表土流失と農地開発のあれこれ(畑を耕さない不耕起栽培は有効か?)
裁判はまだ続いていますが、大きな被害を出した熱海の土石流災害(2021年7月3日 ※詳細下記)では、「太陽光発電用地の盛り土が大雨で崩れたからだ」と報道されました。
雨が降ると必ず少しの土は流されるものですが、大地が緑に覆われている所であれば、大雨が降っても、表面の土が大規模に流されることはめったにありません。
人間が手を加えたところ、つまり作物を植えるために、木を伐り草を除いて土地を裸にし、そこを耕して種を蒔くと、ちょっとした雨でも表土流失が起きます。
雨が降るたびに畑のあちこちで小規模のいわゆる土石流が起き、対策をとらなければ浸食がすすみ、次第に砂漠化していきます。
表土は色々な有機物や微生物が含まれている肥えた土ですので、その土が流失すると作物ができなくなるのです。
十トンの穀類を得るのに、一トンの表土を失っていては、持続可能な農業にはなりません。
新しい表土が回復するには何十年もかかりますから、それを知っている後継者はそんな骨ばかりになった痩せた農地なんか要らないよ、と言って農業を継ぎたがりません。
そこで、畑を耕さないで種を蒔く「不耕起栽培」の実用化が、私の住んでいたブラジル・パラナ州のマウア植民地で始まりました。
種を蒔く前に、まず畑に除草剤を散布する必要があるのですが、「ラウンドアップ(※)」が商品化された1970年ころから不耕起栽培のめどがつきました。
表土が流されないので、農家は堆肥や鶏糞や肥料を惜しみなく撒いたので、土地はどんどん肥えていき、収量も次第に増えていきました。
畑を耕さなかった結果、雨が降っても川に土砂が流れ込まなくなり、ダムの寿命が延びたと電力会社からお礼が来るというオマケまで付き、今では南米の穀倉地帯では、不耕起栽培の手法が広く取り入れられるようになっています。
日系農家の不屈の努力が実り、今では不耕起栽培発祥の地として、マウアダセーラ植民地には、<不耕起栽培記念館>が建っています。
※【熱海伊豆山土石流災害】……2021年7月3日発生。静岡県熱海市伊豆山地区の逢初川で発生した大規模な土砂災害。災害関連死1名を含む28名が死亡した。
被害者遺族らは、「土地の元・現所有者」と「静岡県と熱海市」を刑事告訴。裁判は熱海市の"“黒塗り”行政文書"の影響もあり、10年以上の長期にわたると見られる。
※【ラウンドアップ】……米モンサントが開発した除草剤。WHO傘下組織の国際がん研究機関が主成分である「グリホサート」を『ヒトに対しておそらく発がん性がある』という発がん性物質に指定した。
日本では発がん性は認められていない。
【今日の名言】
「人生は何回感激したかでその価値が決まる」
by 本田宗一郎
【名言もう一つ】
「雨の後には虹が出ます」
by 大震災の被害者をはげました人の言葉
※編集協力
和の国チャンネル