【感想】日テレ土曜ドラマ『初恋の悪魔』第2話
本題に入る前に少しだけTBS金曜ドラマ『石子と羽男』の話を。
1話完結型の連ドラには基本的にフォーマットが存在する。
『石子と羽男』の場合は身近なトラブルの法律相談の背景に社会的イシューを紐付けて描く形になる模様。
カフェで充電してたら怒られた→職場でのパワハラ
子供がスマホのゲームに多額を課金してしまった→シングルマザーの子育てや親ガチャ
第1・2話で視聴者を掴むためにも型を確立するのが定石である。
その翌日に見た『初恋の悪魔』第2話。
先週の第1話は病院で起きた事件を1時間かけて解決。
近年の坂元裕二作品には珍しく1話完結型のミステリードラマ。
かと思ったら第2話の事件は割と早めにあっさり解決。
本作の縦軸である兄弟ドラマへの布石、もっと身も蓋もない言い方をすれば前フリに後退。
「加害者を裁かないこと。被害者に同情しないこと」というルールを自ら宣言していた通り、殺人事件をドラマとして描くことには興味が無いということなのだろうか?
どうやら次回以降も事件は前フリ…?
尤も、戸惑いを多分に含んでいた第1話に比べれば坂元裕二らしさが戻ってきていた。
まずは冒頭いきなり悠日(仲野太賀)の結婚エピソード。
鈴之介(林遣都)の口からは『大豆田とわ子と三人の元夫』第1話終盤の印象的なシーンを彩った「ブランコ」というキーワードも。
離婚をテーマにした傑作ドラマを多数書いてきて今作は結婚か〜なんて思っていたら行き着いた先はオープン・マリッジ。
これは様々なリレーションシップ(家族の形)を描いてきたNetflixドラマ『マスター・オブ・ゼロ』の参照と見て間違いないのでは?
アジズ・アンサリの日本公演を観劇していた坂元裕二。
(まぁそれを言うなら『大豆田とわ子と三人の元夫』だって『マスター・オブ・ゼロ』を参照していたわけだが)
ただ、ツイッターを軽く眺めた感じ「あんなものは浮気を正当化する詭弁・屁理屈だ」という声も散見された。
まぁ確かに訴訟対策と称して会話を録音してるし後ろめたいと感じてるようにしか見えないか。
本来オープン・マリッジやオープン・リレーションシップは浮気とは異なる概念なので、今後あの悪印象の修正が図られるかは注視かなと。
坂元裕二ファンとしては本作によって変な誤解が広まる不幸だけは避けてほしいなぁ…
ファイルからはみ出るサイズの書類や大福から落ちる粉など「警察組織、ひいては社会からこぼれ落ちる人々」を描こうというほど分かり易すぎるほど分かりやすい描写も。
第1話に比べるとかなり坂元裕二の作風が出てきて見やすくなっている。
そしてクライマックスは仲野太賀の名演による悠日から亡き兄(毎熊克哉)への電話シーン。
「死んだ人にも今からだって気持ちは伝えられる」というのは『大豆田とわ子と三人の元夫』の小鳥遊(オダギリジョー)の名台詞と呼応する。
もちろんあの電話は歴代の坂元作品に何度も印象的なアイテムとして登場してきた手紙の変則パターンでもある。
表出した言動と本音は裏腹というのも坂元作品で幾度となく語られてきたテーマ。
例えば『カルテット』
ただ、劇伴から画面の色彩設計に至るまで全てが完璧だった『大豆田とわ子と三人の元夫』に比べるとまだ若干もっさりしてる感は否めない。
何だろう?
主な舞台が警察署内とリビングで狭くて殺風景だから美術を含む空間的な面白さがもう一つ出てこないのかな?
録画で見返して思うのは画面設計が平面的な気もする。
まぁ第3話も見るんだけどさ。