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2019年のモバイルゲームデザインとプロデュースを考える(5) アズレン、プリコネ/スタリラ、中韓型スタミナ課金の仕組み

こんにちは。
前回から間が空いてしまってすみません。(そして今見たら、第4回の冒頭に明らかな書き間違いがあってすみません...)

今回で「ゲームサイクル」という切り口での考察最終回、アズレン、プリコネ回をお届けしたいと思います。

前回までのおさらい

前回までで、以下の歴史について触れてきました
・ガラケー/ブラウザソーシャル時代のバランスの良い課金設計
・パズドラの詫び石文化による無課金プレイの成立と売上のガチャ偏重化
・モンストとFGOの詫び石に寄らない無課金プレイの成立とさらなるガチャ偏重化

ここまでは日本国内で発展したゲームサイクルでしたが、これ以降中国や韓国のゲームのローカライズ運営や、それらを参考にした国産ゲームが登場し、ゲームサイクルはさらに進化を果たします。

アズレン型スタミナ課金

アズールレーン(以下、アズレン)の日本ローカライズ版運営が始まったのは、2017年9月でした。当時から、「艦これ」とテーマが被っており、パクリだなんだと言われていましたが、結局スマホで遊ぶ艦船擬人化ゲームとしてはスタンダードの地位を確立したのではないでしょうか。

当時から「アズレンはガチャが緩い」として人気が高く、実際ガチャについては無課金の範囲でそれなりにユニットを揃える事ができました。また、スキン課金を積極的に採用しており、当時の理解ではこの「スキン」が売上を支えているのではと考えていたものです。実際に、スキンによる課金はもちろん小さくはないはずで、twitterの公式情報に対するリプライでよく貼られるこちらの画像がそれを物語ります。(描かれた方の特定ができず......ご存知の方がいましたらご教示ください)

しかし今にしてみれば、アズールレーンの真の主力商品は、スキンではなく燃料(スタミナ)だったのだと思います。

アズールレーンは、当時の国内のゲームからすると考えられなかった以下の特徴を有しています。
1.スタミナ回復を1回実行した時に回復できる量が、プレイヤーLvによらず固定
2.スタミナ回復を実行するたびに回復に必要なコストが上昇していく。価格は1日一回リセット
3.建造(ガチャ)では入手できない海域(クエスト)ドロップキャラが、普通にガチャ専用キャラよりも強い

これらを組み合わせた結果起こる事が、クエストを介してランダムにキャラクターを入手できる「間接ガチャ」という仕組みでした*1。

一見優しく見えるキャラクターの入手方法ですが、イベント期間が終わりに近づくほど、後から始めた人ほど、「高額なスタミナ回復を実行しないとお目当てのキャラクターが手に入らない」ところに追い込まれます。
もしくは、計画的にゲームを遊ぶ人であれば「後で駆け込まなくて良い様に毎日少額のスタミナ回復を実行する」という思考になります。

これはどちらも、運営としては嬉しい。毎日実行してくれる人がいれば、売上が安定しますし、最後に駆け込んでくれる人がいれば、一時的な売上の上昇も見込めます。

これが、中韓式スタミナ課金の一つの形態です。

プリコネ/スタリラ型スタミナ課金

2018年、サイゲームスから「プリンセスコネクト!Re:dive」(以下プリコネ)が、エイチームから「少女 歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-」(以下スタリラ)がリリースされました。この二つのゲームはゲームサイクル面で非常に似ており、そしてどちらも元を辿れば中韓/欧米式のスタミナ課金サイクルを参考にしています。

プリコネ/スタリラの場合は、以下の特徴を持っています。
1.スタミナ回復を1回実行した時に回復できる量が、プレイヤーLvによらず固定
2.スタミナ回復を実行するたびに回復に必要なコストが上昇していく。価格は1日一回リセット
3.キャラクターを育成するためには育成素材が数百個必要になり、スタミナを使ってコツコツ集めるしかない

1と2についてはアズレンと同じで、こういう仕組みが、スタミナ課金で売上をあげるために必要だという事が見えてきます*2。

そして、プリコネ/スタリラの場合は、こうして回復したスタミナの使い道に3が用意されています。しかも、この二つのゲームはバトルスキップ機能を搭載しており、スタミナの回復から消化までが一瞬で終わります。さながら、ガラケーソーシャル時代のスタミナ課金に戻ってきた様なものです。

参考までに、プリコネでクエストをスキップし、スタミナが一瞬で溶けていく様子をご覧ください。3:25頃〜です。

もうこうなってくると、そもそもバトルは必要なのだろうか、という疑問にもたどり着きますが......。それはまた後日語りたいと思います。

まとめ

最後に、中韓式スタミナ課金を取り入れたゲーム採掘をいつもの図に表します。

この様に最近のゲームでは、ガラケーソーシャルより後の時代では軽視されていたスタミナ課金が、復活したのでした。(尚、コンテニュー課金は死んだままですが、主戦場がランキングなどにあるため、そもそもコンテニューのしようがありません)

次回予告

ここまで、特に第2回から第5回までは、課金ポイントとゲームサイクルという観点で歴史を振り返ってきました。
次回からは切り口を変えて、「なぜそのゲームを選ぶのか」というユーザーモチベーションの観点でお話をしていきたいと思います。これは、今回のゲームサイクルの図に出ている様な「ゲームサイクルを回すためのモチベーション」とは少し違う話になります。

ただしその前に、課金とゲームサイクルの観点で語りきれなかった「VIPシステム」と「FQ」について、第5.5回としてまとめて投稿予定です。

参考文献

1)間接ガチャ

2)サンクコスト課金


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