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「喫茶ランドリー」で働くことの「10の哲学」★2号店宮崎台で働く皆さんへ贈る「喫茶ランドリーのワーキングフィロソフィー」と目指す世界について。
「喫茶ランドリー」は、2018年1月に誕生し、2019年5月に2つめの「喫茶ランドリー」が宮崎台に誕生しました。宮崎台のアルバイト応募は、なんと短期間で150名もの応募が!その中から、地元に暮らす6名の女性たちが選ばれました。
その後、「喫茶ランドリー」での数日の研修を終えた新しスタッフたちは、新しいお店のオープンと同時に、元気に働いてくださっています。今ではオープンから1カ月とは思えないほど、オリジナルの手作りメニューが充実しているのですから、感動でいっぱいです。
でも、数日の研修ですべてを伝えることなど不可能です。だから、私たちは、定期的に通って、共にお店づくりをしていこうとしています。その一方で、通うだけでも伝えることが難しいこともあるなぁ、と思いはじめました。(今現在、帯広、東大阪、福岡、神奈川などでもプロジェクトが進んでいますが、それもまた同様のことが起こると思いました。)
だから、これからこうしてお手紙のような形で、公開型で書いていこうと思います。
今回は、私たちがこの1年、「喫茶ランドリー」を通じて、ママスタッフたちと共に自問自答しながら考え続けてきた、「喫茶ランドリー」とは、こういうコトだよね!という哲学的なことです。
もちろん、これは僕のコトバです。だから、鵜呑みにする必要はありません。大切なのは、個々の喫茶ランドリーでの体験と、ここにあるテキストを重ねて、自分なりに考え続けるということです。中には簡単に到達できないこともあるでしょう。それでも、少しずつでも理想に近づけるように……
ここに書き示したことは、「喫茶ランドリー」と、ただのランドリーカフェの境界とも言い換えられるかもしれません。それでは10のフィロソフィーのはじまりです。
このフィロソフィーは、2018年1月5日から、これまでの間に、喫茶ランドリーで働いてきた5名のスタッフ、来て下さった何万人ものお客さんたち、オーナーの田中元子、大西正紀によって、形づくられたものです。(2019/06/16)
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喫茶ランドリーのスタッフ以前に、
“ひとりの人間”でいてください
「喫茶ランドリーのスタッフなんだから」と、気負う必要はありません。ここでは「あなたのまま」で、ひとりの人間、○○さん、でいてください。
しかし、人間らしくいるというのは、我(エゴ)を出すということではありません。自分も許されている、他人も許すという前提の元に、自分らしく人間らしくあるということです。
人間らしくあれば、困った人には自然と手がさしのべられるでしょう。嬉しいことがおきれば声をあげて喜ぶに違いありません。怒りたくなるようなことが起きても、ぐっとこらえられるはずです。その時々に自然に現れる言葉や思いやりが、喫茶ランドリーの空気の基礎をつくります。生まれる「自由な秩序」「幸せな空気」が店中に伝搬していきます。
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年齢・性別・肩書きを越え
あまねく人々を受け容れる
喫茶ランドリーという舞台の主役は、お客さんと働く皆さんです。ここでの関係性は、すべての人たちが等価です。プロ店員とプロ客という関係ではありません。だから、どんな人に対しても同じ態度でいてください。年齢も風貌も肩書きも関係ありません。
そして、そこに“いぶかしげな目”は必要ありません。お客さんは多様ですから、良いひともいれば、嫌悪感をいだくようなひともいるでしょう。でも、悪気がある人はいません。悪く見えることがあるとしたら、それはさまざまな状況が、そうさせているだけ。
自分も含め、みんな凸凹で、完璧な人などは存在しません。だから、誰に対しても、すべてを受け容れてください。とにかく受け容れる。受け容れるということは、同時に自分が受け容れられるということでもあります。一緒に働く他のスタッフに対しても全く同じ姿勢が必要です。
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常に1階の外に目を向ける
常にとりこぼしている誰かを想う
「メニュー」や「看板」、かかる「音楽」、盛りつけられた「料理」、自分の「立ち振る舞い」、かける「言葉」、すべては「デザイン」です。それらが、ひとを惹き付けたとき、大きな喜びになります。
しかし、内側で起こる幸福な状態に決して満足しないでください。あなたの「デザイン」によって、入りづらく思っている人はいないでしょうか? 他者を撥ね除けていないでしょうか? 子連れのママはいますか? お年寄りは? サラリーマンのお一人さんはいますか? もしある属性の人たちがいないとしたら、それは何かが人を寄せ付けない「デザイン」になっているからかもしれません。
もちろん完璧な答えはありませんが、常に1階の外に目を向けてください。すぐ近くに孤独を抱えているひとはいないでしょうか。常に「とりこぼしている誰か」を想い、あらゆる「デザイン」の改良点について、考え続けてください。
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ひとつ目のコトバ
それがコミュニティの最初の種
喫茶ランドリーから「会話」「コミュニケーション」を取り去ると、それはただのカフェになります。
喫茶ランドリーでは、はじめての人が来店し、レジの前に立ち、数秒後にスタッフとお客さんが握手をしていたり、熱狂して盛り上がっていることがあります。洗濯を案内しながら、気付けば長話をしていることもよくあります。軒先でタバコをふかすスタッフが、ただまちを行き交う人とお話する姿もめずらしくありません。
しかし、ここで伝えたいことは積極的に話しなさいということではありません。ひとりの人間として、目の前の人を観察して、空気を読み、その場に見合った判断で、短くとも他者の人生に触れるコミュニケーションを楽しんでくださいということです。そうすれば、店内で交わされる言葉の量は、結果、通常のカフェでは考えられないほどになるはずです。そこからさまざまなものごとが生まれはじめるはずです。
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「よかったら、つかって」魔法のコトバで
「小さなやりたい」を引き出す
最初の会話が、出会って数秒後の方もいれば、1年以上かかるひともいます。とても明るい方もいれば、あまり話しかけられたくないと思っている人もいます。そこは相手を最大限に尊重してください。
その上で、「よかったら、いろんなことにつかってください」と声をかけてみる。これは魔法のコトバです。ママ会で使えるかしら? 今度誕生会で、ワークショップとかできます? 母と二人でお祝いをしたくて、ライブはできますか? 撮影で使いたいな、餃子パーティーさせてもらえます? 料理教室は?
まちに暮らす人々には、からならず「小さなやりたい」を持っています。喫茶ランドリーは、それを実現するための私設の公民館でもあります。
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「許可」ではなく「全力の応援」
アクシデントこそが、最大の喜び
ある場所で何かをやりたいとき、要望を伝え、許可をもらうことがほとんどです。でも、喫茶ランドリーでは違います。自然な会話から、その人の“やりたい”が見えたとき、「やってみましょうよ」と、声をかけます。
次に即決するのは日時。するとやりたかったことが実現するリアリティが一気に増します。はじめてのことだから不安がたくさんあるひとも、この場所ならやれそうだと勇気が湧いてきます。
喫茶ランドリーは最初の1年は自分たちでイベントはやらないと決めていました。結果、1年で大小さまざまな200以上のイベントごとが行われました。通りからそれが見えることで、アクシデントのような使われが次々と起きていきました。それが私たちの最大の喜びとなります。
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得意は、全力でやる
能動性はどんな形でも受け容れる
たとえば、料理がとても得意なスタッフがいます、絵を描くのがとても得意なスタッフがいます、高齢の方に話しかけるのがとても得意なスタッフがいます、細かい作業がとても得意なスタッフがいます、掃除が大好きなスタッフがいます……
マニュアルもルールもない代わりに、それぞれの得意を全力でおこなってもらえればと思います。私には得意がないかもという人もいるかもしれません。けど、それはそのままで良いのです。”あなたなりの得意”ということです。
そこから溢れてくる個々の能動性を、他者が否定してはいけません。これもまた必ず受け容れましょう。あふれ出た物事が少しいびつであっても、そこに生まれたものはすべてがきっと愛情があってつくられたものです。互いの能動性をリスペクトし合うことで、場の価値はどんどん高まっていきます。
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ミーティングよりも
日々の会話による合意形成
喫茶ランドリーでは、定期的なミーティングをやらないことにしました。ミーティングは、問題点を洗い出し、その課題を解決するものになりがちで、大抵の場合、クリエイティビティをほとんど発揮しません。そのくせに、やった気になるのすから厄介者です。
私たちは、そこにない「ノリ」や「ポジティブな思いつき」こそが、場を人間らしく発展させていくと考えています。しかし、喫茶ランドリーはチームで動いています。だから、合意形成をしていくコミュニケーション力がマストです。こんなメニュー、こんな企画、こんな設備はどうだろう? 日々の思いつきは、時間をかけて全員で共有していきます。立ち話の積み重ねがオススメです。
それぞれの立場はフラットですが、互いの得意不得意を見極めて、頼るべきスタッフに頼り、そのジャッジに委ねていきます。まじで!いいじゃん!やろうよ!合意形成の上にそういうノリが発露したとき、とんでもないものが生まれます。それが場を運営していく真骨頂だと思います。
- 9 -
1ミリの禁止は、100の禁止を想起させる
どんな人にも、自由なくつろぎ
「どんなひとにも、自由なくつろぎ」とは喫茶ランドリーのコピーです。
日本に生きる私たちは、無意識に実はさまざまな圧力に包まれて生活しているものです。どうして、たとえばアメリカのポートランドのようにすれ違う知らない人にも気軽に挨拶をしたり、まちに自由な空気が充ち満ちていないのでしょうか。日本のまちには、いたるところに禁止マークが貼られ、三角コーンが立っています。でも、三角コーンの多いまちではなく、私たちは樹木の多いまちに住みたいものですよね。
喫茶ランドリーには、店内に注意事項が一文字も書かれていません。それはどうしてか。禁止事項は、それひとつでも、それ以外にも許されていないことがあると思わせるからです。禁止をするくらいなら、できることを伝えましょう。「どんなひとにも、自由なくつろぎ」を、空間体験としてどう伝えるかを考えていきましょう。
- 10 -
「自由」「多様」「許容」
世界平和を目指して
これまでにも話してきた通り、喫茶ランドリーの理念の軸は「自由」「多様」「許容」です。これは株式会社グランドレベルが行うすべてのプロジェクトにも通底するものです。
喫茶ランドリーで働く人たちは、喫茶ランドリーの場の空気をつくる心臓部です。だから、その場を取り乱すようなコミュニケーションは全く相応しくありません。仮に誰かに不満ができたとしても、深く考えれば、どういうタイミングで、どういうコトバで、どう伝えるかが見えてきます。相手のことをリスペクトできれば、それが具体的に見えてきます。
喫茶ランドリーで働くことが合う人と合わない人がいるとすれば、それはミスせずきちんと具体的な仕事ができるということよりも何よりも、その部分における人間性にあります。世の中にはびこるような、怒りや嫉みの連鎖などは、喫茶ランドリーに最も必要のないものです。その負のサイクルを断つ先にのみ、世界平和はあると考えています。えっ、なんで世界平和だって!? 喫茶ランドリーと世界はすべて地続きなのです。
1階づくりは、まちづくりであり、世界の平和づくりでもあるのです。
以上、10のフィロソフィーでした。
実は、この何十倍も伝えたいことはたくさんありますが、今日はここまで。今回のお話の上で、たとえば下記リンクにある「喫茶ランドリー」のインスタグラムを、オープンした最初の日からざっと見ていただけると、より伝わるかと思います。「喫茶ランドリー宮崎台」は、5月11日のオープン以来、すばらしいスピードで日々成熟しはじめていますよね。また、そこで起き続けていくこともシェアさせていただきながら、このフィロソフィーも発展させていければ最高です!
https://www.instagram.com/kissalaundry/
というわけで、今日はこの辺で。
1階づくりはまちづくり。
大西正紀(おおにしまさき)
ハード・ソフト・コミュニケーションを一体でデザインする「1階づくり」を軸に、さまざまな「建築」「施設」「まち」をスーパーアクティブに再生する株式会社グランドレベルのディレクター兼アーキテクト兼編集者。日々、グランドレベル、ベンチ、幸福について研究を行う。喫茶ランドリーオーナー。
*喫茶ランドリーの話、グランドレベルの話、まだまだ聞きたい方は、気軽にメッセージをください!
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