
「そうだね。名前は似てるね」
「4文字中3文字同じだから75%同じだね」
「75%。結構似てるね」
「違うのは『げ』と『じ』だけど、ふたつとも濁点がついてる」
「じゃあ75%より似ているね」
「80%くらい同じだね。『け』の左側は『し』に似てる」
「そしたら80%より似ているね」
「90%くらい似てるね」
「にんげんは、ほぼ、にんじんだね」
「実はね、もっとすごいことに気づいちゃったんだ」
「もっとすごいこと?」
「『にほんじん』の中に『にんじん』が隠れてる」
「『にほんじん』の中に『にんじん』。ほんとだ」
「『にほんじん』は『にんじん』に『ほ』をくっつけただけだよ」
「じゃあ、『にほんじん』は、ほぼ『にんじん』だね』
「他にも『にんじん』が隠れてる言葉を見つけたよ。『にほんじかん』『にんじゃずかん』『にんじょうかみふうせん』」
「どこにも隠れているんだね、にんじんは。忍者みたいだね」
「『人情紙風船』って昔の映画だよ。『にほんのえいがじん』の中にも『にんじん』が隠れてる」
母「えーー。『人情紙風船』それ、昔の映画? お母さん知らないなぁ」
子「知らないの?!    お母さん!『まぼろしの天才映画監督』と言われた、山中貞雄の遺作だよ」
母「『遺作』って、その人死んじゃったの?!」
子「うん。日中戦争で昭和13年に戦病死したんだよ。未だ28歳だったんだよ。わかりやすく言うと、黒澤明監督のひとつ歳上だね」
母「ちっともわかりやすくないわよ。あんたって誰に似たのかしらね?! よく知ってるわね〜。でも、
にんじんって、すごいんだね。シチューや肉じゃがにしとくの、もったいないね」
「お母さん、にんげんも膝枕するのかな」
「するんじゃないかな」
「にんげんは、ほぼ、にんじんだもんね」
「そうだね。ほぼ、にんじんだもんね」

休日の朝。スーパーの不揃い野菜コーナーで、人参の親子はおしゃべりを続ける。子どもが何を言っても母はうなずき、そのたびに、子どもの頭の下で、ぽっちゃりした膝が小さく揺れる。

clubhouse朗読をreplayで

2022.6.10 中原敦子さん(1時間13分頃から にんじん→新美南吉「でんでんむし」→年少版)

2022.6.11 鈴蘭さん

2022.6.15 宮村麻未さん

2022.7.18 水野智苗さん

2022.7.18 Rie Ooyamaさん(137膝目デビュー)×堀部由加里さん

2022.7.18 関成孝さん「父子バージョン」

2022.7.21 水野智苗さん誕生日記念

2022.7.28  きぃくんママ(年少さん) 縁寿さん(山中貞雄入れ)

2022.8.10 関成孝さん(膝番号70)膝デビュー1周年記念

2022.10.12 ふじこさん&kanaさん(膝枕リレー500日記念)

2022.10.15 水野智苗さん×お誕生日のダイジュさん

2022.10.25  鈴木順子さん×おもにゃん

2023.6.13 水野智苗さん

2024.2.22 YUMIKOさん(165膝目デビュー)


この記事が参加している募集

目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。