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歩く速さで句読点つけて─旅と暮らしの本屋「an、dan、te。(アンダンテ)」

11月15日、旅と暮らしの本屋「アンダンテ」がオープンした。

オープン前日、プレオープンにお邪魔した。

an、
dan、
te。

旅と暮らしの本屋
「アンダンテ」にようこそ。

アンダンテは、音楽の速度記号のひとつで、
「歩くような速さで」という意味です。
スピードや効率が求められがちな現代ですが、
旅に出たり、本を読んだり、
そんな時間も大切にしたいですね。
旅も暮らしもアンダンテ。
どうぞごゆっくりお過ごしください。

英語のロゴは「an、dan、te。」。日本語表記は句読点なしの「アンダンテ」だけど、気持ちは「アン、ダン、テ。」。句読点をつけてアンダンテの速さで歩き回りたい本屋さん。

映画の関係者試写と同じく、プレオープンに招かれて一足先に披露された人たちは、いち早く「こんなのできました!」を広めるべしの期待を持ち帰る。

noteをすぐに書くつもりだったのに、あっという間にオープンから1 週間あまり。でも、お店の名前は「アンダンテ」。急がなくていい。きっと息の長いお店になるはず。

「産婆フジヤン」みっけ

「アンダンテ」がオープンしたのは、旅と暮らしの出版社「産業編集センター」の1階。会社で手がけた本を飾っていたら、本屋さんだと思って入ってくる人が後を絶たず、だったら本屋を開いてみようとなったらしい。

角地に立つ「アンダンテ」。ウィンドウ越しにお祝いの花と本棚が見えて華やか。

産業編集センターは「産婆フジヤン」の出版社。現役最高齢の助産師だった坂本フジヱさんの子育て本シリーズを手がけていて、次は坂本さん自身の一代記をとなったとき、わたしに声がかかった。

編集の松本貴子さんと和歌山県田辺市の助産所へ泊まり込み取材に行き、お話をうかがい、本にまとめた。

並べたての本の中に「フジヤン」みっけ。棚差しではなく顔を向けているのもうれしい。

右隣はフジヤンこと坂本フジヱさんの『大丈夫やで〜ばあちゃん助産師せんせいのお産と育児のはなし〜』。左隣は伊藤亜和さんの『存在の耐えられない愛おしさ』。noteの文章の引力にびっくりした人なので、お隣に立たせてもらえてうれしい。手前は『暮らしの道具と日用品カタログ』。

フジヤンのご縁という贔屓目を抜きにしても、並べられている本の「読みたい率」のなんと高いこと。書評で見て気になっていた本。表紙に惹かれる本。どんどん両想いになってしまう。

「旅」の本

「旅と暮らしの本屋」さんなので、「旅」の本、かなり充実。

知らない本だらけでタイトルを眺めているだけで楽しい。本のタイトルを巡るのも旅。内容を妄想するのも旅。

「目的別」「旅」の棚。

産業編集センターさんの得意分野、旅行・紀行は、さすがの品揃え。

「忍者の里を旅する」「平家 隠れ里」「日本の海賊」など写真紀行本

国別の棚も楽しい。北欧、特にフィンランドの本がずらり。初めて見るタイトルだらけ。「フィンランド語は似ている言語がなくて孤独なんだ」と留学先で知り合ったフィンランド人の男の子が言って、「日本語だって孤独では負けてませんよ」と張り合ったのを思い出す。

台湾×食べ物コーナー。台湾と言ったら、おいしいもの。コロナ前に行った台湾で食べた小籠包や魯肉飯の味が蘇り、タイトルを見ているだけでお腹が空く

「旅と暮らしの本屋」さんなのに、友人に知らせるときは、つい「旅と食の本屋さんができたよ!」と言ってしまう。わたしにとって「暮らし≒食」だし、「食」にまつわる本もとても充実しているので、印象的には間違っていない。

「オールド台湾食卓記」「台湾の朝ごはんが恋しくて」「おいしい台湾」「味の台湾」「台湾の
おいしいおみやげ」

「冒険者たちの系譜」コーナー。旅も冒険。

本屋さん愛があふれてる

「本屋さん」についての本、よりどりみどり。本が好きな人たちが作った棚という感じがする。

コロナ禍以降、本屋さん閉店のニュースが相次ぎ、またか、仕方ないのかと淋しくなったりため息ついたりしてたけど、こうして生まれる本屋さんもある。

本屋さん。肉屋さん。魚屋さん。酒屋さん。花屋さん。お店に「さん」をつけるのは、全国共通なんだろうか。お粥に「さん」をつけたり(おかいさん)、飴に「ちゃん」をつけたり(飴ちゃん)するのは大阪独特かも。

「日本の小さな本屋さん」「ちょっと本屋に行ってくる。」「本屋で待つ」「坂本図書」など。
「美しい本屋さんの間取り」「世界の美しい本屋さん」「書店員は見た!」「しぶとい十人んお本屋」「本屋のない人生なんて」「新聞記者、本屋になる」など。

おくりものにしたい本

「アンダンテ」での最初の一冊に買い求めたのは、新聞の書評で気になっていた『翻訳できない世界のことば』。カラーで見ると絵も楽しい。

他にも手元に置いておきたい美しい本がたくさんあり、目移りしてしまう。本はそばに置いておくだけで豊かになれるから大いに積読すべしという趣旨のツイート(京極夏彦氏の発言をどなたかが紹介していた)を少し前に見かけたが、本の間を歩いているだけで満たされた気持ちになる。

目当ての本を見つけてレジにまっすぐ向かうのは、もったいない。寄り道して長居して、いつもなら手に取らない本を連れて帰りたい。旅先の出会いみたいに。

『翻訳できない世界のことば』は、おくりものにするのも良さそう。子ども向けの本、クリスマスの本も揃っていて、サンタさんにもおすすめ。

タイトルを追いかけ、にじにじ横歩きして、アンダンテよりさらにゆっくり見て回った。句読点もたくさん打てた。滞在時間を多めに見積もって、出かけたい本屋さん。

旅と暮らしの本屋 アンダンテ
都営三田線「千石駅」A4出口より徒歩2分
JR山手線「巣鴨駅」南口より徒歩10分
営業時間:10:00 – 20:00
定休日:毎週水曜日


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脚本家・今井雅子📚劇作家協会リーディングフェスタ「納期」配信3/31まで🎙️膝枕リレー1300日超え
目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。