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物理学徒の仕事道具紹介

理論物理学の勉強や研究って実際何をやっているのか、あまり広く知れ渡っていない気がするので、今回は僕が研究で使用しているツールを紹介します。

これから物理学の道に進みたいと考えている方にとっては、使えるようになっておいた方がいいツールでもあるので、ぜひ参考にしてみてください。

※人によって使いやすいツールは様々ですので、あくまで一例です。


インプットのためのツール

おそらく研究をする上で一番重要になるのが、なるべく多くインプットをすることでしょう。論文のサーベイがテーマ設定のためにも、問題解決のためにも必要になります。

論文のサーベイに用いるツールはよく知られている以下のものです。

Google Scholar

詳しくはわかりませんが、Google Scholarで検索をすれば世の中に存在するほとんどすべての論文を見つけることができるのではないでしょうか。少なくとも最近のものはすべて見つかるはずです。

Google Scholarの存在は知っているけど、効率的な検索の方法については知らないという方もいるかもしれません。詳細な検索オプションや絞り込みを活用すれば目当ての論文に辿り着く可能性は高まります。検索方法のコツなどについてはネットで調べれば無数にヒットします。参考にしてみてください。

arXiv

物理や数学の論文はプレプリント(出版前の論文)がこちらのサイトに載ることが多いです。掲載される論文は査読のプロセスを踏んでおらず、そのため速報性に優れた論文公開の場として重宝されています。もちろん、研究者はarXivに論文の原稿を投げた後に、査読つきで出版するために出版社にも原稿を提出することが普通です。

毎日大量の論文が載るので全部追うのは大変ですが、研究の最前線にすぐアクセスできるということでもあるので、チェックする習慣をつけるのは大事だなと思っています。

Zotero

Google ScholarやarXivで集めた論文を整理して管理するためのツールとして、僕はこちらのZoteroをおすすめします。他にもたくさんの論文管理ツールがありますが、以下に挙げるメリットからZoteroがいいのではないかと考えています。

  • Google Chromeの拡張機能があって、論文のページをボタンひとつで保存できる。(AmazonやYouTubeのページからも保存できる。)

  • 外部のクラウドストレージに接続して、大量の論文を保存することができる。

  • pdfリーダーもシンプルで使いやすい。特に、戻るボタンにより内部リンクを踏む前のところに戻れる。

  • 階層構造を作って保存することができる。

  • 論文のbibTeXコードを自動で生成してくれる。

唯一のデメリットとしては、pdfを開いている際の消費メモリが大きい点でしょうか。パソコンの動きが若干重くなる印象があります。しかし他のpdfリーダーも消費メモリは大きいのでZoteroを選べなくなるほどのデメリットでもないかと思います。

その他

最近ではAIを用いて論文を検索するツールなども登場しています。僕はまだそれらを使いこなせていないのですが、これからの時代には必要なツールになってくるかもしれません。

consensus は会話をするように検索したい論文について質問をすると、該当する論文を探してくれるツールのようです。

iPadでのお仕事

僕はiPadも勉強や研究で使用しています。中でもGoodnotesPDF Expertは大変重宝しているアプリです。

Goodnotes6

iPadノートアプリの定番です。僕は大学1年生の夏にiPadデビューして以来、このアプリを使っています。そこからはまったく紙のノートを使わなくなりました。

iPadでの勉強・研究に欠かせない付属品がapple pencilなのですが、このapple pencilはペンと消しゴムの切り替えが本体のダブルタップで行うことができます。僕はapple pencilを使いすぎた結果、普通のシャーペンを使っても本体ダブルタップで消しゴムを出現させようとする異常者になってしまいました。

PDF Expert

iPadにもZoteroのアプリを入れることはできるのですが、外部ストレージに論文を保存している場合、iPadのZoteroで論文を直接開くことは(たぶん)できません。そこでこちらのPDF Expertを用いて、pdfを開いたりしています。

PDF Expertは外部ストレージの例えばDrop Boxに接続して、そこにあるpdfを開くことができます。pdfの編集なども簡単にできるアプリです。シンプルに使いやすいので、僕はこのアプリを使っています。

アウトプットのためのツール

理論物理の研究のアウトプットといえば、理論計算(手計算)と数値計算の2つです。手計算は紙とノート(もしくはGoodnotes)で行います。一方で数値計算はプログラミング言語を用いて、コンピュータを動かして行います。

Julia

僕がおすすめする数値計算のための言語はjuliaです。

  • pythonのように書きやすく、c言語のように速い

簡単にいうとそんな言語です。pythonはnumpyなどできちんとコードを書けば速いらしいですが、juliaはあまり気にせずfor文とかをたくさん使って書いても速いです。もちろん、ちゃんと速くなる使い方というのは存在しますが。

単純な数値計算でも便利ですし、機械学習やテンソルネットワークの計算にも使用することができます。僕も最近DMRG(密度行列繰り込み群法)などを数値計算で扱ったりしましたが、juliaにあるITensorというパッケージが最強に便利でした。

LaTeX

東大の物理学科に進学すると、ガイダンスの後に希望者にはLaTeX講習会が開かれます。それほど物理の勉強・研究に必須のツールの一つとなっているのがこのLaTeXというものです。日本語ではなぜか「らてふ」と読みます。

LaTeXは組版(くみはん)システムのことで、コードを書いて、それを文書の形にして出力します。数式や図表なども綺麗に入れることができるのが大きな特徴です。

物理では数式の入った文書を書く必要があります。wordなどでは数式を書くのが不便だし、そもそも出力できない数式もあったりするのでLaTeXが必要になります。

物理の道に進もうと考えている方は大学の1年生のうちから練習をしておくことをおすすめします。レポートなども手書きではなくLaTeXを使って綺麗に作ったりするといい練習になると思います。

Visual Studio Code (VScode)

VScodeはマイクロソフト社の作ったテキストエディタです。ただのテキストエディタではなく、多様な拡張機能があったり、GitHubとの連携などができる便利な開発環境ツールです。

僕はVScodeを次のように使っています。

  • jupyter notebookでjulia言語を動かして数値計算

  • LaTeXファイルの編集とコンパイル、pdf表示

  • GitHubと連携してファイル管理

  • 研究室の大型計算機にsshで接続する、ファイルの編集と実行

このように、あらゆる作業の場所になるのがVScodeです。VScodeを使いこなせれば作業効率が何倍にもよくなると思っています。僕自身もまだ全然プロみたいには使いこなせてはいないので、これからがんばりたいところです。

ChatGPT, DeepL, Grammarly

研究者は英語の文章をたくさん書きます。修士1年生(になる前)の僕ですら大学のプログラムへの申請書で英語のpersonal statementを書きました。もちろん論文も英語で書きます。

エッセイのような普通の書き言葉の英語の文章はchat GPT, DeepL, Grammarlyを使って簡単に書くことが可能です。手順は以下のようになります。

  1. 訳したい日本語の文章を書く。日本語特有の省略をなるべくせずに書くことに注意する。

  2. chat GPTに必要であれば条件を指定して、英語に翻訳してもらう。

  3. Grammarlyを使いつつ、自分で考えて校正をしていく。Grammarlyでの点数が95点くらいだと結構いい感じ。

  4. 出来あがった英文をDeepLに投げて、意図した日本語になっているか確認する。

これをすれば最後のDeepLの出力が最初の日本語とほぼ同等になります。もちろん英語ができる人はDeepLによるチェックはそこまで必要ないとは思います。

注意として、この方法ばかりを使っていると自分自身の英語力があまりつかないという点があります。用法用量を守ってこれらのツールを使うのがいいでしょう。

終わりに

いかがでしたか。個人的には、思ったより多くのツールのお世話になっているのだなあと実感しました。

実験をしない理論物理学者の基本的な仕事はすべてデスクワークになるので、以下に効率的にパソコンを使って作業ができるかは結構重要な観点になるのかなと思います。

これからも便利ツールなどがあれば積極的に取り入れていきたいです。

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