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【感想】Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』シーズン1
地獄が呼んでいる:S1完走。みんな大好き『新感染』のヨン・サンホによるNetflixドラマ。過去作と同じく人間の嫌な部分がこれでもかと詰まった胸糞ホラー。殺し方が容赦ない。原作未読だったので全6話の構成には驚いた。そこも含めてちょっと『デスノート』っぽい香りも。 https://t.co/sG0w75QUjT
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) November 20, 2021
近年ますます勢いを増している韓国ドラマ。
日本でも大人気だし『イカゲーム』の世界的大ヒットも記憶に新しい。
と書き出しておいてアレだが自分は韓国ドラマの熱心な視聴者というわけではない。
どちらかというと映画、特にゾンビやスリラーならまだそれなりに見ているといった程度の距離感。
その辺りは以前これらの記事で書いたので割愛。
(別に韓国ドラマが嫌いとかそういうわけでは全然なくて、単純にあまり見ていない・見てこなかったというだけです)
そんな韓国ゾンビ映画でも真っ先に名前が挙がるのが『新感染』シリーズ。
その監督・脚本を手がけたヨン・サンホがNetflixでドラマを作った。
タイトルはずばり『地獄が呼んでいる』
(原題はさらに直球で『地獄』らしい)
もうね、最高な雰囲気がビンビン漂ってるじゃないですかw
ヨン・サンホは近年こそ実写映画を撮っているが元々はアニメ出身。
韓国の庵野秀明もしくは韓国のウェス・アンダーソンといった感じ?w
実は『新感染』シリーズでも『ファイナル・エクスプレス』の前日譚をアニメで作っている。
これ中身はなかなか救いの無いキツいストーリー…
実写作品はコメディやアクション大作といった純度の高い娯楽路線が続いているが、
実はアニメ時代のヨン・サンホはこういうダークというかハードというかエグい作風が目立っている。
恐らくはこっちが本来の作家性なんじゃないだろうか。
中でもそれが炸裂しているのが2013年の『我は神なり』
選ばれしは、神の子―。「あなたの信じていることは、“本当”ですか?」
ダムの建設によって水没することが運命づけられた田舎の村に、粗暴なトラブルメーカーのミンチョルが久しぶりに帰ってくる。ところがミンチョルの妻子を含む村人たちは皆、彼の不在中に建てられた教会に通い、若きカリスマ牧師ソンを崇めていた。それがインチキ教団を率いる詐欺師ギョンソクの陰謀だと察知したミンチョルは、村人たちのなけなしの財産を狙うギョンソクの悪行を阻止しようと奮闘する。しかし村人も警察も札付きのワルであるミンチョルの言い分にまったく耳を傾けず、四面楚歌に陥った彼は“悪魔に憑かれた男”の烙印を押されてしまうのだった…。
これはねぇ…
一周して笑っちゃうぐらいエグい内容。
人間の愚かさや醜さといったところに宗教を絡めてくるのがもう…
そんなヨン・サンホの最新作『地獄が呼んでいる』は実写作品ながらアニメ時代のエグい作風に回帰している。
特に設定は『我は神なり』に結構近い。
この世のものではない"何か"が突然現れ、人間たちを地獄へと突き落とす...。人々が恐怖におののく中、この現象を神の裁きだと主張する宗教団体が台頭し始める。
原作は自ら描いたウェブトゥーン漫画ってことなので、アニメ時代の作風が出たのもある意味然るべきといったところか。
第1話オープニングでいきなり出てくるのがNetflix公式サイトのサムネイルにもなっているこのシーン。
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TBSドラマ『天国に一番近い男』よろしく「お前は◯◯日後の何時何分に死んで地獄に行く」と預言された男性が真っ黒い化け物×3体に凄惨な殺され方をする。
※こっちは「◯◯できなかったら」という条件付きだったけど、本作は無条件でボコボコにされて焼き尽くされます。
いきなりフルスロットルw
そして「これは法律で裁かれていない罪人に対する神から裁きなのだ」と主張する新興宗教団体が現れたことから物語は動き出す。
もうね、地獄ですよ。
「呼んでいる」じゃなくて劇中の現実世界がもう既に地獄。
この宗教団体がどんどん勢力を拡大して世の中がおかしくなっていく胸糞悪い描写が本当にエグい。
『デスノート』から頭脳戦の要素を引いて、人々がキラを崇める描写を徹底的に掘り下げた感じ。
で、何となく「なるほどこいつがラスボスで、この人が立ち向かっていく展開なのかな。そこに神の裁きの預言が絡んでくるのか」と思って見ていたら、ネタバレ回避のため詳細は避けるけれどその予想を大きく裏切る展開が中盤に待っている。
この構成も『デスノート』っぽいんだよな。
あれは本当に驚かされたし、そこで切り上げて寝る予定だったのに次のエピソードを続けて見てしまったw
映像面・撮影面はワンカット長回しのアクションシーンが何箇所かあってそこに集中投資という感じ。
車を俯瞰ショットで捉えた画が繰り返し出てくるのには監督の嗜好を感じたり。
編集面は、個人的にはちょっと野暮ったい気がした。
さすがに第3話で第1話のシーンを回想でご丁寧にもう一度見せなくても大丈夫じゃないですかね…
『新感染』シリーズではタイムリミットがあったからそこまで気にならなかったのかもしれない。
(でも『新感染半島 ファイナル・ステージ』終盤のテンポの悪さは結構色んな人が指摘してたか)
ちょっと最後あーだこーだ言ってしまいましたが、ヨン・サンホの本来の作家性がいよいよ実写でも炸裂した作品だと思います。
自分と同じく『新感染 ファイナル・エクスプレス』でヨン・サンホを知った多くの映画ファンも是非。
シーズン1は全6話とイッキ見もしやすいので。
韓国の社会背景や宗教観を知っているとより楽しめるんだろうな。
そういえばNetflixで今年配信された、マイク・フラナガンのドラマ『真夜中のミサ』にも似たテイストでしたね(これも傑作)
真夜中のミサ:全話完走。マイク・フラナガンが監督・脚本を務めたNetflixドラマ。海を中心に据えた美しい撮影(最終回はさながら宗教画)と毎話グイグイ引き込まれる長台詞。神を信じた先にあったものとは?圧巻最恐の7時間。モチーフは信仰だけど現代の陰謀論にも通じる。 https://t.co/jeUVsS3B9K
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) September 26, 2021
映像美は『真夜中のミサ』だけど、胸糞悪さは『地獄が呼んでいる』に軍配かなー