”心のバトン”をわたすワークショップ
ご覧くださりありがとうございます。教育心理学を専門とする大学教員,えんたです。昨年度に引き続き,大学の後援会総会にて講話する機会をいただきました。
昨年度は,親子の絆を深めるということがテーマの講話を行いましたが,今年度は,自分が大事にしていることに想いを馳せ,それを表現するワークショップを行ってみました。ワークショップを通して,次世代に“心のバトン”をわたすというのがねらいです。
ここでは,講話をする機会を得て私が考えたこと,行ったことを紹介します。コラムに寄った内容となっています。
1.講話依頼を受けて考えたこと
ワークショップで大事にしたいことって何?
私は現任校では「デザインの学び」に参加し,大学院では「協同しつつ探究的に学ぶ」ことについて研究をしています。
これまでとは異なる分野について学ぶ中で,授業や研修において「大切にしたいことは何か?」「大事なことは何か?」をよく考えるようになりました。
例えば,臨床心理学の講義では,「心理師(士)にならない学生が臨床心理学を学ぶ意義は何か?」を考え,「自分や他者に”よりそう”って何だろう?」を軸に据えて講義をするようになりました。学生のコメントや成果物を見ていると,自分ごととして捉えている様子や深く考えている様子が見受けられます。(現時点では感覚的なことなので,これについては,今年度,授業分析をしたいと思っています。)
こんな感じで講義をしているので,今回の講話でも,まず自分なりに問いを立て考えてみることにしました。
問い:どんな人が講話を聞きに来てくださるのだろうか?
・日々を忙しく過ごす学生の保護者
・日々,業務や講義等に追われている教職員
問い:参加者が「来てよかった」と思えるにはどんな要素が必要だろう?
・誰もが取り組みやすい質問(テーマ)であること
・自分について考える質問(テーマ)であること
問い:私は,参加者に何を伝えたいのだろうか?
・教職員も保護者と共に,学生の学びや育ちを支えていること
・価値観は多様だからこそ,いいこと
問い:参加者とどのような時間を共有したいのだろうか?
・自分が大切にしていることは何かを穏やかに考える時間
・娘(学生)のことをゆっくりと考える時間
こんな風に問いを立てて考えてみると,私が講話する時に大事にしたいことが見えてきました。
”心のバトン”をわたす場を,みんなで創りたい。
学生も保護者も教職員も,日々を忙しく過ごしています。学生は,就職活動や教育実習を頑張っていますし,来校される保護者の多くは,休日を返上していらっしゃることでしょう。教職員も,日々の業務,講義,指導,会議などがある中で,参加しています。
慌ただしい日々の中では,自分のこと,娘のことを考える時間はそれほど持ててはいないはずです。学生(娘)へ伝えたい想いはあるはずなのに・・・です。
そうであるならば,落ち着いて自分のことを見つめられる時間を設け,次世代に”心のバトン”をわたす場を創ってみよう。そんな思いから,この講話をデザインしました。
2.講話で行ったこと
講話は,以下のような順で進めました。
⑴青年期の学生の心理状態の紹介
青年期は,うれしいこと,楽しいことばかりではなく,不安や葛藤も当然のように感じていることを具体例を交えて紹介。
⑵しなやかな心を保つヒケツの紹介
ストレスマネージメントの観点から,しなやかな心を保つヒケツをいくつか紹介。具体的には,何かに没頭すること,気分転換すること,感情を共有すること、ポジティブな関わり方をすることなど。特に「ありがとう」や「うれしい」,「頼もしいよ」等の何気ないけれどポジティブなメッセージが大切であることを共有。
⑶心のバトンをわたすワークショップ
①好きな和紙を2種類選び,好みの大きさにちぎる
②和紙に,自分が大切にしていること,娘(学生)に伝えたいことを綴る
③創作物を,他の参加者と共有する
(4)ふり返る(参加者同士で感想の共有)
ふり返りで,参加者に記述アンケートを実施したところ,以下のような回答をいただきました(保護者や教職員の感想その1〜その4)。「自分が大切にしていることは何か?」,そして,「自分は娘(学生)にどんなことを伝えたいのか?」という問いについて考える時間を通して,参加者は,娘(学生)に”心のバトン”をわたしたようです。
3.ワークショップ後,”心のバトン”は娘(学生)へ
"心のバトン"は,学生がよく利用する場所や目に留まる場所に掲示しようと考えています。保護者と教職員の想いが,学生達に届けばいいなぁ,そう願っています。
4.おわりに
試行錯誤を経て,後援会当日は,講話とワークショップのハイブリッドで展開されました。ワークショップに苦手意識がある方もおられたとお察しいたします。そんな中,ご参加くださり本当にありがとうございました。
また,内容を詰めるのに協力してくださったデザインの学びを担当している岡村先生,幼児教育学科の関先生,本当にありがとうございました。今回のワークショップは、「デザインの学び」のマインドなしには作ることができませんでした。本当にありがとうございました。
さらに,当日,準備を手伝ってくださった教職員の皆様,本当にありがとうございました。おかげで,あのような温かい場が生まれました。これからもよろしくお願いいたします。