デンマークにある世界一美しいルイジアナ美術館は、一日中過ごしたくなるオトナのディズニーランドでした!
デンマークレポートも、ついにこの回が来てしまいました。今回取り上げるのは、ルイジアナ近代美術館。これまでいろんな国でいろんな美術館へ行きましたが、この美術館は、圧倒的!というよりも、まさに美術館を越えた美術館だったのです。
この日も日の出前に起床。毎朝目にするこの風景。屋根の向こうに煙突から煙り。ラジオを付けて、フルーツを食べる。
7時に近くのコーヒー屋 ORIGINAL COFFEEへ。外席のいかした配置に悶絶。。
ようやく日の出。連日、気持ちの良い朝です。さて出発! 駅まで徒歩で。
10分ほどで、オスターポート駅。今日は電車で移動ですよ。はじめてで、かつ各停と快速があり、おまけにデンマーク語となるとお手上げなのですが、iPhoneのグーグルマップ検索で、なんとかクリア。
オスターポート駅からは、4駅、25分。コペンハーゲンから海沿いを北上していきます。途中の駅を降りると、ヤコブセンの建築も堪能できるそうです。(LINK:北欧フィーカ|デンマーク)
あっという間に、ルイジアナ駅に到着。ホームからは、駅校舎も介さずにまちに出ることができます。ちなみに切符の確認は車内で。
振り返って駅を見る。中央の建物が駅舎です。10分ほど歩くのが住宅街なので、びっくりしてしまいました。世界中から来場者のある美術館ですから、日本ならお土産屋通りになるはずなのに。こういうところも、さすかデンマークという感じ。
は〜い! そして、ルイジアナ美術館へ到着。ここはかつて邸宅だったのですが、。オープンの10時前なのにすでに長蛇の列。ちなみに、美術館の名前は、建物の持ち主のが3回結婚を繰り返した際の妻の名前が、すべてルイーズだったことに由来しているとか。
びっくりしたのが、行列の脇で、振る舞いフリーコーヒーが! フリーの精神を持つ私たちの同士は世界にもいたのです。企業も組織もパーソナル屋台をもって振る舞うべきだというのは、まさにこのことでした。
門を入ったところには、既に作品が置かれていて、みんな触ったり、写真を撮りながらすでに興奮気味。
そう、今回の企画展は、なんと「草間弥生展」!
これがまた国内では見たことがないくらいの圧倒的な作品数で、初期のものから近作までが、一気に見られる構成。ベビーカーもいっぱい。お爺さんお婆さんもいっぱい。みんな普通にアートを鑑賞しながら、会話を楽しんでいます。作品群と同じくらい、その光景に感動。この空気、日本にはまだまだないですよね。
ペイントもあり、立体もあり。
お父さんによる子どもたちへのアツイ作品解説! このシーンひとつとっても日本には皆無。
展示室はいくつもあるのですが、自然に誘導されて階段を上がると、こんなスペースに!!!広がる絶景。。。
うぉ〜とか、うわぁ。。とか、絶叫とため息が混じります。海沿いを近所の住民が犬の散歩をしていたりもして。ここへきてこの敷地のすばらしさを知ることに。
きっとこの日ざしも計算されています。開館して一時間も経っていないのに、お爺さんはここでお昼寝。お昼寝したくなる美術館、最高です。
とにかく、どの展示も楽しい!展示は素晴らしすぎるので、省きます(笑)。
展示フィナーレも、どどーん!と。
子ども用の展示ツアーも随時開催中。それだけかと思ったら、
別のスペースには、子どものためだけのスペースが何部屋も設けられていて、連日このようなワークショップが行われています。ちなみにあまりに良すぎるので、翌々日にもこの美術館に行ってしまいました。ひとつ前の写真が日曜日の模様、そしてこの写真は、なんと平日なんですよ!
草間弥生のことを少し勉強しながら、自分も草間になってみる。いいコンテンツほど、大人もやりたくなってしまうもの。
さて、ここで終わりかと思いきや、この美術館は地形に沿うように回廊型の展示室が続きます。しかし、歩きながら移ろう風景そのものが、
もはや作品!
既存の樹木を避けるように、建物が計画されているからこそのビュー。こういった光景に、数秒おきに出会うことになるので、途中でシャッターを切るのは止めました。こんな美術館は他にありません。
そして、ジャコメッティーが展示されている有名な展示室。こういった常設展示も充実。
もはや、コトバが出ません。
そして、さらに奥へ進むと、、、
うわぁ。。。
うわぁ。。。。みんな、超絶くつろいでる。別に食事をしているという意味では、同じような光景はどこにでもあるでしょう。しかし、ここにいる大勢の人たちは皆、スーパーリラックスしている。そうすると、こんな空気になるんだって、それ自体に心から感動します。なぜかみんなここが大好きだって感じに包まれてる。混み合っていて、だいたいが相席っぽくなるのだけど、みんな譲り合って、気持ち良くコミュニケーションを取っているのも印象的で。
さらに、とどめを刺すように、ふと口に入れたサンドイッチがおいしすぎ。
ここからしばらくカフェに漂っていましたが、外にも作品があるみたいだったので、重い腰を上げてと。
海峡とアレクサンダー・カルダーの彫刻。
思い思いに過ごす人々。
カフェレストランのある丘から振り返ると、大きな中庭の斜面で、ソリ遊びをしている親子が。これは、もはや美術館ではなく、レベルの高い公園。ここから見ると美術館の建物が、ほとんど存在していないかのように、ひっそりと佇んでいることもわかります。実は斜面向こうの地下部分にも回廊と展示室があります。
この美術館は、既存樹木を避け、地形に沿うように一つひとつ丁寧に時間をかけながら、1958年から5回もの増築が行われていったそうです。エントランスやミュージアムショップは図面下の中央部分、草間展が行われていた展示スペースが右下部分、ジャコメッティの展示は図面左上「1958」部分、レストランは上部分。図面をもって館内の空間体験を想像することは、ほぼ不可能です。
回廊型の展示室は、いくつかの場所からは、外に出ることができるんです。どうやら常設で外に展示されているものを巡ることができるらしい。
たとえば、導かれるように建物の壁づてに歩いて行くと、
舳先に小さな展望台が。これ自体が作品。エースレンド海峡を一望。
振り返ると、最初にお爺さんが眠っていたところが。
けっこうハードな散策路もあって、敷地内をぐるぐるまわることができる。
合間には、たくさんの作品が。
そして、展示室に囲われるように広がる中庭。たくさんの家族が、楽しそうに散策しています。
「○○は綺麗だ」「○○は美味しい」といった、そのものだけに反応する人の感覚がある一方で、どうやら「居心地」や「豊かさ」というものを感じることは、より複合的なものごとを、まるっとひとくくりにとらえている。今回、ルイジアナ美術館に、展示、自然、食事...... すべての要素が折り重なるなかに、最高の居心地を感じながら、そんなことを考えていました。
本当にず〜っといたくなるし、帰りたくないんです。それはまさに子供のころに遊園地に抱いた感覚そのもの。まさにルイジアナ美術館は、オトナにとってのディズニーランドだったのです。ディズニーランドと同じようにルイジアナ美術館も、旅の大きな目的地になりうるし、現に世界中からの観光客にもそういう人が少なくないのでしょう。私も、コペンハーゲンに行ったついでではなく、ルイジアナ美術館へ行く目的で、もう一度コペンハーゲンへ行きたいと想っています。
おおにし・まさき(mosaki)